東京メトロが報道公開した有楽町線・副都心線の新型車両17000系。既存の7000系・10000系のデザインを受け継ぐとともに、快適性や省エネ性、安全・安定性の向上にも取り組んだ車両となった。新型車両17000系は2021年2月の営業デビューを予定している。
有楽町線・副都心線は現在、相互直通運転を行う東武東上線、西武有楽町線・池袋線、東急東横線、みなとみらい線と5社7線の広域ネットワークを形成。東京メトロの7000系・10000系をはじめ、東急電鉄や西武鉄道、東武鉄道など多種多様な形式の車両により運行され、相互直通運転に必要な機能の搭載、機器配置の共通化も進められている。
東京メトロの既存車両のうち、7000系は有楽町線の開業以来、半世紀近く活躍しており、2020年3月末の時点で車両数は計180両(10両編成60両、8両編成120両)とのこと。17000系は7000系に代わる新型車両として、2022年度まで順次投入され、車両更新を行う。
17000系の設計は2017年夏頃からスタート。「快適性の向上」「バリアフリーの促進」「省エネ性の向上」「安全・安定性の向上」の4つを軸に、「沿線のお客様に親しまれる車両」をめざしたという。池袋・銀座・渋谷といった東京の主要エリアを結ぶとともに、相互直通運転によって埼玉県・神奈川県までひと続きに移動できることから、通勤・通学、ビジネス、観光といったさまざまな乗車目的に寄り添えるようなデザインとした。
アルミ合金製車体で軽量化と車体強度の両立を図る一方、丸みを持たせ、既存の7000系・10000系を連想させる丸目のヘッドライトを受け継ぐことで、優しさを感じさせるフロントマスクに仕上げた。識別帯は有楽町線・副都心線のラインカラーであるゴールドとブラウンの2色。フリースペースの位置がわかりやすいように、車いす・ベビーカーのピクトグラムを車体側面上部に配置し、視認性を向上させている。
車内はモノトーンを基調に、床面と座面を同系色とした上で、ラインカラーのゴールドとブラウンも配した色彩でスタイリッシュさを追求。袖仕切りと荷棚、貫通引戸に強化ガラスを採用し、地下区間の走行中でも開放感のある車内空間づくりを行った。座席幅は7000系の430mmに対し、17000系は460mmに。適度なクッション性を持たせることで座り心地も向上している。全車両にフリースペースを設置し、車両の両端に優先席を設けた。
ホームとの段差の低減にも取り組み、床面高さは7000系より60mm低い1,140mmに。ドア出入口下部をホーム側へ10mmほど傾斜させるとともに、フリースペース付近のドアレールに切欠き加工を行い、車いす・ベビーカー利用者も乗降しやすいように工夫した。車内案内表示器はドア上に2画面。セキュリティカメラは死角なく車内全体の状況を把握でき、利用者にさらなる安心感を提供するとのこと。車内の冷房能力も向上(7000系は48.9kW、17000系は58.0kW)した。
東京メトロの路線は駅間が短く、路線建設の制約から急勾配や急曲線も存在する。このような条件下で大容量・高頻度輸送を行う際、高加減速の性能が必要となる。その一方で、省エネ性能による消費電力の削減も求められる。17000系では、主電動機に高効率なPMSM(永久磁石同期電動機)を採用したほか、フルSiC素子を利用したVVVFインバータ方式の制御装置、ハイブリッドSiC素子を利用した並列同期・休止運転方式の補助電源装置を搭載。急曲線の走行に加え、直通運転先で高速性能も求められることから、曲線通過性能と高速安定性の両立したボルスタ付き台車を導入している。
安全・安定性の向上も図り、これまでの実績やノウハウをもとに信頼性の高い機器等を搭載した。丸ノ内線2000系で運用開始したTIMAシステム(車両情報監視・分析システム)も導入。営業線走行中の車両機器の動作データを指令所や車両基地から遠隔で確認し、故障発生時の迅速な対応を可能にするとともに、データを蓄積し、分析することで故障の低減もめざすという。
17000系は設計開始から約2年半を経て、2020年1月に初編成(17101編成)が搬入された。現在、各種性能試験(走行安全性確認、制御・ブレーキなど)を実施しており、今後は東京メトロおよび相互直通運転を行う各社で乗務員の養成等を進める。10月頃から日中の営業時間に試運転を開始する予定だという。2021年2月に営業デビューし、10両編成60両(計6編成)は2021年4月まで、8両編成120両(計15編成)は2022年度中に搬入完了予定とされた。
■新型車両17000系、相鉄・東急直通線への乗入れは?
8月11日の報道公開でインタビューに応じた東京メトロ車両部設計課の課長、荻野智久氏は、5社7線の相互直通運転を行う中で17000系を投入するにあたり、「各社とも運転室の機器配置などに違いがあり、乗務員が負担を強いられやすい環境になっていました。各社間で協議を重ね、新車において機器配置などを統一しており、この17000系でも踏襲されています」「お客様に使っていただく部分も、ホーム柵が付く中でドアピッチがしっかり合っているか、またフリースペースの配置や非常通報装置といったところも共通化を念頭に、各社で話し合い、進めてきているところです」と話す。
インタビューでは、17000系の相鉄・東急直通線(2022年度下期開業予定)への乗入れに関する質問も。現在、各社でプロジェクトが進行中とのことで、運用形態などに関する明言は避け、「現状としては、この10両編成が相鉄線へ乗り入れることを想定しているわけではありません」と説明していた。なお、8両編成で搬入される17000系に関して、「中間にT車(付随車)を2両挿入することで、4M6T(電動車4両・付随車6両)の10両編成になることを想定して設計します。10両編成になりやすいように作りはしますが、現時点で10両編成になるような計画はありません」とのことだった。
17000系のデザインに関して、「10000系と17000系は今後長く一緒に走ることになるため、『兄弟感・姉妹感』が出るように、丸く柔らかなイメージとしています」と荻野課長は言う。「東洋初の地下鉄として積み上げてきたノウハウと技術を結集したハイスペックな車両。外観や車内はもちろん、搭載した機器もこれまでに信頼性・有益性など評価されたものを採用しています。この車両がお客様の日常をさりげなく支え、末永く愛される電車になってくれれば一番良いと思います。安全・安定・省エネ・快適といった技術的な取組みも知っていただけたら」と述べた。