働く女性は、特に生理前後の身体の不調など、体調の変化を敏感に感じる機会が多いだろう。しかし、婦人科の病気は自覚症状がないことも少なくないため、気づいたときには進行しているケースもある。そんな婦人科の疾患の一つである子宮膣部びらんの症状と治療法について、産婦人科専門医の船曳美也子医師にうかがった。

  • 子宮膣部びらんの症状と治療法を専門医が解説

子宮膣部びらんとは?

そもそも子宮膣部がどこかというと、子宮の一部が膣に飛び出している部分であり、びらんとは、皮膚の表面が欠落した状態を指す。つまり、「子宮の膣に出ている部分の皮膚がただれた状態」を子宮膣部びらんという。

しかし、船曳医師によると、ただれたように見えているだけで、本当にただれているわけではないそうだ。

「なんらかの原因で本当にただれているものを『真性びらん』、そうでない一般のびらんを『偽性びらん』とする定義もありますが、一般にがん検診などで記載される子宮膣部びらんは、びらんのように赤く見えているだけの偽性びらんです。子宮膣部びらんそのものに病的意義のあるケースは稀なのですが、生理的なびらんであっても、びらんの端の部分が子宮頸がんになりやすい場所だということがわかっています。ですから、子宮がん検診のときは、びらんの端を狙って細胞診をします」

子宮膣部びらんの原因

本当にただれているわけではないのになぜびらんのように赤く見えるかというと、そこだけ皮膚が薄いからだという。

「子宮そのものは筋肉なのですが、膣から続いた皮膚で子宮膣部は覆われています。膣壁と同じく、その皮膚は分厚く、少々の摩擦では出血しません。ですが、子宮膣部の中心部、月経血が出てくる穴の周囲は、子宮の内膜と続いている粘膜なのです。粘膜は血管も多く、その皮膚は薄いので赤く見えるというわけです。そのため、子宮膣部の中心部は赤く見えており、ここを子宮膣部びらんといいます」

この粘膜部が外側に出ている範囲は、生まれつき個人差があるという。

「直径3センチ大くらいの方もいれば、ほぼゼロの方もいらっしゃいます。また、女性ホルモンによっても変わります。閉経すると女性ホルモンが減少するので、びらん範囲も小さくなります」

真性びらんは、その部位の手術後や創傷が原因になるため、偽性びらんとは全く異なる。

子宮膣部びらんの症状

子宮膣部びらんは基本的に無症状で、気づかないことが多い。しかし、びらん範囲が大きいと粘膜からの分泌液も多くなるため、水様帯下(おりもの)が多かったり、出血もしやすくなったりするという。

「性交渉の直後に出る赤い出血は、びらんから出ている場合もあります。出やすい鼻血のような状態ですね。ただし、水様帯下や不正出血がある場合は、性行為感染症や子宮がんの初期の可能性もありますので、気になるときは必ず婦人科の診察を受けてください。また、一般雑菌による感染も起こりやすくなるので、清潔にすると同時に腸内環境も整えていただくのがよいでしょう」

子宮膣部びらんになりやすい年代や体質

子宮膣部びらんの範囲(大きさ)は、体格と同じで個人差がある。しかし、同じ人でも年齢とともに変化するそうだ。

「基本、女性ホルモンが多く出ているときは、びらんはしっかりあります。そして、閉経とともに女性ホルモンは減少するので、一般的に子宮も小さくなり、膣も委縮し、子宮膣部びらんもなくなっていきます。残念ながら、食事や運動で、びらんのサイズが変わることはありません」

子宮膣部びらんの治療

治療の基本は、帯下異常や不正出血といった症状に対する対症療法になる。

■帯下が多い場合

感染症があれば、膣剤や膣洗浄が必要になる。

■不正出血の場合

その部分に悪性の炎症などがなければ、圧迫止血になるケースが多い。粘膜の表面は薄い一枚の皮なので破れて出血しやすいが、圧迫止血して刺激をなくし、表皮が再生するのを待つ。

■性交渉による出血で妊活に支障がある場合

人工授精で精子を子宮の中に入れる治療も可能だという。

不正出血を繰り返す場合、びらん部そのものを切除してなくすという選択肢も考えられるが、何らかのリスクを伴う可能性がゼロではないと船曳医師は警鐘を鳴らす。

「完全になくすとなったら、メスによるびらん部切除という方法もなくはないです。ただ、妊娠しにくくなったり、妊娠後に流産・早産になりやすくなったりするという合併症の危険もあります。それに、保険が適応されないという点もネックになると思います。レーザーなどを使用する『びらん焼灼術』という方法もあり、効果が出る方もいらっしゃいますが、広範囲だと難しい場合もあります」

子宮膣部びらん自体は病気ではないものの、びらんの端の部分が子宮頸がんになりやすいという点は注意が必要だ。たとえ痛みはなくても、帯下異常や不正出血など、気になる症状があったら見過ごさず、まずは産婦人科医に相談するのがいいだろう。

※写真と本文は関係ありません