広瀬章人八段相手に相掛かりの将棋で完封勝利

第6期叡王戦(主催:株式会社不二家)の段位別予選八段戦決勝、▲藤井聡太二冠-△広瀬章人八段戦が4月9日に東京都「シャトーアメーバ」で行われました。19時から行われた対局を制したのは藤井二冠。昨年度から続いている連勝を18に伸ばすとともに、叡王戦本戦進出を決めました。

長沼洋八段、杉本昌隆八段を破って決勝に進出した藤井二冠。予選決勝の広瀬八段戦は、振り駒の結果藤井二冠が先手となり、相掛かりの将棋となりました。

藤井二冠は飛車を下段に引き、さらに▲6六歩と角道を止めて穏やかな展開を目指します。それに対し広瀬八段は34手目に△6五歩と突いて開戦。さらに飛車で横歩を取って攻めていきました。

38手目、藤井二冠が飛車取りに銀を上がった局面で、広瀬八段の手が止まります。選択肢は2つ。穏やかに飛車を引くか、飛車をいきなり切り飛ばすかです。持ち時間1時間のうち18分を使う長考の末、広瀬八段は飛車を引いて決戦を見送りました。

広瀬八段のここまでの若干無理気味な動きに対し、藤井二冠は自然な手を重ねていきます。相手の攻めに乗じて左桂をさばくことに成功し、わずかながらリードを奪いました。

金銀4枚がしっかりと連結し、のびのびとした陣形の藤井陣に対し、広瀬陣はなかなか駒が前に出ていきません。藤井二冠は銀を前線へと繰り出し、角と交換することに成功します。

そして自陣の角と持ち駒の角を用いて敵陣をあっという間に攻略。最後は手にした飛車で王手をかけた局面で、広瀬八段が投了を告げました。手数はわずか75手。完封勝利と言っていい内容でした。

これで藤井二冠は2021年度白星発進。叡王戦本戦入りを決めました。また、連勝を18に伸ばしています。

前年度は棋聖と王位のタイトルを獲得。一般棋戦では朝日杯と銀河戦で優勝。将棋大賞で最優秀棋士賞、名局賞、名局特別賞、勝率1位賞、最多勝利賞を受賞と、大活躍だった藤井二冠。

今年度は年度初めから大勝負が続きます。次の戦いは竜王戦ランキング戦2組の決勝戦です。さらには棋聖戦と王位戦の防衛戦も控えています。藤井二冠は本局終局後のインタビューで「今年度は防衛戦もあるので、いいコンディションで臨めるようにしたいと思っています」と今年度の意気込みを語りました。

実力者の広瀬八段相手に、この完璧な内容での勝利。今年度はどのような活躍を藤井二冠は見せてくれるのか。ワクワクが止まりません。

年度開幕戦の対局準備を進める藤井二冠(提供:日本将棋連盟)
年度開幕戦の対局準備を進める藤井二冠(提供:日本将棋連盟)