戦型はシリーズ3度目の矢倉戦になった

渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦する将棋のタイトル戦、第79期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の第4局が5月19、20日に長野県「緑霞山宿 藤井荘」で行われています。初戦を斎藤八段が制した後、渡辺名人が2連勝して迎えた第4局。渡辺名人が一気の3連勝で防衛に王手をかけるのか、それとも斎藤八段が悪い流れを断ち切り、2勝2敗のタイにするのか。注目です。


第79期名人戦七番勝負の星取表

渡辺名人が先手番の本局は、第1、3局に続いて今シリーズ3度目の矢倉の将棋になりました。前2局では斎藤八段が先手、渡辺名人が後手での矢倉戦だったため、渡辺名人が主導しての矢倉は初登場です。

本局、後手の斎藤八段は近年流行している急戦模様の布陣を採用しました。最近だと藤井聡太二冠が王座戦の対深浦康市九段戦、叡王戦の行方尚史九段戦で連採している構えです。

先手の対策としては、大きく2つあります。一つは▲行方九段-△藤井二冠戦の行方九段のように、早めに飛車先の歩を交換するというもの。こちらは先手が横歩を取って力戦調の戦いになることが多いです。

もう一つは角を早めに▲7九角と引いておき、相手の急戦を封じつつ右銀を繰り出していくというもの。▲深浦九段-△藤井二冠戦はこちらでした。この作戦を先手が取った場合には互いに玉を囲い合う、じっくりとした戦いになることが多くなります。

渡辺名人が採用した作戦は後者でした。このように構えられると、後手は速攻を仕掛けるのは困難です。斎藤八段は6筋の位を取る新手を着手し、前例のない戦いに突入しています。

名人戦は持ち時間が9時間と、公式戦で最長です。本日は二日制対局の1日目で、18時30分に封じ手が行われます。

第2、3局は渡辺名人が斎藤八段を圧倒し、2局続けて2日目の夕休前の決着。第3局の終局後インタビューで斎藤八段は「前局、本局と中盤でミスが出ているので、なんとか改善できるようにやっていきたい」とコメントを残しています。どのような結果になるにせよ、本局は両者が力を出し切る熱戦を期待したいところです。

第4局の対局準備を進める渡辺名人(右)と斎藤八段(提供:日本将棋連盟)
第4局の対局準備を進める渡辺名人(右)と斎藤八段(提供:日本将棋連盟)