外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年3月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円 3月の推移】

3月のドル/円相場は109.696~112.134円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.5%下落(ドル安・円高)した。前月の株高・円安の流れを引き継いで、5日には昨年12月20日以来となる112.10円台まで上昇したが、早々に息切れした。

米2月非農業部門雇用者数が2.0万人しか増えなかったことなどから米国景気の先行きに不安が広がったほか、中国の輸出減少やドイツの景況感悪化などによって世界的な景気減速に対する懸念が再燃した。こうした中、米債市場で短期金利(3カ月財務相短期証券)が長期金利(10年国債)を上回る「逆イールド」が発生。

「逆イールド」は景気後退の予兆との見方が強く、米金利先物市場が織り込む年内の利下げ確率は7割前後に上昇した。これを受けてドル/円は22日に110円台を割り込んだが、下値では四半期末に絡む実需のドル需要などに支えられて下げ渋った。

【ドル/円 4月の見通し】

4月のドル/円相場のカギを握るのは、米長期金利の動きと見る。米10年債利回りは3月に一時2.338%前後まで低下する場面があった。米政策金利(FFレート)が2.25-2.50%であることを考えれば、10年債利回りの2.3%台は利下げがなければ正当化できない水準だ。3月の「逆イールド」発生と、その影響による株安・円高も、利下げ観測による米長期金利の低下が主因であり、4月の金利動向が注目される。

4月については米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されないこともあって、経済指標の結果が重みを持つことになりそうだ。1~2月は米経済指標に弱めの結果が散見されたが、これらが米政府機関一部閉鎖(による税還付の遅れなど)や寒波襲来の影響などによるものであれば、3月分の指標結果には改善が目立つはずだ。特に、米3月ISM製造業景況指数から米3月雇用統計へと至る4月第1週の米経済指標群は、2019年第2四半期の相場のテーマと展開を占う意味でも重要となろう。

年内の利下げ観測が後退すれば、米長期金利が2.5%超への戻りを試すと見られ、ドル/円を押し上げる公算が大きい。この場合は、年初来高値(112.13円前後)の更新も視野に入りそうだ。一方、年内利下げの確度が高まれば、再び110円割れもあり得るだろう。米国景気の先行きに悲観と楽観が交錯する中、市場の見方がここからどちらに傾くかが、米長期金利やドルにとってもターニング・ポイントとなるだろう。

【4月の日米注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya