新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入が減ったり職を失ったりして、家賃を払い続けるのが困難な人が増えています。家賃を助成してくれる「住居確保給付金」は、新型コロナウイルスの影響を受けた方も申請できる制度です。今回は住居確保給付金について、対象者や申請方法、受給する際の注意点を解説します。

  • 住居確保給付金の対象や申請方法を解説

    住居確保給付金の対象や申請方法を解説

住居確保給付金とは?どんな人が対象になる?

住居確保給付金とは、仕事を辞めたことをきっかけに住まいを失った人か住まいを失うおそれのある人に対し、就労支援をしながら3カ月間家賃を助成することを目的とした給付金です。

2020年4月20日からは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、休業や離職、廃業を余儀なくされて収入が激減もしくは無収入になり、家賃の支払いに困っている人も住居確保給付金が受けられるようになりました。

この制度は給与所得者だけでなく自営業者やフリーランスも利用可能です。

※情報は2020年11月現在のものです。制度内容が変更する可能性があるため、詳細は各自治体のHPなどをご確認ください。

住居確保給付金を受給するための要件は?

住居確保給付金は、下記の要件を満たせば受給できます。

  • 離職、廃業後2年以内である場合。もしくは、個人の責任や都合によるわけではないのに、収入が離職・廃業と同程度まで減少している場合
  • 離職や廃業した時点で、世帯の生計を主として支えていること
  • 直近の月の世帯収入が、市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12と、家賃の合計額を超えていないこと
  • 申請時における世帯の預貯金の合計額が、市区町村が定める額を超えていないこと
  • 受給している間も、誠実かつ熱心に求職活動を続けること
  • 申請者本人もしくは同一世帯の人が職業訓練受講給付金など国の雇用施策の給付金、あるいは、地方自治体が実施する雇用関連の給付を受けていないこと

参照 : 厚生労働省「住居確保給付金

住居確保給付金はいくら支給される?

市区町村ごとに世帯収入の基準額を設定しています。基準額とは、市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12です。この基準額をもとに計算され、住居確保給付金の支給額(住宅扶助額)が決まります。

住宅扶助額=基準額+家賃額-世帯収入額

また、世帯収入額が基準額を下回る場合は、住宅扶助として家賃額が支給されますただし、住宅扶助には上限が設定されているので注意が必要です。

住宅扶助の上限額 (※例 : 東京都特別区の場合)

  • 世帯人数1人 : 月額5万3,700円
  • 世帯人数2人 : 月額6万4,000円
  • 世帯人数3人以上 : 月額6万9,800円

住宅扶助額と家賃額との差額は、申請者本人の負担となります。(※1)

住居確保給付金の申請方法は?

住居確保給付金は国が実施する生活困窮者自立支援制度に基づき、自治体から委託された社会福祉法人やNPO法人などの生活困窮者自立相談支援機関が申請窓口となっています。申請方法は下記の通り。(※2)

  1. 住んでいる自治体のホームページで、担当の相談窓口を調べる
  2. 相談窓口へ電話して面談を予約する
  3. 面談で必要書類などを教えてもらい、書類を作成する
  4. 担当窓口に書類を提出する
  5. 審査が通り、支給対象になると証明書や決定通知が届く

また、住居確保給付金の申請には、次のような書類が必要となります(必要な書類は申請先によって異なることがあります)。

  • 住所確保給付金支給申請書
  • 離職状況等に関する申立書
  • 収入状況等に関する申立書
  • 賃貸借物件の契約状況に関する申立書
  • 住居確保給付金申請時確認書
  • 入居住宅に関する状況通知書

入居住宅に関する状況通知書は、現在借りている家の大家か不動産管理会社に記入を依頼します。上記のほか、離職票・給与明細・預金通帳・賃貸契約書も準備しておきましょう。

担当窓口に申請すると、書類の審査・確認が行われ、支給対象となれば対象者証明書や決定通知書が届きます。住居確保給付金は、家賃を払う大家か不動産管理会社に直接振り込まれますが、自己負担分がある場合は家賃の支払日までに納めましょう。

また、住居確保給付金を受給できるのは3カ月間ですが、求職活動をしたにもかかわらず受給期間中に就職できなかったり就職できたとしても収入が基準額以下だったりした場合は、申請して認められればさらに3カ月間受給を延長することも可能です(延長は2回まで)。

延長の申請をする場合は、受給期間の最終月に自立相談支援機関へ申請しましょう。

住居確保給付金受給時に注意することは?

住宅確保給付金が支給されると、家計の住居費が確保できて安心できますが、受給する際には注意しなければいけないこともあります。どのような点に注意すべきか確認しておきましょう。(※3)

  • 住居確保給付金の支給額には、敷金や共益金は含まれません
  • 駐車場代は含まれません
  • 賃貸契約に駐車場代が含まれている場合は、家賃のみを申請しましょう
  • 店舗などの事業用物件は、住居確保給付金の対象外となります
  • 住居兼店舗の賃貸契約の場合は、住居部分のみを面積などで按分して申請しましょう
  • 住居確保給付金の受給中は、就業相談や面接支援、求人の応募など求職活動を受けなければいけません
  • 受給中は月1回、申請した自立相談支援機関へ求職活動や収入状況を届け出る必要があります
  • 雇用施策の職業訓練受講給付金を受給することになった場合は、支給が停止されます
  • 就職し新たに収入が得られて基準額を超えた場合は届け出が必要です

住居確保給付金を受給するうえで、以下の点にも注意しましょう。

  • 申請者が住居としている賃貸住宅の家賃のみの助成であること
  • 受給が決まったら、同時にハローワークなどで求職活動をしなければいけないこと
  • 求職と収入状況の報告を必ず行うこと

また、2020年11月現在、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ観点から、郵送での手続きを求める自治体が増えています。たとえば、東京都世田谷区では対面での面談・相談を行わず、担当窓口のホームページから必要書類をプリントアウトして郵送する方法となっています。

お住まいの自治体ではどのように対応しているのか、事前にホームページや電話で確認することをおすすめします。

まずは地域の自立相談支援機関に相談しましょう

住居確保給付金について、その内容と申請方法、注意点を解説しました。生活に困窮している場合は、住居確保給付金をはじめとした、自立支援の制度を活用されることをおすすめします。

住居確保給付金を受給するうえで大事なのは、収入や預貯金などの要件を満たすことと、就職先が見つかるまで熱心に求職活動を続けることです。

家計が苦しい状況を早く改善させるために、できるだけ早く住んでいる地域を担当する生活困窮者自立相談支援機関に相談し、住居確保給付金の制度などを活用しましょう。

参照 :
(※1) 厚生労働省「 住居確保給付金 制度概要
(※2) 厚生労働省「住居確保給付金 手続きの流れ
(※3) 厚生労働省「住居確保給付金 よくある質問)