クリーンディーゼルエンジンとプラグインハイブリッド(PHV)を組み合わせたパワートレインを搭載する乗用車が日本に初めて登場した。メルセデス・ベンツの「E350de」である。この2つがコンビを組むと、クルマはどう変わるのか。山梨県で試乗してきた。

  • メルセデス・ベンツの「E350de」

    メルセデス・ベンツのクリーンディーゼルPHV「E350de」(本稿の写真は原アキラが撮影)

中核モデルの「Eクラス」に最新技術を導入

メルセデス・ベンツの「Eクラス」は、世界で累計1,200万台以上を販売してきた同社の看板モデル。1947年の「W136/191型」以来、常に時代に先がけた革新的な技術を取り入れ、世界のプレミアムセダンの指標とされてきた。今回、最新技術であるクリーンディーゼルPHVをEクラスが導入したのは、そうした理由からだ。

試乗会場となったのは、山梨県山梨市の丘陵地帯にある「フルーツパーク富士屋ホテル」。葡萄畑に囲まれた丘の上にあるので、あたりには適度なワインディングがあり、クルマを試すにはぴったりの場所だ。

駐車場に到着すると、少し高回転気味のアイドル音を発生させているホワイトボディーのEクラスセダンが停まっていた。スタッフに聞くと、これが試乗車の「E350de」だった。遠目から見ると、通常のEクラスセダンと全く見分けがつかない。前日の試乗会でも1日中走っていたというこの個体は、早朝から充電を行っていたのだという。

  • メルセデス・ベンツの「E350de」

    遠目からだと「Eクラス」のセダンと全く見分けがつかない

運転席のメーターパネルをのぞいてみると、チャージモードでのタコメーターは1,000回転程度を示していて、充電は50%ほどという状態。「試乗会が始まるまでには100%にしておきますよ」と告げられ、このクルマがエンジンを発電にも使えるPHVモデルであることに、改めて気づかされた。

E350deのパワートレインは、最高出力194ps(143kW)、最大トルク400Nmを発生する排気量2.0リッターの直列4気筒クリーンディーゼルエンジンに、最高出力122ps(90kW)、最大トルク440Nmの電気モーターを組み合わせる。システム総合では最高出力306ps(225kW)、最大トルクはなんと700Nm(!!)を発生する。

  • メルセデス・ベンツの「E350de」

    「E350de」の最大トルクは700Nm。もともとトルクの大きいディーゼルエンジンとモーターの組み合わせなので、当然ながら強力なパワーを発揮する

名称の「d」が「diesel」、「e」が「electric」の頭文字であることはすぐに分かった。ただ、従来型の「E350」と同等のパワーを予感させる「350」という数字については、実際のトルクがAMGモデル並みの700Nmであることを考えると、「400」ぐらいにしておいた方がいいのではなどと、いらぬ心配をしてしまった。

走行モードは多彩で、センターコンソールのダイナミックセレクトボタンでは「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」「インディビジュアル」の5つ、PHVシステムモード選択ボタンでは「ハイブリッド」「Eモード」「Eセーブ」「チャージ」の4つが選べる。

  • メルセデス・ベンツの「E350de」

    多彩な走行モードを選べる「E350de」

アクセルペダルに盛り込んだ工夫

まずは試しにEモードを選択し、電気自動車(EV)として走ってみる。バッテリーとモーターだけで走るので、走行感覚は当然ながらEVそのもの。遮音性が高いので、車内に侵入してくる走行音はほぼ皆無だ。

E350deは「プレッシャポイント機能付き」インテリジェントアクセルペダルを採用している。この機能は、EV走行とエンジン走行の切り替えポイント、つまり、「これ以上踏み込むとエンジンが回ってしまうポイント」を、アクセルペダルの抵抗を増やすことで教えてくれる。これがあるので、EV走行をキープするのはとても簡単だ。今回は体験できなかったものの、前走車がスピードを落としたことを感知すると、ペダルに2回のノックパルスを送って知らせてくれる「ダブルパルス機能」も備えているという。

  • メルセデス・ベンツの「E350de」

    「E350de」のアクセルペダルにはいろいろな工夫が盛り込んである

容量13.5kWのリチウムイオンバッテリーによる航続可能距離は、今回のようなアップダウンのある場所では残り約90%で30キロを表示していたが、これだけ走ることができれば、近所に出かける普段の買い物などは十分にこなせそうだ。もちろん、バッテリーが切れてもクリーンディーゼルエンジンで走行可能なので、軽油さえ給油しておけば、電欠でクルマが止まってしまう心配はない。

通常はハイブリッドモードでの走行が多くなりそうだが、ロジックとしては、アクセルをあまり踏まない状態ではなるべくモーターだけで走り、踏み込んだら一切をディーゼルエンジンに任せてしまうというような、2つのパワートレインを使い分けるセッティングが採用されているように感じられた。当然、アクセルペダルを床まで踏みつければ、エンジンとモーターの共同作業で700Nmの大トルクが解き放たれるのだが。

  • メルセデス・ベンツの「E350de」

    2つのパワートレインを使い分けつつ、必要とあれば共同作業でハイパワーを発揮する「E350de」

面白かったのは、EVによくある「ワンペダル走行」のような、回生による減速感が強烈ではなかったことだ。「きちんとブレーキペダルを踏んで、ドライバーがコントロールしてクルマを止めましょう」という、メルセデス・ベンツらしい設計思想が盛り込まれているようで、それはそれで1つの見識である。

ちなみに、今回の試乗車は正規モデルではなく、メルセデス・ベンツ日本が試乗会のために並行輸入した個体だった。そのためかどうか分からないが、段差を通過した際の乗り味に少し荒い感覚があったことを報告しておく。

E350deの納車は2019年12月から始まっている。グレードは「E350de アヴァンギャルドスポーツ」のみで、価格は875万円。購入者には6.0kW(30A)対応の普通充電器本体を無償提供するほか、設置費用を10万円までサポートするという。

  • メルセデス・ベンツの「E350de」
  • メルセデス・ベンツの「E350de」
  • メルセデス・ベンツの「E350de」
  • メルセデス・ベンツの「E350de」
  • メルセデス・ベンツの「E350de」
  • メルセデス・ベンツの「E350de」
  • メルセデス・ベンツの「E350de」
  • メルセデス・ベンツの「E350de」
  • メルセデス・ベンツの「E350de」

著者情報:原アキラ(ハラ・アキラ)

1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。