メイン会場は無観客、対面募金なし、公道でのチャリティーマラソンはなし…コロナ禍で“43回目ではなく、新しい日常での1回目”を掲げる今年の日本テレビ系大型特番『24時間テレビ43』(22日18:30~23日20:54)。そんな特別な年にチャリTシャツのデザインを担当したのは、世界が注目する現代美術家・小松美羽氏だ。

世界中の誰もが想像しなかった状況下で、Tシャツに表現したのは、明るい未来への「希望」と「祈り」。そこにはどんな思いが込められているのか。彼女が愛してやまない「狛犬(こまいぬ)」へのあふれる思いも含め、話を聞いた――。

  • 『24時間テレビ43』チャリTシャツデザインの小松美羽氏

    『24時間テレビ43』チャリTシャツデザインの小松美羽氏

■マントラから受けた絵をそのまま描く

――『24時間テレビ』のチャリTシャツデザインのオファーが来たときの心境はいかがでしたか?

最初に『24時間テレビ』を見たときの記憶をさかのぼりました。小学校から中学校で薙刀(なぎなた)をやっていて、確かあれは中学校のときの夏の強化合宿でみんなで見たんですよね。「こんな輝かしい世界があるんだなぁ」と思って見てたんですけど、まずそれを思い出しました。そこから、まさか自分がこのような形で関わることになるなんて全然考えてなかったなと思って、なんか驚きました。それと、今回のようなチャリTシャツのお話をいただけると、アートに興味がない方たちにも作品を見てもらえるので、本当にうれしかったです。

――誰がメインパーソナリティーのときの放送か、覚えていますか?

私、芸能人にそこまで固執するタイプではないので、覚えてないですねぇ…。1人の女の子が「この番組絶対見たい!」って感じでみんなと見ていたので。

――今回のデザインに関して、日テレ側から希望はあったのでしょうか?

A3サイズの画角に収めてほしいというのと、色は4色ということだけです。その中で、チャリティー番組のTシャツなので、人々の心に寄り添うというテーマはブレないようにという気持ちで作りました。

――製作にはどれくらいの時間をかけられたのでしょうか?

オファーを頂いてから、どうしようかなと考えて、「ハト」と「狛犬さん」と「祈り」を入れるというのを決めてスタジオに入りました。でも、絵の具を出したら間違って全然違うものを持ってきてしまったので、家に取りに帰って、そこから4時間くらいですね。待っていただいた皆さんに申し訳ないことをしました(笑)

――ご自身のアトリエではなく、日テレのスタジオで描いたんですね。

今回は製作風景を撮影していただくということだったので、家だと狭くて三密になってしまうから、広いスタジオで描こうということになりました。でも、日テレさんから発信するTシャツだからそのスタジオで描かせてもらうというのはすごく大切なことだと思ったので、いい機会だったと思います。

――下絵なしで描かれるそうですが、ある程度構図をイメージして描き始めるのですか?

朝、家で瞑想をして、描く前に第三の目を開くマントラを唱えます。それでキャンパスを見ると、描きたい絵がトレースされているんです。ここからそのままいけちゃうという感じです。マントラから受けた絵をそのまま描いていくというのを大切にしています。

■大切な存在「ハト」を入れるのは即断

――改めて、今回のデザインに込めた思いを教えてください。

私はずっと「祈り」というのをテーマに作品を作ってきたので、それを入れようと思いました。祈りというのは、宗教とか人種とかお金があるとかないとか関係なく、気持ちが束縛されないんです。だから、差別のないワードということで「祈り」を込めました。周りを囲う文字は、世界中のいろんな言語の「祈る」という意味の言葉をハッシュタグにして“門”のように並べました。

そして、その“門”の上の部分に、希望や平和の象徴であるハトを描きました。4年前、イスラエルで聖書の世界を回っていたんですけど、そのときにヨルダン川の国境に行ったんです。そこは、向こうがヨルダン、こちらがイスラエルで、それぞれの小屋に機関銃を持った兵士がいるんですけど、この川にジャブジャブと入って国境を越えたら、その兵士はきっと私に機関銃を向けてくるだろうなと思っていたときに、ヨルダンの兵士小屋にいた白いハトが、こっちに向かって太陽の光を浴びながら飛んできたんですよ。この国境を毎日行き来してるハトを、兵士が機関銃で撃ち落とすことはないですよね。そこに、本当の平和というのを感じたんです。

  • ヨルダン川の国境にて(提供写真)

そして、新型コロナなどで今、世界中に問題が起きている中で、もっと宇宙からの視点で大きな局面に人間としてどう見ていくかというのを大切にするために、「INORI FOR OUR PLANET」というメッセージを入れました。

――ハトは、他の作品でも描くことは多いのですか?

私の中ですごく大切な存在なんですけど、あまりないですね。でも、今回はTシャツの話が来たときにすぐ入れようと思いました。