上白石が演じる安子は、1925年3月22日、日本でラジオ放送が始まった日、岡山市内の商店街にある和菓子屋「たちばな」で生まれる。御菓子司「たちばな」の看板娘で、あんことおしゃれが大好きなごく普通の女の子で、ラジオ講座をきっかけに英語を学び始めるという役どころだ。

上白石は安子について、「愛情たっぷりに育てられた、すごくすごく幸せな女の子。私は14歳から演じていますが、とにかくピュアで本当にかわいらしい子です」と愛おしそうに話し、「それを助長するのが岡山弁。岡山の土地が持つ柔らかさや大きさが全部詰まった言葉で、岡山弁を話しているだけで安子に近づけるような気がしています」と説明。「時代の波に揉まれながらいろんなことを経験し、1人の人間として変わっていかなくてはいけない局面を迎えることもあるのですが、安子が持っている純粋さやひたむきさは持ち続けて、素敵に成長していけたら」と意気込みを語った。

現在、京都の東映京都撮影所に岡山編の舞台となる和菓子屋などを建てて撮影しているが、クランクイン直前に岡山を訪問。その際に、安子が自身の中に入ってきた感覚があったという。「初めて訪れたのですが、不思議とそんな気がしなかったです。その場に流れている時間の速度や空気感がちょっと地元に似ているなと感じました。また、台本で岡山の地名などを読んでいたので、すべてがしっくりきたような感じがして、ここで生まれ育ったから安子はあんな子になったんだなと。劇中で話す言葉を頭の中で反芻しながら岡山の街を歩いたときに、安子がすとんと入ってきた気がしました」。

藤本氏の脚本にも魅了されている上白石。「『なんて素敵なんだ!』って心から思いました。1シーン1シーンや一言一言が本当に温かくて、最初読んだときに幸せだなと思いました。それは何度読んでも変わらないです。毎晩のように読んでいますが、毎回『あぁ素敵だ!』と思います。こんなに愛を深められる脚本をいただけてすごく幸せです」と魅力を熱弁し、「現場に行くと、周りのみなさんが脚本をさらに深められたお芝居をされていて、言葉が生き生きと輝く瞬間を目の当たりにし、毎シーン撮り終わるのが惜しいくらい、思い入れがすごく強いです。早くみなさんにお届けしたい気持ちでいっぱいです」と愛情たっぷりに語った。

朝ドラ史上初、3人のヒロインで物語を紡ぐ本作。るい役の深津、ひなた役の川栄にバトンをつなぐということについては、「そのことを考えると背筋が伸びます。親子3代の物語でもあるので、役柄としても通じるところはあるでしょうし、安子が発した言葉がるいさんに伝わっていくところもあると思うので、一つ一つ丁寧にベストを尽くすことかなと。とにかく大事に安子を生き切ることが、いいバトンパスにつながると信じて」と気を引き締め、「娘にバトンを渡す。そういう意味でもすごく温かいなと。これから安子も子供を産んで子育てもしますが、愛情いっぱいに育てたいなと思います」と優しい表情で話した。