主要23作がそろった2024年春ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。

別記事(「2024年春ドラマ」オススメ5作を発表 “多彩な品ぞろえ”で起こった“春の異変”とは)において2024年春ドラマの主な傾向を【[1]強力主演が生み出した“多彩な品ぞろえ” [2]過去の事件、謎の死、記憶喪失…】の2つと解説。

おすすめドラマとして、『からかい上手の高木さん』(TBS 火曜23時56分)、『Destiny』(テレ朝 火曜21時)、『ブルーモーメント』(フジ 水曜22時)、『おいハンサム!!2』(東海テレビ・フジ 土曜23時40分)、『アンチヒーロー』(TBS 日曜21時)の5作を選んだ。

本記事では、それらを含む全作品のショートレビューと、目安の採点(3点満点)を挙げていく。


『366日』 月曜21時~ フジ

出演者:広瀬アリス、眞栄田郷敦、北村一輝ほか
寸評:月9は「重いラブストーリー」路線を継続。仲間との関係性を丁寧に積み上げていく脚本は好感が持てる一方、16年前の楽曲をあえてモチーフにしたことから、良くも悪くも作り手の思いが先行した作品になった。事故で意識不明→目覚めたが…の流れでは眞栄田の見せ場が少なく、視聴者にはストレスフル。感情表現の上下動が巧みな広瀬と眞栄田なら、バチバチにぶつけ合う関係性が見たかった感もある。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 広瀬アリス


『アンメット ある脳外科医の日記』 月曜22時~ カンテレ・フジ

出演者:杉咲花、若葉竜也、岡山天音ほか
寸評:杉咲を筆頭にこれほど演技巧者をそろえられるのはカンテレ制作ならではだろう。なかでも若葉の起用だけで映像が引き締まり、質がグッと上がった。ただ、原作漫画から主人公を変え、記憶障害を前面に押し出したことで、作品としてのバランスが難しくなったか。医療ドラマとしての感動に、ヒューマン、ミステリーなど、優先順位があいまいで焦点が絞りづらく、見る人を選ぶ作品になっている。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

  • 杉咲花


『95』 月曜23時6分~ テレ東

出演者:高橋海人、中川大志、松本穂香ほか
寸評:「テレ東60周年記念作」であり、強力キャストの力作。95年という舞台設定は平成初期ブームの時流に合い、高校生たちの熱い青春群像劇というジャンルも希少性が高い。それでも話題にならないのは、豪華だが強引なキャスティングが原因か。『今日から俺は!!』のように笑いへ振り切るくらいでなければ、年齢の違和感を拭うことは難しそう。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

  • 中川大志


『Destiny』 火曜21時~ テレ朝

出演者:石原さとみ、亀梨和也、安藤政信ほか
寸評:大学時代の青春群像劇に、新旧の事件を絡めてミステリー&サスペンスを加速させ、さらに20年にわたる愛憎劇へ……という流れはスムーズで、映像から緊張感と色気が感じられる。長野と横浜の舞台落差も効果的で、アラフォーキャストの大学生も話題性としてはアリ。TBSの名作『最愛』と似た構造で目新しさはないが、2つの事件と1組の男女を1クールかけて追う連ドラとしての醍醐味は十分。テレ朝としては渾身のオリジナルで、課題の配信も上々のスタートを切った。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

  • 石原さとみ


『くるり~誰が私と恋をした?~』 火曜22時~ TBS

出演者:生見愛瑠、瀬戸康史、神尾楓珠ほか
寸評:火曜ドラマ定番のラブコメに“記憶喪失”をプラスし、「世代の異なる3人のイケメンをそろえる」という女性向け王道の構成。記憶と恋人を探すより、「素を見せず悪目立ちしないようにしてきた自分の人生を生き直す」という要素を濃くすることでポジティブなムードに。ただ「芯の強さを感じさせる」という生見の持ち味は出づらい設定か。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

  • 生見愛瑠


『お迎え渋谷くん』 火曜23時~ カンテレ・フジ

出演者:京本大我、田辺桃子、長谷川京子ほか
寸評:「イケメン俳優とマジメ保育士の恋」というギャップを生かしたベーシックなラブコメ。保育園という舞台と「ともにウブすぎる」キャラ設定は、癒し度最高峰の作品かもしれない。ダブルボケのメイン2人と天真爛漫な園児たちを愛でる作風に特化することで、SNSで明るくツッコミを入れながら楽しめる作品になった。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 田辺桃子


『からかい上手の高木さん』 火曜23時56分~ TBS

出演者:月島琉衣、黒川想矢、江口洋介ほか
寸評:からかいがいい意味で中学生のレベルを超えず、好意をほのめかすことで甘酸っぱいムードを創出。消しゴムのおまじない、飲み物の間接キス、自転車2人乗りなどの思春期の距離感も徹底され、それが老若男女を問わず、クスッと笑えて、2人を応援したくなる世界観につながっている。特筆すべきは、俳優界のプロスペクトである2人の魅力を最大化するような今泉力哉監督の演出。小豆島のロケーション、10年後に再開した2人を描く映画につなげる収益化の流れも見事で、漫画・アニメからの実写化としては、非の打ちどころがない仕上がり。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

  • 江口洋介