貯金したいと思っていても、なかなか貯金できず悩んでいる人も少なくないでしょう。貯金をするのは、将来起きうるかもしれない不測の事態を考えるからです。貯金ができない理由はいろいろあります。欲しいものがあればつい買ってしまう、無駄遣いが多いなどの浪費タイプや、一つの仕事に定着できず収入が不安定といった状況が思いつきますが、「将来の人生を想像する力の不足」も大きな要因となります。

何が起きるかわからないのが人生です。また歳をとれば、収入が無くなり何かと貯蓄に頼らざるを得なくなります。人生100年と言われる時代、どんなトラブルが待ち受けているかしれません。どのようなことに想像力を働かせればよいのでしょうか。

  • "貯金ゼロ"の人を待ち受ける恐ろしい未来とは?(写真:マイナビニュース)

    "貯金ゼロ"の人を待ち受ける恐ろしい未来とは?

最低限の生活は保障される - 最弱の生き物"人類"

人類は一見、地球上で最強の生き物として君臨しているかに見えます。しかしよく考えると、人類ほど弱い生き物はないようにも思えます。例えばトラとウサギを比較すると、まぎれもなくトラに軍配が上がるかもしれません。しかし、トラは今や絶滅も危惧されているのに対して、ウサギは世界中に繁殖しています。ウサギは逃げ込める安全な巣穴を作ることができますが、人間はどうでしょうか。道具がなければ無理でしょう。何とか穴は掘れても、その穴の大きさはクマやオオカミの群れの侵入を防ぐことはできないのです。人類に近いサルと比較しても、その身体能力の違いは歴然です。

人類は道具を使えるようになったことが地球上を席巻(せっけん)できた要因だと言われていますが、それだけでは不足です。群れを作ってこそ道具が生きます。弱者をも保護しながら、その時代に合わせて適材適所で力を発揮し、繁栄してきたのです。

弱者を次々に排除していったのでは、ここまで繁栄しなかったでしょう。たまたま、その世代の人のある部分が弱者であったにすぎず、別の優れた遺伝子を子孫に残してきたかもしれません。弱者を取り込むことで、人類を守ってきたDNAが、今も刷り込まれているはずなのです。

現代でも弱者を守る様々な制度があります。精一杯努力しても、どうにもならない部分はカバーされているはずなのです。問題は「精一杯の努力」の部分です。

実際に、健康保険制度、老齢年金・障害年金・遺族年金などの年金制度、生活保護制度などの身近な社会制度を見てもわかるように、病気やケガを負ったり、年を取って働けなくなったりした場合でも、最低限の生活が保障されています。

では、なぜ貯蓄が必要なのでしょうか。精一杯の努力とどうつながるのでしょうか。

精一杯の努力を怠るとどうなる?

どんなに制度が充実していようとも、精いっぱいの努力を怠っているとみなされている人間に助力をする人はいないでしょう。貧しくても地域の人々とつながり、互いに助け合い、心豊かに過ごすことはできます。しかし、人とのつながりのない人生は、社会保障に守られて最低限の生活はできるかもしれませんが、ただそれだけに過ぎません。

お金がない背景を周囲の人間は察知するはずです。確かに精一杯の努力の結果をもってしても貯金がない状態になるケースはあります。さらに貯蓄がゼロになるだけでなく、働けなくなり、生活にも困窮するケースもないわけではありません。そうした時は様々な社会保障に頼ればよいのです。

昔から「遠くの親戚よりも近くの他人」と言います。東日本大震災で「絆」が見直されもしました。内閣府「平成17年度 第6回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、高齢者の老後の交流対象として、親しい友人・知人の比率が日本13.1%、アメリカ41.2%、ドイツ30.9%、フランス25.4%となっていて、日本はかなり低い数値です。しかし、これからは欧米の比率に近づいていくと思われます。会社という「場」がなくなったリタイア世代にとって、友人や近隣の知人との交流は、老後の人生に重要な位置付けにあるのです。

きちんと生活設計がなされていなかったとみなされる人間と親身に付き合う人は少ないでしょう。人生100年時代、長い第2の人生を孤立し、人類のDNAに外れた生き方は、楽しいはずはありませんし、助け合う手段もなくなります。若い時はさほど孤立も苦にはなりませんが、おそらく高齢になればなるほど、つらくなるのではと思います。

貯金がないと何が問題か

人とのつながりこそ人生ですが、それだけではありません。実際にお金の余力も必要です。若い時はなかなか想像ができないものですが、年齢とともにできないことが増えていきます。昔は大家族で、子供などの次の世代がカバーしていく仕組みでしたが、今の若い世代が高齢となる時代は、それはなかなか難しいでしょう。結局、お金を使って外部サービスを利用することになります。介護保険や高額医療費などの制度はあるとしても、それなりの自己負担は必要です。保険で守られない自費の治療や自費の介護の範囲もないわけではありません。

また若い時は、それなりの収入がありますので、少しまとまったお金が必要となれば、貯金が無くても少し節約して何とかやりくりすることは可能でしょう。しかし、年金額ではやりくりの余地を見出すのは難しいものです。

老後はできないことをお金で解決することが多くなり、何かとお金がかかるものなのです。貯蓄がないと、万一の時は進退が窮まります。

時間が蓄財してくれる、だから貯蓄を始めるなら今!

貯金は、「いつかする」ではなく、「若い今が一番貯金しやすい」ことを忘れてはなりません。若ければ頑張りも効ききます。たとえアルバイトしか働く場所がなくても、何とか踏ん張って資格を取る頑張りも、若い間の方が楽にこなせるはずです。当面の貯金を確保するためにアルバイトの掛け持ちも若い年代であってこそです。

下記は、「運用の価値時間」といって、投資の運用利益は時間が稼いでくれることを示した図です。

Aさんは若い時に年間20万円を貯めて4%で運用しました。12年程度で新たな出資は中止して、それまでに投資した金額とその利益のみを運用し続けました。65歳の際に約1,000万円の資金を手にします。投資金額は240万円です。それに対してBさんはようやく40代になってから、年間20万円の同様の投資を開始し、同じく65歳で1,000万円を手にします。

両者を比較すると、同じ65歳で同じ1,000万円を手にするのですが、投資期間と金額は倍以上の差があります。Aさんは若い頃からスタートしたので、65歳までの長い時間が利益を生み出してくれていたのです。もちろんAさんが13年後も同額の出資を続ければ、65歳で2,000万円以上を手にすることになります。

貯蓄も収入アップも節約も、まさに「今でしょ!」で挑戦してみてください。