新型コロナウイルスの感染拡大といういまだかつて経験のない状況下で、“43回目ではなく、新しい日常での1回目”を掲げて放送される日本テレビ系大型特番『24時間テレビ43』(22日18:30~23日20:54)。

「動く」をテーマに放送する今年は、メイン会場を無観客にして対面募金を中止し、恒例のチャリティーマラソンも中止となったことが象徴するように、大きな変革を迎えることになるが、コロナ禍の制約の中でどのように企画を展開していくのか。安全対策の面なども含め、総合プロデューサーの日本テレビ・吉無田剛氏に聞いた――。

  • 『24時間テレビ』で「募金ラン」に挑む高橋尚子 (C)NTV

    『24時間テレビ』で「募金ラン」に挑む高橋尚子 (C)NTV

■「ダーツの旅」などアーカイブ活用

名物企画であるチャリティーマラソンは公道での実施が“3密”を生むリスクがあるため、中止に。生放送全体を通しての「縦軸」でチャリティーを盛り上げる挑戦企画には、シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子による「募金ラン」が新企画として決まった。

“1周5キロのコースを走るごとに10万円募金する”という内容で、「この企画を背負っている高橋さんの“動く”という思いが大きいからこそ、今年ならではの企画になっていると納得してもらえるのではないかと思っています」(吉無田総合P、以下同)と新企画に期待を寄せる。

また、メインパーソナリティーらが全国を訪れ、一般の人たちに番組テーマに沿ったインタビューを行う「ダーツの旅」も、番組の中で大きな面積を占める企画だが、「アポ無しで行くものはどうしてもソーシャルディスタンスを取るのが難しくなってきますし、都道府県の越境もハードルになるので、今年は今までと同じ形ではできないと決めました」と判断。

その代わり、「『24時間テレビ』のダーツの旅は本当に面白い名場面がたくさんあり、とても見応えがあるので、“最強の名作選”を豪華な感じで見せていく形にします。それに加え、『あの面白い村人は、今どうなっているのか』というのを追加取材してお届けするので、例年とは違う面白さがあると思います」

こうした“アーカイブ”は、他のコーナーでも活用。「『24時間テレビ』が伝えるべき人として、過去のアーカイブでしっかり描けているものは、もう1回映像を使わせてもらい、現在の状況を追撮する表現をしていきます。取材ができない緊急事態宣言中は、過去の素材をディレクターがいっぱい見て、最高の名場面を探すという作業をしていました」と、豊富な番組資産を生かしていく。

■進行セットの数十メートル先に別セット

また、「スペシャルヒューマンストーリー」として、テレビでは見せない思いを抱えていた志村さんの物語『誰も知らない志村けん ―残してくれた最後のメッセージ―』(22日21:00頃~)を放送。例年放送していた「スペシャルドラマ」も制作を準備してきたが、「普通のドラマのような構成や撮り方をしていたら実現できない」ということで、ドラマパートとドキュメンタリーパートを融合させる形に切り替えた。

通常のドラマ制作からすると急ピッチのスケジュールとなったが、放送11日前に無事クランクアップ。「ある意味日本テレビにしか作れない、『天才!志村どうぶつ園』がどうやって生まれたのかという物語と、番組スタッフから見た志村さんの知られざる顔をきちんと描いています」と予告している。

  • 『誰も知らない志村けん ―残してくれた最後のメッセージ―』ドキュメンタリーパートより (C)NTV

そして、日テレのスタジオではなく、昨年と同じくメイン会場を広い両国国技館にすることによって、“密”を生むリスクを回避。場内のアリーナには、進行を進めるセット、その対面上の数十メートル先に歌唱や様々なチャレンジを披露するセットを作り、通常の番組収録よりも1つ上のステージで安全面を考慮したソーシャルディスタンスを確保する。

「『24時間テレビ』という大型番組ならではの、視聴者が期待している生放送のワクワクしたライブステージが演出できると考えています」