ピルといえば、効果の高い避妊法とされているほか、月経前症候群(PMS)や生理痛が軽くなる場合もあり、女性にとって知っておきたい存在。正しい服用法や副作用など、ピルの基礎知識について、あらためて産婦人科専門医の船曳美也子医師にうかがった。

  • ピルの基礎知識を専門医が解説

    ピルの基礎知識を専門医が解説

ピル服用の効果

船曳医師によると、ピルの避妊効果はコンドームや基礎体温法と比べ、計算上は約400倍と圧倒的に高いという。

「自分で排卵する代わりに薬で一定量のホルモンを投与するので、月経周期が安定し、月経調整もしやすくなります。また、種類によりますが、月経周期のホルモン変動をなくすことで、月経前症候群の予防効果があります。月経量が少なくなるので、月経痛が軽くなるケースが多いですし、排卵を起こさないので子宮内膜症を軽快させる効果もあります」

ほかにも「骨粗しょう症の予防」「卵巣がん」「子宮内膜がんの減少」「血管運動神経障害の軽減」「大腸がんの減少」「関節リュウマチ発症の減少効果」も認められているそうだ。

ピルの避妊効果は100%ではない

しかし、ピルを適切に服用していれば絶対に妊娠しないかというと、そうではないという。

「『避妊に失敗して妊娠する』という失敗率を示す指標に『パール指数』というものがあります。これは『100人の女性がこの避妊法を1年間用いた場合に、何%の方が避妊に失敗したか』を示す確率です。それによると、飲み忘れなどがなく正しい使い方をした場合、避妊目的に用いられている低用量のピルで0.3、飲み忘れがあった場合は8という報告があります。つまり、完全ではないものの、飲み忘れがなければまずは大丈夫と言えます。ただ、予定月経がこない場合は、念のため婦人科受診が必要です」

ピルの個人輸入には注意

ピルを入手するには医師の処方箋が必要となる。医療機関を受診しなければならないため、海外からピルを個人輸入したほうが手軽で安いと考える人もいるかもしれないが、船曳医師はその選択はお勧めできないと警告する。

「個人輸入したピルでも、市販されているものとまったく同じ製品であれば、避妊効果は問題ないと思われます。ただ、ピルは、合成ホルモン製剤です。何が問題かというと血栓です。この製剤に含まれるホルモン成分に体が反応して、予期せず血栓が起きやすくなる状態になることがまれにあります」

血栓とは、文字通り「血液の栓」で、血液が固まりやすくなり、血栓が血管内にできてしまうと、血液の流れが悪くなり、強い痛みやむくみの原因となる。最悪の事態として、静脈でできた血栓が心臓から肺にまで達し、肺塞栓を引き起こすこともあるという。

エコノミークラス症候群という言葉を聞いたことがあるでしょうか? これは、長時間、足を動かさない状態が続いたときに足にできた血栓が肺に飛んで、呼吸が苦しくなったり、時に亡くなったりすることもある恐ろしい病気ですが、これと同じことが起こるリスクがあります。ですので、ピルは婦人科で処方を受け、フォローしていただくことをお勧めします」

ピルで性感染症予防はできない

近年は性感染症の症例が増えている。特に2010年代以降、梅毒と呼ばれる性感染症が若い女性に増えており、その病名を耳にした経験がある女性も少なくないだろう。

ピルにこれらの性感染症を予防する効果を期待する女性もいるかもしれないが、残念ながらそれは不可能だ。ヘルペスやクラミジア、梅毒、HIVといった性行為で感染する病気は、男性の性器や精液などに存在する病原体が女性の性器に接触して感染する。

ピルはあくまで排卵を抑えるものであり、避妊や排卵に伴う分泌物を減らす効果はあるものの、接触がある限り性感染症のリスクは生じることになる。性感染症を予防するためには、コンドームが必須だと覚えておこう。

ピルを飲み忘れたときの対処

ピルは毎日欠かさず飲まなければいけないが、つい忘れてしまったということもあるだろう。そういう場合は、飲み忘れた量によって対処が異なる。

1錠の飲み忘れ……飲み忘れた錠剤をなるべく早く服用し、残りの錠剤は予定通りに服用する。

2錠以上の飲み忘れ……飲み忘れた錠剤のうち、直近のものをなるべく早く服用し、残りの錠剤を予定通り服用すると同時に、飲み忘れから7日間はコンドームを併用するか、性交渉を避ける。

ピルを服用する際の注意点

ピルを飲む前の最大の注意点は、内服しても大丈夫な状態かを確認することだ。もっとも恐ろしいのは副作用による血栓形成だが、この事態を予測することはできない。それでも、婦人科で問診を受ければ注意すべき体質かどうかを調べられるという。

「一日15本以上の喫煙」「年齢が40歳以上」などに該当する場合、投与の可否の判断、用法・用量の決定などに際し特に注意が必要となる(慎重投与)。そのほかでは「肥満症」「てんかん」「糖尿病」などの代謝異常の人も服用には留意すべきで、乳がんの人は服用自体が禁忌となる。

さらに船曳医師は、使用中の注意点として、婦人科でフォローを受けることをあげる。

「特に血栓症はまれですが、起こる場合は服用開始の最初の3カ月がリスクが高いとされているので、経過を診てもらったほうがよいでしょう。また、定期的な乳がんスクリーニング、子宮がんスクリーニングも推奨されています」

ピルを服用することで、女性のQOL(生活の質)を上げる効果もあるが、自己判断で飲むことには逆に健康への危険もある。必ず専門の医師の指導のもとで正しく服用しよう。

※写真と本文は関係ありません

監修者: 船曳美也子(フナビキ・ミヤコ)

1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、生殖医療専門医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚、43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(2013年、主婦の友社)、女性の身体について正しい知識を知ってもらえるよう執筆した「あなたも知らない女のカラダ―希望を叶える性の話」(2017年、講談社)がある。En女医会にも所属している。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。