6月も下旬、夏のボーナスが支給されたという方も多いのではないでしょうか。ずっと欲しいと思っていたものを購入したり、旅行の資金にしたり、賢く貯金に回したりと、さまざまな使い方があると思いますが、果たしてどのように使うのがベストなのか、考えたことはありますか?

今回は、『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』の著者、井上はじめさんにインタビュー。給料から生活費を差し引いたすべての額を積立投信に回しているという井上さん、ボーナスも投資に? それとも貯蓄?? どのように活用されているのか、取材しました。

  • 億万長者サラリーマンに聞く「ボーナスの使い方」

前提として「もらえないもの」と考えておく

――井上さんは、生活費以外のお給料を全て積立投信に回されているとのことなのですが、ボーナスもやはり、投資に回されているのですか?

"ボーナス額は安定しない"という認識なので、貯めておいて不動産購入の頭金に使うことはあっても、普段積み立てている投資信託には使いません。

僕は、1億円の資産を築きあげるために、FX取引や、個別の株・仮想通貨を購入することはほとんどしていません。1つの会社や国、エリアなどに絞って投資するのではなく、毎月一定額、時期を分けて、世界に分散して投資し続けるという方法を基本とし、たまったお金で割安な不動産を購入したり、売却したりしながら、資産を増やしてきました。

具体的には、世界経済に分散した投資信託の商品を、毎月一定額、投資する仕組みを作る、というのを基本としています(不動産は、住居費を節約したいという一心で始めた僕の趣味みたいなものです)。

そのため、ボーナスを資金源として個別株や仮想通貨などを購入することはほとんどありませんし、投資信託の積立額もルール以外であまり変更したくないので増やしません(その代わり、ルールに沿って売却したあとに、毎月の積立額はギリギリまで増やしています)。

――投資に関しては、ボーナスの額をあてにされていない、ということなんですね

投資に関してはというより、そもそもボーナスをあてにしていません。

安定した企業にいたら、毎年のボーナス額はある程度推測できると思うのですが、今の時代、ずっと同じ企業に勤め続けられる保障なんてないですし、企業ごとにボーナスの考え方も違うので「もらえないもの」「もらえるかどうかわからないもの」としておくようにしています。

10年以上のサラリーマン人生の中で、僕がもらう前からボーナスの使い道を決めていたのは、初ボーナスで両親に食事をごちそうした時だけ。それくらい、ボーナスには執着していません。

「銀行口座」ではなく「証券口座」に預ける

――とはいえ、ある程度の額のボーナスを手にする機会もあると思うのですが、そのお金はどうされているのですか?

まず、証券口座に入れています。

――銀行口座ではなく、証券口座を選ばれているということは、ゆくゆくは投資に回されるということですか?

というよりも、僕の認識として、銀行は「今使うお金を一時的に預けるところ」なので、今使わないお金を、銀行口座に預ける理由がないんです。

現在はクレジットカードの支払いが多い時に備えて、銀行口座にも100万円くらい入っていますが、積立投信を始めた頃は、銀行口座残高が20万円を超えたことはありません。

あくまでも"生活費を一時的に預ける口座"とすることで、"今使っているお金がどれくらいなのか把握しよう"という意識が生まれ、支出管理がしやすくなる気がしています。

そういうこともあって、2カ月以上使わないお金、老後資金、将来必要になるかもしれない教育資金などは全て、証券口座に入れています。ボーナスは何かあったときの余剰資金として、証券口座に預けておくイメージです。証券口座と連携させる方が、銀行口座より金利が高い場合もありますしね。

やりたいことを叶える手段はボーナスじゃない方がいい

――ボーナスが出たタイミングで、好きなものを買いたい、やりたいことをしたい、という気持ちにはならないのでしょうか?

そもそも僕には物欲がほとんどなく、節約が大好き。時計も洋服も、社会人としての最低限がキープできていればそれでいいと思っているのですが、妻には我慢があるみたいなので(笑)、ボーナスを妻に自由に使ってもらうこともあります。

本当に欲しい物を買ったり、妻へ多少値の張るプレゼントをしたり、やりたいことを実現したりするタイミングは、株主優待の商品券が届いたときや、マイホームが高値で売れたときです。投資信託などで得た利益をあてたりもしています。

ボーナスの額は業績や転職などに左右されますよね。欲しい物を買う・やりたいことを叶える手段をボーナスにすると、「去年は実現できたけれど、今年は実現できなかった」という事態になりがちなので、僕としてはあまりオススメできないなぁと思います。

――本当に欲しい、やりたいと思ったタイミングでその思いが実現できるように、普段から資産形成をしておく、というのが大事なのですね

そうですね。それから、それは本当に欲しい物なのか、自分がしたいことなのか、吟味する作業も必要なのではないかと思っています。

  • 井上さんが作っている「やりたいことリスト」の例 ※ブログより引用

僕は働きはじめた頃、やりたくないことがたくさんありました。朝起きたくない、満員電車に乗りたくない、上司のための会議資料を作りたくない……それがある日交通事故に遭って、長い期間入院生活を送ることになり、すべて解消されました。

でも、やりたくないことが解消されたのに、むなしくなったんです。なんのために生きているんだろう、そう考えて、やってみたいことや興味を持ったことを日々メモするようになりました。

今では毎年、年末年始に3日間かけて、メモを元にした「やりたいことリスト」を作成しています。このリストを塗りつぶしていくことが僕の趣味で、リストを達成することに最も多くのお金を使っています。

今年はコロナの影響もあり給料も減っているのですが、僕が行ってきたお金の仕組みづくりのおかけで、やりたいことはほぼ計画通り実現できています。長期的に見て、継続的にやりたいことを達成していける仕組みが作れるといいのかもしれません。

井上はじめ

1985年、宮崎県生まれ。大学時代にたまたま読んだ新聞記事と、社会人になってからの生死をさまよう大けがをきっかけに、お金を増やす方法を発見。「投資家ではなく節約家」をモットーに、自分にできることを一つずつ実行していき、1億円の資産形成をまもなく達成。現在はファイナンシャルアカデミーで勤務している。 公式ブログ「33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由」も運営中!

新刊『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』

ごくごく平凡なサラリーマンの「僕」が、生死をさまよう大怪我を機に開眼! 投資センスがゼロでもできる、驚くほどシンプルなお金の増やし方をやさしく解説。家計にのしかかる住宅ローン、教育費、介護費。さらに老後資金「2000万」問題……。生きていく上で誰もが避けて通れないお金の悩みは、こうして解決します!(新潮社/税別1,400円)