――怪獣や侵略宇宙人が関わる事件にも関わっていくチームにしては、そういった「民間組織」の感覚があるのは目新しいですね。

悪い奴を前にしても、拘束はできるけれど殺傷はしない。そして怪獣が出てきても、基本的には何も対抗することができない、という話をキャストの皆さんにはしました。E.G.I.S.は戦うことよりも、ウルトラマンとなって戦ってきたヒロユキをあたたかく迎え入れる"ホーム"の雰囲気が大事だと。メンバーはそれぞれ出自が異なり、基本はバラバラな赤の他人同士なんです。でもそんな人たちが同じ方向を向き、支え合うことによって、家族みたいな雰囲気ができあがる。子どもたちが「こんな人たちと一緒に働けるのなら、E.G.I.S.に入りたいな」と思えるような部分を狙いたかったんです。

――ヒロユキが変身するという、3体のウルトラマン(タイガ、タイタス、フーマ)の設定についてはいかがですか。

ウルトラマンもイケメンにしないといかんな、と思いまして、まず顔にこだわりました。今回3体のウルトラマンが出ますが、その3体の個性をしっかりと立たせようと心がけています。オーブやジード、ロッソ、ブルは変身前の人間がそのままウルトラマンになった存在ですけれど、今回はヒロユキとタイガ、タイタス、フーマはまったくの別人格で、いわゆる"憑依型"のウルトラマンです。だから声優さんも3人呼んでいい、ということになりまして、それぞれに声をアテるわけです。

そうなると、各キャラクターの個性も出しやすくなりますし、主人公とも絡ませやすくなります。さきほど"カッコいい"と言いましたが、厳密には"カッコかわいい"がいいかな、と思ってます。巨大化して怪獣や宇宙人と戦闘しているときはもちろんカッコいいんですけれど、事件が何も起きていない日常シーンでヒロユキとウルトラマンたちが会話をするシーンを作っていて、そこではタイガたちは妖精のように、ヒロユキの目にしか見えない状態で出てくるんですよ。サイズも60cmくらいになって階段のところに座っているとか、2mくらいでさかさまにぶらさがっていたり、"コップのフチ子さん"みたいに小さな状態だったり、いろんな登場の仕方をさせています。戦っていない時にヒョイヒョイと出てくるわけで、その状態=イメージ体とヒロユキが会話をしていても、傍にいる仲間たちはヒロユキが1人で何かとしゃべっているようにしか見えないという。その会話の内容も、ウルトラマンと地球人の会話というより、友だち同士の気楽なトークという感じになっているんです。

――ウルトラマンタロウの息子であるウルトラマンタイガは、ヒロユキの体の中にいながら、イメージ体となって外に出て、直接"対話"するという設定なのですね。

そうです。今度のタイガはタロウの息子さんなんです。僕は子どものころ『ウルトラマンタロウ』をテレビで観ていた世代でしたから、その息子の活躍を描くことができるなんて、と感激しました。そのタイガですが、設定では地球人でいうと中学生くらいだと言われたんです。おそらくウルトラマンシリーズのメインで戦うヒーローとしては、もっとも"若い"設定だと思います。

言ってみれば、中1か中2くらいの、生意気で血気さかんなウルトラマンが、22歳のヒロユキと会話をしていて、なんかヘンな感じなんですよね。ふつう、ウルトラマンと人間の"バディ"というと、なんとなくウルトラマンのほうが年上っぽくて"上から"言い含めるような物言いが多かったと思うんです。僕はそういうのを見ていて、もっと"友だち感"が出せたらいいのになって、ずっと考えていました。そんな流れで、タイガはヒロユキよりも"年下"っぽいイメージで、声優の寺島拓篤さんにも「若さ全開で」とお願いしているんです。ヒロユキもタイガも、若さゆえ熱血しすぎて失敗するとか、お互いにそういうところがあるんですよ。ヒロユキが熱くなっているとタイガが冷静に対処するとか、その逆もあって、そのやりとりがすごく面白くなると思いますよ。

――人間の考えを超越した人格者というウルトラマンの一般的なイメージから大幅な脱却をはかり、主人公のヒロユキと"対等"な関係で、お互いに経験を積みながらレベルを高めているといった、成長型のヒーロー像を想起させますね。同じ「かつてのウルトラヒーローの息子」というポジションでは、ウルトラセブンの息子・ウルトラマンゼロが活躍しましたが、タイガとゼロとでは異なっている部分はありますか?

意識したのは、タイガはやはりタロウの息子なので、ゼロほど"はねっかえり"の部分が強くはない、ある意味、育ちのいいウルトラマンだということです。熱い心を持っているんですけれど、それだけに若さゆえの未熟さみたいなものを見せるという。タイガを設定するにあたって、僕たちもゼロと同じになってはいけないと考えて、差別化をしっかり図ろうとしています。ほんの一例としては、ゼロがセブンのことを「おやじ!」と呼びますが、タイガはタロウのことを「父さん」と呼びます。そういった部分からも、ゼロとタイガの性格の違いがはっきりわかるという(笑)。

――ストーリーの方向性はいかがですか? 『ウルトラマンタロウ』に寄せて、やや明るく楽しい作風になっていたりしますか。

前作の『R/B』が楽しいムードを大事にしてきた作品ですから、今回はややハード気味に、と言われてまして、「はい、わかりました」と言っておきながら、僕が第1、2、3話を撮るんなら、ぜったい普通にはならないのをみんな分かっているみたいなので「市野さん、あまりやり過ぎないようにね」と言われたこともあります。おそらく最初の時点で「お笑い要素タップリで」なんて言ったら、「わかりました!」とかなりヘンなシーンばかり撮るかもしれませんから、バランスを取る意味で「もっとハードに」と言われたのかもしれません。

意識して、シリアスでSFチックな要素をストーリーに盛り込みながらも、随所随所に、ガマンできず、笑い要素をぶっこんでいます(笑)。その結果、誰かに言われたんですけれど「マジメな部分とギャグの部分がいいバランス」になっているようです。やっぱり土曜日の朝に放送する作品ですから、ハードなだけじゃなくて明るいムードも必要だ、とも言われましたし(笑)。第1話の脚本を書かれた林壮太郎さんは『コスモス』のころから知っていて、直接作品で組んだことはなかったんですけれど、やりやすかったですね。どちらかというと"熱い"物語をお得意とされる方ですから、若いウルトラマンが活躍する『ウルトラマンタイガ』にピッタリだと思って、一緒に作品作りを頑張ってもらっています。