月をまたいだ2月1日に放送された『アリバイ崩し承ります』(テレビ朝日系)、『伝説のお母さん』(NHK)、『パパがも一度恋をした』(東海テレビ・フジ系)を最後に、ようやくすべての冬ドラマがスタートを切った。ここまで視聴率では明暗が分かれているものの、ネット上ではさまざまな反響が飛び交っている。

冬ドラマで本当に質が高くて、今後期待できるのはどの作品なのか? 今期もドラマ解説者の木村隆志が、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコで、2020年冬ドラマ21作の傾向とおすすめ5作を挙げていく。

2020年冬ドラマの主な傾向は、「[1]命をめぐる重さをどう描き分けるか [2]プライム初主演の若手で攻めるTBS」の2つ。

  • 上白石萌音、佐藤健

    『恋はつづくよどこまでも』(左から上白石萌音、佐藤健)

■傾向[1] 命をめぐる重さをどう描き分けるか

今冬はプライム帯だけで、病院を舞台にした作品と、刑事事件解決を描いた作品が6つずつ放送されている。いずれも人の命をめぐる緊迫したやり取りがあり、どうしても重々しさを感じるシーンは避けられない。

だからこそスタッフたちは、笑いを交えたり、人々の温かさを感じさせたり。あるいは、脱力感を誘うキャラクターを登場させるなどの方法で重さをやわらげようとしている。

とりわけ病院が舞台の作品は、それぞれで差別化がしっかり。『トップナイフ -天才脳外科医の条件-』(日本テレビ系)は、スーパー外科医の活躍を描く王道ながら、“脳”に特化しつつ痛快さを追求。『アライブ がん専門医のカルテ』(フジ系)は、腫瘍内科医という新たな世界に挑戦し、女医同士の絆が育まれる様子に光を見出している。『病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~』(テレビ東京系)は、患者の治療というより病院の再生がメイン。『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)は、恋を前面に押し出すことで病気の重さをやわらげている。

ただそんな工夫をしても、これほどそろってしまうと「命をめぐるシリアスな世界観の作品が多すぎるのでは?」という懸念はぬぐえない。かつてのような底抜けに明るい学園ドラマや、オフィスで繰り広げられる等身大のラブストーリー、ドタバタが楽しいホームドラマ、若者たちのみずみずしい群像劇、スポーツを軸に据えた青春ドラマなどはゼロ。テレビマンたちが「冬は明るい物語は合わない」という先入観にとらわれすぎて、強みである多様性を放棄していることに危うさを感じてしまう。

重々しい作品ばかりになったのは、「時代が変わったから」ではなく、「視聴率を獲るため」であることは明白。もしプライム帯のラインナップを変えられないのなら、深夜帯の『女子高生の無駄づかい』(テレ朝系)や『伝説のお母さん』(NHK)、さらに深い時間帯の『この男は人生最大の過ちです』(朝日放送・テレ朝系)や『来世ではちゃんとします』(テレ東系)のような作品を「若年層にどう届けるか」を本気で考えるべきだろう。

  • 三浦友和、広瀬アリス、天海祐希、椎名桔平、永山絢斗、古川雄大

    『トップナイフ』(左から三浦友和、広瀬アリス、天海祐希、椎名桔平、永山絢斗、古川雄大)

  • 榮倉奈々、鈴木亮平、竹内涼真、上野樹里

    『テセウスの船』(左から榮倉奈々、鈴木亮平、竹内涼真、上野樹里)

■傾向[2] プライム初主演の若手で攻めるTBS

前述したように重いムードの作品が多いだけに、『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジ系)の沢村一樹、『病院の治しかた』の小泉孝太郎、『10の秘密』(カンテレ・フジ系)の向井理、『ケイジとケンジ 所轄と地検の24時』(テレ朝系)の桐谷健太、『病院で念仏を唱えないでください』(TBS系)の伊藤英明、『トップナイフ』の天海祐希など、アラフォー以上の主演俳優が大半を占める。

だからこそ際立って見えるのが、プライム帯初主演の俳優で攻めるTBSのスタンス。『恋はつづくよどこまでも』の上白石萌音は22歳、『テセウスの船』の竹内涼真は26歳であり、過去の同枠主演俳優たちと比べても際立って若い。

『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(読売テレビ・日テレ系)の清野菜名25歳と横浜流星23歳も若いがダブル主演であり、もともと日曜10時30分の『日曜ドラマ』は“若年層狙いのチャレンジ枠”として知られている。テレ朝の『女子高生の無駄づかい』岡田結実19歳と『アリバイ崩し承ります』の浜辺美波19歳を23時台の主演に起用するのが、ギリギリのラインとなっているのが現状だ。

それだけにプライム帯の看板枠に上白石と竹内を抜てきしたTBSの判断は特筆に値する。他局が安全策を選ぶ中、あえて若手で勝負する姿勢は称えられるべきものだが、その結果が同局のみならず、業界全体の今後を左右するかもしれない。


  • 向井理、仲間由紀恵

    『10の秘密』(左から向井理、仲間由紀恵)

これらの傾向を踏まえた今クールのおすすめは、『10の秘密』と『テセウスの船』。視聴率を確保するために一話完結の医療・刑事ドラマが大半を占める中、長編ミステリーに挑む姿勢だけでも価値が高い。

また、ともに謎や秘密を連鎖させて「次回が気になる」連ドラならではの醍醐味を感じさせてくれる。どちらかと言えば、「原作がなく結末が読めない」という点で、志の高い前者を筆頭に挙げておきたい。

「視聴率や先入観だけで判断して見ない」というのはもったいないだけに、TVerや各局のオンデマンドなどで、チェックしてみてはいかがだろうか。

■おすすめ5作
No.1 10の秘密(フジ系 火曜21時)
No.2 テセウスの船(TBS系 日曜21時)
No.3 パパがも一度恋をした(フジ系 土曜23時40分)
No.4 病院の治しかた(テレ東系 月曜22時)
No.5 シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。(日テレ系 日曜22時30分)

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。