フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、「症候性多発性骨髄腫」と闘う漫才師・宮川花子に密着した『花子と大助 ~余命宣告から夫婦の700日~』の前編が23日に放送され、SNSでは「号泣しました」「最高の夫婦すぎる」など、多くの反響が集まった。あす3月1日には、この後編が放送される。

取材したのは、同局系情報番組『直撃LIVE グッディ!』の神林紀行ディレクター(クラフトマンシップ)。“第二の母”と慕う花子の衰弱ぶりを見て、「本当に亡くなってしまうと思った」という神林氏に、密着の裏側や、大助・花子への思いなどを聞いた――。

  • 放射線治療中に誕生日をお祝いされた宮川花子(右)と神林紀行ディレクター=18年9月5日(提供写真)

    放射線治療中に誕生日をお祝いされた宮川花子(右)と神林紀行ディレクター=18年9月5日(提供写真)

■正直、亡くなってしまうと思いました

今回の密着では、花子が闘病でつらそうにしている場面も随所に出てくるが、夫・大助に対して思わず飛び出す毒舌は、漫才の舞台が病室のベッドに代わっただけで、底流には常に“笑い”がある。そのため、従来のドキュメンタリー番組に見られる重い闘病記とは、全く違うものに仕上がった。

しかし、放射線治療でがんを克服したかに思えた矢先、今度は全身に再発して「症候性多発性骨髄腫」と診断された姿は、ナレーションで「花子の弱り方は、直視すらできないほどでした…」と語られるほど、ショッキングだった。

花子に「あんたは弟子見習いだから」と言われ、すっかり「大助・花子・ファミリー」(DHF)の一員である神林氏は「正直、亡くなってしまうと思いました。これでもう、本当に終わってしまうんじゃないかと思って、泣きましたね」と回想する。

泣きながら撮影することは、何度もあったそう。「僕はもう両親を亡くしていて、父親ががんだったんですよ。だから花子師匠が『エムちゃん(※神林氏の愛称)のお父さんもがんだったから心配やろ。でも大丈夫やからな、元気になるから撮ってなあ』って言われると、もう泣けてきちゃって…。ほかにも、後編で出てくるのですが、ファミリーの仲間である被災地の(佐藤)久美子さんが『何もできなくて、ごめんなさい…』と言う場面は、本当に気持ちが分かるので、号泣しながら撮ってました」と明かしつつ、「でも、僕にできることはこれなんだと思いました」と、気を引き締めて撮影に臨んでいた。

「編集中にも泣いてました。きっと放送を見て、もう1回泣きますね」と話す神林氏は、このインタビューに応じている最中も、目を潤ませていた。そんな状況があっただけに、あの復活の記者会見までたどり着いたのは「本当に“奇跡”なんです」と強調する。

  • (C)フジテレビ

■大助&花子の「愛と絆の物語」

番組の中で印象的なのは、夫であり相方でもある大助の気丈な姿だ。落ち込みそうな妻を励まそうと、とぼけたり、小ボケを繰り出したりする様子が実にけなげで、愛情が伝わってくる。

花子が88年に34歳で胃がんを患うと、今度は大助が「脳出血」「腰部脊柱管狭窄症」と大病と闘い、互いに助け合ってきた。今回の花子の病で、2人の絆は「間違いなく深くなっています」といい、「愛と絆の物語を描いているので、いろんな方に見ていただきたいですね」と呼びかける。

山あり谷ありの夫婦生活ながら、仲睦まじい2人を見ているとうらやましくもあるが、「花子師匠からすると、『いや、何言ってんねん。長く夫婦生活過ごしてたらこうなるから、そのうち分かるよ』って言うんですよね(笑)」とのことだ。