円谷プロダクション製作の「ウルトラマン」シリーズ最新作『ウルトラマンタイガ』が、2019年7月6日よりテレビ東京系全国ネットで放送開始される。

2013年に放送された『ウルトラマンギンガ』から始まった"ニュージェネレーションヒーローズ"と呼ばれる新世代ウルトラマンシリーズの第7作目にあたる本作は、主人公・工藤ヒロユキ(演:井上祐貴)の体にウルトラマンタイガ、ウルトラマンタイタス、ウルトラマンフーマという3体のウルトラヒーローが憑依しており、対戦する怪獣や宇宙人の特性に合わせてそれぞれの特殊能力を活用するという、ウルトラマンシリーズ初の斬新なヒーローシフトが採られており、放送前から大きな話題を集めている。

令和という新しい時代を迎えて最初となるウルトラマンシリーズ『ウルトラマンタイガ』の"基礎"を築く第1、2、3話の演出を手がけるのは、『ウルトラマンガイア』(1998年)や『ウルトラマンコスモス』(2001年)で活躍し、"ニュージェネレーションヒーローズ"では『ウルトラマンオーブ』(2016年)から毎年連続参加している市野龍一監督。レギュラーキャラクターの個性を活かしたコミカルタッチの作品や、胸にグッとくるシリアスな作品など、幅広い内容の秀作エピソードをいくつも作り上げてきた市野監督が、初めてメイン監督となってキャラクターの設定や世界観の構築からタッチした『ウルトラマンタイガ』とは、どんな魅力を備えたシリーズなのか。待望の第1話を目前に控え、その特色や見どころを尋ねた。

  • 市野龍一(いちの・りゅういち)。1962年生まれ、兵庫県出身。1985年、上智大学文学部社会学科卒業。1990年にテレビドラマ『はいすくーる落書2』で監督デビューを果たし、『ウルトラマンガイア』(1998年)に監督として参加する。『ウルトラマンコスモス』(2001年)を手がけた後、15年ぶりに『ウルトラマンオーブ』(2016年)でウルトラマンシリーズの監督を務め、『ウルトラマンジード』(2017年)『ウルトラマンR/B』(2018年)にも連続して参加する。『超星艦隊セイザーX』(2005年)『風魔の小次郎』(2007年)などのテレビドラマおよび映画の監督をはじめ、舞台のプロデュース&作・演出、映画学校講師、水中撮影、ライブカフェ「下北沢ピカイチ」副店長など、多方面で精力的に活動を続けている。撮影:宮川朋久

――市野監督がこれまで手がけられてきた"ニュージェネレーションヒーローズ"のウルトラマンシリーズでは、いわゆる"タテ糸"となる基本設定編ではない、印象的なゲストキャラクターが活躍する"単発エピソード"が中心でしたね。ああいった単発回でのゲストには、いろいろ個性豊かな俳優さんが登場されましたが、みなそれぞれ市野監督のご指名なのでしょうか。

僕は映像のほかに演劇もやっていまして、ウルトラマンを撮る時のゲストに舞台役者さんをキャスティングすることが多いんです。あと、俳優の赤星昇一郎さんと一緒に下北沢ピカイチというライブカフェをやっていて、そこで演劇のワークショップなども開催しているのですが、そこで出会い、目を付けた役者さんに「じゃあ、次の作品に出てみる?」みたいな感じで出演を依頼することもあります。ここ数年はウルトラマンに毎年2人ずつくらい送り込んでますね。よく知った役者さんだと、どんな演技をするか、出来るのかがわかっているので、ホン(脚本)も作りやすいんです。もう、ホンを書き出した段階ですでにオファーしておいて「ちょっとこの辺の日程スケジュール空けておいてね。キミを想定してホン作ってるから」なんて仮押さえすることもあります(笑)。それで行くと、今度の『ウルトラマンタイガ』の第1、2、3話は正直"市野組"の役者だらけです(笑)。

――そうなんですね! 『ウルトラマンタイガ』の企画に市野監督が参加されたのは、いつごろからになりますか?

企画自体は、従来よりもちょっと早めの昨年(2018年)4月ごろから動いていたそうです。僕がメイン監督として企画に参加したのは11月あたり。そのときすでに、設定や大まかなストーリー展開が固まりつつあって、こういう感じになっていますと教えられました。まあ、そこから現実的に作品にしていく中で、物理的な問題やさまざまな条件を鑑みた上で現場への橋渡しをするために入ってくれと言われて、参加することになりました。

――これまでメイン監督を務められた田口清隆監督や武居正能監督を支え、単発回で濃密な個性を発揮してこられた市野監督が、満を持してメインに入るということで、今までのウルトラマンシリーズをずっと観てきたファンの方たちからも期待が大きいんじゃないでしょうか。

みなさん、"満を持して"って言ってくださるんですよね。まぁ、長くウルトラマンをやっていましたから。『ウルトラマンガイア』『ウルトラマンコスモス』から『ウルトラマンオーブ』まで、空白の期間はありますけれどね。

――メイン監督の方々が本流のストーリーを追いかける中で、笑える話や泣ける話など、自由度の高い単発エピソードを手がけてシリーズ全体を膨らませるという、いわば"いぶし銀"の働きに徹していた印象ですね。

"いぶし銀"とは、うれしい言い方をされますね。いやあ、僕もいぶし銀と呼ばれるまでになったのかと、ちょっとテンション上がりました(笑)。

――そんないぶし銀の活躍を見せた市野監督が、今回は初のメイン監督になるということで、『ウルトラマンタイガ』という作品に対してどのようにご自分の"色"を盛り込もうとされましたか?

確かに、基本設定や人間側のキャラクターなど、一から決める作業をいくつか任されたので、今までとはぜんぜん違いますよね。僕が最初にやりたかったのは、目に見えているところすべてを"カッコよく"したいということでした。子どもたちがテレビを観ていて、「カッコいいな、憧れるな」という部分をちゃんと作り込むこと。

例えば、主人公の工藤ヒロユキが務める「E.G.I.S.(イージス)」のセットなんかも、子どもたちが「ここで働いたら、楽しいかも」と思えるような場所にしてみましたし、彼らが乗る車も、カッコいい車にしようと、実際のセキュリティサービスが乗ってるっぽい黒の4WDを選ばせていただきました。車に貼っているロゴひとつとっても、「カッコいいじゃん!」と言ってもらえるようにしたかった。

ヒロユキたちが着ているユニフォームも、隊員服みたいにいろんな装備をゴテゴテつける方向ではなく、リアルでシンプルなイメージでまとめてほしいと要望しました。今回のE.G.I.S.は民間の警備会社ですから、いわゆる地球防衛チームの類とは、大きく違うんです。例えば、相手を殺傷するような威力を持つ武器は絶対に持たない、とか、キャストの皆さんにもそのあたりは強調して説明しました。