――『グリドンVSブラーボ』で、特に力を込めた部分とはどこでしょうか。

松田:それはもう"変身"ですね。

吉田:それはそうやな。

松田:人生の中で「変身」という言葉を言えるのは、仮面ライダーをやっているときだけですから。終わったらもう口にしないと思うので、いっそう思い入れが強いです。

吉田:『鎧武』の中での変身だと、CGが必ず入るのでけっこうお金がかかるんです。Vシネマに出たときも変身したんですけど、CGを使うフル尺の変身シーンがなくてね。できればもう一回、変身したかったので、今回それが実現できてうれしかった。でも、諸田(敏)監督は「(ブラーボの)の変身、前々から思っていたけれど、長いんだよなあ」なんて恐ろしいことを言う(笑)。さて、今回のスピンオフでブラーボの「手の動き」はどうなっているでしょうか。テレビシリーズと一味違う"変身"をお楽しみください。

――お2人が思う、作品の"見どころ"とはどこですか。

松田:今回はテレビシリーズのグリドン・ブラーボ編である第25話のオマージュ的なシーンが出てきます。2人の良好な関係がうかがえて、凄く好きなシーンになりました。

吉田:撮影はどのシーンもすごく楽しかったですね。とあるシーンは、ついに実現できた!という喜びと、逆に「ここまでやったら、もう思い入れのあるシーンはできないな」という寂しい思いもよぎりましたね。

松田:『鎧武』テレビシリーズを何度も見ていただいている"濃い"ファンの方たちにはぞんぶんに楽しんでもらえると思います。胸が熱くなりますし、実際そういう感想をいただくとうれしいですね。

――久しぶりの『鎧武』ワールドでしたが、凰蓮と城乃内をスムーズに演じることはできましたか。

松田:自分のこれまでの仕事の中でも『鎧武』は"1年間同じ役を演じ続けるドラマ"であり、特殊なんです。だからこそ、自分の中に城乃内という人物が残っていると思います。役に向き合っていた時間が長かったことが、いくら時を経ていてもすぐ城乃内になれる理由かな、と思っています。今回はさらに、凰蓮さんがいてくださったから、よりすんなりと当時の気持ちに戻ることができましたね。

吉田:いまこうやってしゃべっていても、吉田と松田がそのまま凰蓮と城乃内だ、といった空気を出してるんじゃないかな。

松田:まさに、そうなってますね(笑)。

吉田:普段の吉田、松田を少し『鎧武』寄りに調整して、撮影したという気分です。この前も、テレビシリーズのころと同じくリハーサル前に「こうしようや」とか「こっちの方向でやったほうがええで」とか、話し合っていました。普通だと、役者同士のプライドがあって、人の芝居に口を出すのはタブーなんでしょうけど、僕ら2人についてはどんなことでも話し合えますから。

松田:もはや、阿吽の呼吸が出来ています。

吉田:でも、僕が提案した直後に凌の顔を見ると、あまり響いてないなって表情をするときがある。そしたら「せんでええよ」って言いますし。雰囲気でわかるんですよ。だから何の緊張も、気兼ねもなく芝居することができるんです。凌がさすがだと思うのは、芝居でNGを出したら、次の芝居では絶対に"変えてくる"ところです。「お前、そんな芝居で来るのか、くそ~やりやがったなあ!」みたいな思いで、こちらも頑張りますし、互いに影響し合いながら個性の強い2人を作っていきました。

松田:めっちゃ楽しいですね。凰蓮さんというより、メタルさんと一緒にひとつの画面に収まるのが楽しくて仕方ありません。『鎧武』最終回を経て、長い年月を重ねた末に、改めて尊敬するメタルさんと組んで、『鎧武』の外伝を作ることができた。自然と笑えたり、アクションにハラハラしますし、時にはホロリとさせられること間違いありません。

吉田:凌とは『鎧武』が終わってから舞台で何度か共演しました。そして今回、再び凰蓮と城乃内として共演できて、本当によかったです。せっかくこんなに深い関係性ができあがっているのだから、また別のところでも一緒に芝居をしたいですね。もちろん「鎧武外伝」の続編でもいいですよ。

松田:いつでも『鎧武』の世界に行けるよう、ベンチで肩をあたためておきたいです(笑)。

吉田:ファイナルイベントでマイクを持ったとき、「鎧武が終わったあともキャストのみんながいい意味でライバル同士となり、互いに影響を受けながら"あいつには負けないぞ"と頑張り続ける。そんな風にかたちを変えて『鎧武』のメンバー同士の"物語"が永遠に続いていけばいいな」と話したことがありました。そんな発言をしたら、それからいろいろなスピンオフ展開が出てきて、本当に驚きました。Vシネマ、小説、舞台、そして今回の配信ドラマでしょう。テレビシリーズを1年間やったらおしまい、というんじゃなくて、『鎧武』としてずっと物語が続いていくことができるなんて、すごく幸せなことですね。

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