2019年3月16日から運行開始し、その後も本数を増やしている西武鉄道の新型特急車両001系「Laview(ラビュー)」。先日開催されたイベントの取材で秩父方面を訪れた際、この車両を使用した特急「ちちぶ」に乗車できたので、その様子を記したい。

  • 西武鉄道の新型特急車両「ラビュー」。特急「ちちぶ」「むさし」に使用される

■往路の「ちちぶ5号」ほぼ満員で池袋駅を発車

今回は池袋駅で乗車直前に特急券を購入することにした。乗車前に窓口へ行くと、「窓口販売分は売切れとなりましたので、改札内の券売機で買ってください」と言われたので、iPhoneの「Suica」をタッチし、改札内の券売機で特急券を買うことにする。

往路で乗車した列車は池袋駅7時30分発の特急「ちちぶ5号」。多くの行楽客に加え、小学生のスポーツチームの団体なども乗車し、ほぼ満員の状態になった。筆者は窓側の席を取ることができず、B席に座る。ただし、B席からでも大型窓からの眺望は良い。窓の広さにより、通路側の席に座っていても眺望を確保できるようになった。シートピッチの広さも、眺めの良さを確保することに役立っているように思える。

「ラビュー」を使用した特急「ちちぶ5号」は定刻に池袋駅を発車。練馬駅から複々線区間に入り、加速する。加速の仕方に余裕があり、なめらかだ。このあたりは高架区間でもあり、広々とした窓から住宅街を遠くまで見渡せるようになっている。

高架の複々線区間を終えた後も、列車は緑豊かな郊外住宅地の中を走り抜けて行く。乗客への身体的負担はほとんど感じられない。速度を出していても、走り自体はゆったりとしていて揺れも少なく、座席の座り心地も良い。質感の高さが感じられる車両だ。

  • 「ラビュー」の車内(2019年2月撮影)。座席はあたたかな黄色を基調とした配色に

秋津駅を通過するあたりでスピードが落ち、車内では所沢駅到着の案内が流れる。所沢駅からも多くの人が乗車してきた。発車後、しばらくして強い加速があり、スピードを出して走るようになった。通過駅の駅名標が読み取れないほどのスピードである。

窓ガラスは強い光をカットするようになっているのだろうか。それゆえに、空は青く澄んで見える。入間市駅に到着すると、隣の座席に座っていた乗客が降り、入れ替わるように入間市駅から乗車した人が隣に座った。次の飯能駅で列車の進行方向が変わる。ここから逆向きに座ることになるはずだったが……。

飯能駅に到着するタイミングで、隣の乗客が「席の向きを変えませんか?」と声をかけてきた。もちろん、「わかりました」と答える。飯能駅から先は自然豊かなエリアとなるので、進行方向と同じ向きに座ったほうが車窓風景も見やすい。「ラビュー」の眺望を堪能するためにも、そのほうが良い。2人で協力しつつ、座席を回転した。

車内のモニターには、前面展望と後方展望が流れる。座っていても、運転士が見るような前面展望を味わうことができる。加えて、大型の窓から眺められる山岳空間の景色。それを心地良い座席で堪能できるのだ。

このあたりになると、レールの継ぎ目の響きが強くなる。速度も遅くなる。単線・急勾配・急曲線の路線だからだ。そんな中でも「ラビュー」は快適性を失わずに走る。

■正丸トンネルを抜けて秩父へ

東吾野駅で「ラビュー」同士の行き違い。この車両も徐々に本数を増やしていることがわかる。吾野駅ではホームのない側線を通過。正確にはここから西武秩父線である。

しばらく山や谷を分け入るようにして走り、列車は正丸トンネルに入る。もちろん、トンネル内の前面展望もモニターに表示される。トンネル内ではいったん大きく加速するも、減速し、正丸トンネル信号場で停車する。列車は副本線に入り、上り列車と交換する。しばらくして現れた上り列車も「ラビュー」。スピードを出して通過していった。

行き違いを終えた列車は再び加速。正丸トンネルを出たところで減速する。芦ヶ久保駅付近で秩父の風景を見ながら走るようになり、セメント工場なども目にしたところで、8時46分、横瀬駅に到着。この日、横瀬車両基地で開催されたイベントの会場最寄り駅ということもあり、多くの人が横瀬駅で下車していた。

  • 11月9日に開催された「西武秩父線開通50周年記念 車両基地まつり in 横瀬」では、「ラビュー」をはじめ3世代の特急車両が並んだ(筆者撮影)

復路は西武秩父駅11時25分の特急「ちちぶ24号」に乗車した。座席は後ろ向きにセットされていたが、秩父の風景を楽しみたいので、進行方向と同じ向きに変えた。

西武秩父駅に続いて横瀬駅を発車すると、横瀬車両基地のイベントに参加している人たちが多く手を振っている。こちらも手を振り返す。前後方の展望映像がモニターに映し出される中、列車は正丸トンネルへ。加速後に減速し、往路と同様、トンネル途中の信号場で停車。交換した下り列車は10000系「ニューレッドアロー」だった。

正丸トンネルを出ると、あたたかい日差しを受けながら列車は走る。カーブでは前方がよく見え、先頭車両の動きがわかる。

飯能駅で進行方向が変わり、これに合わせて席の向きを変える。ここからは高速であっても、なめらかな走りを見せる。所沢駅を発車した後、12時31分頃に踏切の異常を知らせる信号を感知し、急停車する場面があったものの、すぐに安全が確認されたため、再び加速。終点の池袋駅には定刻通り、12時44分に到着した。途中で遅れを取り戻した様子だった。

  • 池袋線・西武秩父線の特急列車は2019年度中にすべて「ラビュー」に置き換わる予定

大型の窓からの眺め、心地良い座席など、「ラビュー」は多くの人におすすめしたい、魅力あふれる贅沢な特急列車といえる。池袋線・西武秩父線の特急列車は今年度中にすべて「ラビュー」に統一される予定。都心から飯能・秩父方面の観光利用だけにとどまらず、ビジネス利用も含め、乗車機会は今後ますます増えていくはずだ。