日本の「性感染症」事情とは?

日本で普通に生活している限り、性感染症にかかるリスクは低いと思っていませんか? しかし実は、日本での性感染症の発症数は、決して少なくありません。病気によっては、近年、患者が増加しているものもあるほど。

今回は、多くの人が考えている以上に深刻な日本の性感染症事情について、詳しくお伝えします。

「梅毒」は5年間で5倍以上に!

性感染症とは、主にセックスやオーラルセックスといった性行為によって感染する病気のこと。「STD」(Sexually Transmitted Diseases)もしくは「STI」(Sexually Transmitted Infection)と呼ばれることもあります。

性感染症は、かつては「性病」と呼ばれ、性風俗を利用した男性や海外で無防備な性行為をした人がかかる病気というイメージがありました。しかし近年では、一般の若者や女性の間での感染が増加していて、問題になっています。

厚生労働省は、代表的な性感染症の報告数を公表していますが、そのなかでも「梅毒」の報告数が2010年以降、急増していることがわかります。2016年の報告数は、2017年3月時点の概数で4,559人。この数字は、2011年の報告数の約5.5倍です。

梅毒以外では、「淋菌感染症」「性器クラミジア感染症」「性器ヘルペスウイルス感染症」「尖圭コンジローマ」が、増加傾向ではないとはいえ、ここ5年ほどはほぼ横ばい状態。また、発症するとエイズを引き起こす「HIV感染症」の新規の報告数も、2007年から2015年までの毎年、年間1,000件を超すという状況が続いています。

予防と早期発見が決め手に

梅毒急増の直接の原因はわかっていませんが、日本で若者中心に性感染症が増え、なかなか減らない現状の背景には、性に対する意識の変化や、性感染症予防に関する正しい知識が広まっていないことがあると考えられます。

先に挙げた感染の状況からもわかる通り、性感染症は、誰でもかかる可能性のある病気です。リスクを減らすためには、セックスやオーラルセックスなどの性行為を行う際に必ずコンドームを着けることが重要。セックスの相手を性感染症に感染していないパートナー1人に特定することも、有効な予防策の一つです。

たとえ性感染症に感染しても、初期の段階で適切な治療を受ければ、ほとんどの場合は完治し、後遺症が出ることもありません。例外として、HIVに感染した場合は完全に治すことはできませんが、HIV感染後に早めに検査を受けて気づくことができれば、エイズの発症を抑える治療を受けることができます。

淋菌感染症やクラミジアなどの性感染症を治療せずに放置しておくと、男女ともに不妊の原因になることがあります。また、妊娠中の女性が梅毒に感染すると、死産や早産が起こることもあります。そんな事態にならないよう、おりものや性器周辺に異常を感じたときは、早めに婦人科を受診するようにしましょう。また、感染が疑われるときや、そうでないときでも定期的に、パートナーとともに性感染症の検査を受けることをおすすめします。

アンダーヘアの処理と性感染症との関係

最近、日本では、陰毛をすべて処理する「ハイジニーナ脱毛」と呼ばれる脱毛法が広まりつつあるようです。これに関連して、アメリカの研究グループが「陰毛を処理する頻度が多い人ほど、性感染症に感染している率が高い」という研究結果を発表したという情報が日本のメディアに取り上げられ、注目を集めました(※1)。

もともと不特定多数の人と性的接触を持っている人が、陰毛の処理に熱心な傾向があるということも考えられますし、この情報だけでは、陰毛の処理と性感染症の因果関係はわかりません。

ただ、陰毛には、衝撃から性器を守ったり、細菌・ウイルスの体内への侵入を防いだりする役割があるので、全部抜く、剃るという極端な脱毛はおすすめできません。また、性器周辺はデリケートな部分なので、自己流でワックスを使った脱毛をすると、皮膚が傷つき、そこから細菌が入って皮膚トラブルを起こす可能性もあります。

どうしてもハイジニーナ脱毛をしてみたい人、する必要がある人は、自己処理は避け、医師の診察が受けられる専門のクリニックで処理してもらうようにしましょう。もちろん、下着や水着からはみ出る部分をハサミでカットしたり、カミソリで剃ったりする程度の自己処理であれば、身だしなみの範囲内であり、問題ありません。

※1「Correlation between pubic hair grooming and STIs」(BMJ Journals / December 05,2016)より
※画像は本文と関係ありません


記事監修: 鈴木俊治 医師

葛飾赤十字産院 副院長
日本産婦人科医会 副幹事長
1988年長崎大学医学部卒業、日本医科大学付属病院産科婦人科学教室入局、葛飾赤十字産院産婦人科派遣をへて米国ロマリンダ大学胎児生理学教室へ研究留学。帰国後、日本医科大学産科婦人科学講師、学助教授、東京臨海病院産婦人科部長を経て、現在は葛飾赤十字産院にて副院長を務める。