嵯峨野観光鉄道が導入する新たなトロッコ列車の牽引車「DEC743-1001」が16日、報道関係者らに公開された。JR西日本の新型事業用車「DEC743」と同じ形式とされ、ハイブリッド方式の電気式気動車として製造。新たに導入予定の客車4両を牽引する車両となる。

  • <!-- Original start --></picture></span>嵯峨野観光鉄道が導入する新たなトロッコ列車の牽引車「DEC743-1001」(写真右)。JR西日本の新型事業用車「DEC743」と並んで公開された<!-- Original end -->

    嵯峨野観光鉄道が導入する新たなトロッコ列車の牽引車「DEC743-1001」(写真右)。JR西日本の新型事業用車「DEC743」と並んで公開された

嵯峨野観光鉄道はトロッコ嵯峨~トロッコ亀岡間でトロッコ列車を運行。山陰本線の複線電化にともない廃線となった区間を活用しており、保津川渓谷の雄大な自然をはじめ、桜や紅葉など四季折々の風景も楽しめる。車両は国鉄時代の貨車を改造した客車とディーゼル機関車DE10形を使用。1991年の営業開始以来、長きにわたり活躍してきたが、さらなる安全性向上とサービス向上を図るべく、新たなトロッコ列車(牽引車1両・客車4両)を導入する。

新たなトロッコ列車(牽引車・客車)のデザイン監修はGKデザイン総研広島。デザインコンセプトに関して、「保津峡の渓谷美」「ノスタルジックな旧山陰線の汽車旅」「嵯峨野・嵐山の洗練された『ひなび』風情」といった魅力が複合し合う「嵯峨野トロッコ(SAGANO ROMANTIC TRAIN)の世界観を創出」したという。新たなロゴ・シンボルマークも制作され、従来のエンブレムのデザインを継承しつつ、「紅葉」「桜」「清流」「土木遺産のトンネル」「笹の円環(竹林)」を織り交ぜることで、沿線の魅力を表現している。

牽引車「DEC743-1001」は、JR西日本の新型事業用車「DEC743」と同じ形式の電気式気動車(ハイブリッド方式)に。環境への配慮に加え、車体衝突時の安全対策を施し、モニター装置を搭載して異常検知・故障時の乗務員支援を行うなど安全性・安定性も高めた。なお、JR西日本は「DEC743」の一部車両を嵯峨野観光鉄道の予備機としても使用。今回公開した車両のうち、「DEC743-7」「DEC743-8」は「DEC743-1001」とほぼ同様のカラーリングだった。

  • 車体前面のエンブレムに加え、車体側面もロゴやシンボルマークを配置している

報道公開でインタビューに応じた嵯峨野観光鉄道鉄道部担当部長の中村哲也氏は、新たなトロッコ列車のデザインに関して、「GKデザイン総研広島と当社の社員でワークショップを何回も行い、『嵯峨野トロッコらしさ』『嵯峨野トロッコの魅力』について議論を重ね、デザインコンセプトやコンセプトカラーの検討を進めてきました」と振り返る。GKデザイン総研広島が仕上げたデザインを「すごく気に入っています」と話し、「当社の発足以来、初めての新型車両投入となります。デビューが近づいてきたなと感じています」と期待を寄せた。

牽引車に続いて客車の製造も順調に進んでいる。天井や側面をガラス張りにして開放感のある車内空間とし、一般席(1~4号車)は柱や窓枠を黒で仕上げ、保津峡の景色への没入感を高める内装に。座席間隔と通路幅を拡大して乗り心地の向上を図る。グループで利用可能な特別室(4号車の一部)も設け、縁台型の座席に座りながら景色を楽しめるようにするという。

嵯峨野観光鉄道の新たなトロッコ列車は、単に車両の更新というだけでなく、30年以上親しまれてきた「嵯峨野トロッコ」のブランドを次の世代へ引き継ぐプロジェクトともいえる。牽引車は共通設計とすることで保守性や運用面など配慮し、JR西日本の同形式車両を予備機として活用できる体制も整えた。一方、客車はより景観を楽しめる空間づくりを重視。従来のノスタルジックな雰囲気を残しつつ、観光列車としての魅力をさらに高めようとしている。

「車両ができ上がり、現在は各種試験を行っている段階。8月頃に試運転も計画しています。2027年春の運転開始に向けて、大変待ち遠しい思いです」と中村氏。新たなトロッコ列車の導入にともない引退する現行車両への思いも聞かれ、「いまの車両は私も大変愛着があります。今年で最後になりますが、この1年、一緒に走り切りたいと思います」と答えた。

  • 嵯峨野観光鉄道の新たな牽引車「DEC743-1001」の外観