同年代のA級棋士同士の一戦。糸谷八段が角換わり早繰り銀の将棋で新工夫を見せる

第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント(主催:共同通信社)の決勝戦、▲糸谷哲郎八段-△広瀬章人八段戦が11月25日に東京・将棋会館で行われています。勝者が挑戦者決定二番勝負に進む大一番です。

広瀬八段は挑決トーナメントで佐々木勇気七段、木村一基九段、永瀬拓矢王座を破って決勝に進出しました。第44期では挑戦者になり、渡辺明棋王に挑むも1勝3敗で敗退。それ以来の挑戦を目指します。

糸谷八段は稲葉陽八段、上村亘五段、丸山忠久九段、久保利明九段を破っての進出。棋王戦での最高成績は第36期の挑決トーナメントベスト4。この時は準決勝で窪田義行六段(当時)に敗れ、敗者復活戦でも渡辺竜王(当時)に敗れています。

33歳の広瀬八段と32歳の糸谷八段。同年代で共にA級棋士、さらに竜王の獲得経験がある両者ですが、意外なことに直接対決では広瀬八段が9勝3敗と大きく勝ち越しています。

本局の勝者は挑戦者決定戦に進み、敗者は敗者復活戦に回ります。挑戦者決定戦は二番勝負で行われ、挑戦するためには挑決トーナメント優勝者は1勝、敗者復活戦優勝者は2勝が必要です。

振り駒によって糸谷八段が先手となり始まった対局は、猛スピードで進行中です。早指しで知られる糸谷八段は43手目まで持ち時間を1分も使わないノータイム指し。45手目にようやく14分の考慮を記録しました。一方の広瀬八段も46手目までで消費時間はわずか16分。消費時間で差を付けられないようにするためでしょうか。それとも想定通りの手順だったのでしょうか。

戦型は両者得意の角換わりから、糸谷八段が早繰り銀を採用しました。後手の広瀬八段は相手の早繰り銀と交換した銀を自陣に投入し、守りを固めます。糸谷八段は5筋の位を取ってから▲2六飛と浮いて、中段で飛車の横利きを通しました。

実はこの進行には前例があります。それは今期の竜王戦七番勝負第2局の▲豊島将之竜王-△羽生善治九段戦です。その将棋は後手の羽生九段が玉頭攻めを決めて勝利しています。

勝った側を持っている広瀬八段は手を変えることなく46手目まで進めました。そこで糸谷八段が29分の長考(?)の末、▲5九金と着手して未知の局面へと突入しています。竜王戦では▲5八金右と進んでいたところです。5九と5八、この違いが勝敗を左右するのでしょうか。これからの進行に注目です。

また、敗者復活戦の1回戦、▲永瀬王座-△久保九段戦も本日行われています。第68期王座戦五番勝負を戦ったばかりの両者がここでも激突。戦型は久保九段の四間飛車対永瀬王座の居飛車急戦です。

挑決進出を懸けて広瀬八段(左)と糸谷八段が激突
挑決進出を懸けて広瀬八段(左)と糸谷八段が激突