外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年4月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 4月の推移】

4月のユーロ/円相場は124.090~126.808円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.6%上昇(ユーロ高・円安)した。前月の下落(約1.8%)の反動や、英国の欧州連合(EU)離脱再延期などからユーロ買いが先行したが、その流れは続かず後半はやや失速した。

ユーロ圏最大の経済規模を誇るドイツの景気減速に対する懸念が根強く、ユーロの上値は重かった。18日の独4月製造業PMIや、24日の独4月IFO景況感指数がいずれもユーロ売り材料となった。ただ、ドル/円相場の小幅高の影響などから下値も限られ、124円台を割り込むことなく125円台に持ち直して4月の取引を終えた。

【ユーロ/円 5月の見通し】

4月のユーロ相場の上値を抑えたドイツ景気の動向が当面のカギとなろう。中でも、排ガス規制の影響などによる自動車業界の低迷が懸念されており、5月23日の独5月製造業PMIは今回も注目を集めそうだ。

その他、同じく23日の独5月IFO景況感指数や、5月8日の独3月鉱工業生産、15日の独1-3月期国内総生産(GDP)など同国の主要経済指標を確認したい。また、4月は景気減速懸念がくすぶる中にあっても、長期金利の低下などを好感して独DAX株価指数は比較的大きく上昇した。そうした株高がユーロ/円相場の下値を支えた面もあるだけに、5月の株価動向にも注目しておきたい。

他方、5月は欧州の政治面にも注目が集まるだろう。4月28日のスペイン総選挙でも極右政党が躍進するなど、「反移民」を掲げる政党に票が流れる傾向が見て取れる。5月23-26日の欧州議会選挙でも「EU懐疑派」が躍進する可能性があると見られており、結果次第では欧州の政治システムに対する不安が広がる恐れもあろう。

また、この欧州議会選挙に参加したくない英国のメイ政権は、22日までに英議会に離脱案を承認するよう働きかける公算が大きい。英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitへの不透明感もユーロの重しとなり得るため、注意が必要だろう。

【5月のユーロ圏注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya