――初期編では、星人に敗れたゲンをモロボシ・ダン隊長が徹底的に鍛えて、リターンマッチで勝利するまでを描くエピソードが多かったですね。第2話「大沈没!日本列島最後の日」ではギラス兄弟のスピン攻撃に対抗するべく体育館で宙づりになったり、第4話「男と男の誓い」ではツルク星人に打ち勝つため、滝の水を"斬る"訓練をしたりと、テレビ画面からも壮絶さが伝わってくるかのような「特訓」描写が印象的でした。

そうなんだよね。第1話(セブンが死ぬ時!東京は沈没する!)では12月の海でロケをして、第4話では1月の滝でしょう。やりはじめたときは無我夢中で、考える暇もなかったですから何とも思わなかったんですけれど、さすがに何話かこなしていくと「なんで毎回、こんなに死にそうな撮影をやんなきゃいけないんだ」なんてだんだん気づきましたよ(笑)。この仕事、受けるべきじゃなかったかなって。

――第6話での、ダン隊長が乗るジープにゲンが追いかけまわされる特訓というのは、特に印象的でしたね。本放送からずっと後になって、バラエティ番組で取り上げられて話題になったりしました。

あのジープは中古車で、急ブレーキをかけても6メートルくらい前に進んじゃうんです。それなのにスピードを出しているものだから危なくてね。テストで走っていると、ふくらはぎのところに車輪が当たってくるんです。もしもつまずいたら、完全に轢かれる! ヘタすると死んじゃいますから、東条昭平監督に「危ないじゃないですか!」って猛抗議したんですよ。すると監督は僕の言葉をずっと聞いているかと思ったら「はい本番!」って(苦笑)。僕としては、監督に抗議している顔のまま、撮影に臨んでいるわけでね。ファンのみなさんがよく「ゲンの目の芝居が真剣で良かった」って言うんだけど、あれは芝居じゃなくて本気で怒っている目だからです(笑)。「隊長、やめてください!」ってセリフで言っていますけれど、あれは「監督、やめてください!」って思いながらやっていたんです。

――共演者の中で、特に印象に残っている方はいらっしゃいますか?

そりゃあ、当時いろいろお世話になったダン隊長の森次(晃嗣)さんでしょうね。今も森次さんのお店「ジョリーシャポー」で開催されるトークイベントに、僕がゲストで行くことがあります。そして、僕をお兄ちゃんと呼んで慕ってくれたカオル役の美子ちゃん(冨永みーな)や、トオル役の新井つねひろくんとは、撮影当時よく話をしていたので印象に残っています。

新井くん以外のレギュラーは第40話(MAC全滅!円盤は生物だった!)で円盤生物にやられて死んでしまうでしょう。そして同じ話のCM後ではゲンとトオルが美山家に引き取られて新しい生活を始めるという。あれって、台本にはCM前の凄惨な状況から、CM後のホームドラマ的なムードに至るまでの中間の描写はひとつもなかったんです。そこで新井くんとは「台本には書かれていないけれど、いなくなってしまったカオルちゃんや百子さんたちのことは、僕たちの心の中でずっと思っていようね」って話をしたのをよく覚えています。

――激しい特訓シーンや、星人との対戦シーンに明け暮れた1年間だと思いますが、撮影中にケガやご病気をされたということはなかったのですか。

それが幸いなことに、大きなケガはなかったんです。ただ、第32話(さようならかぐや姫)のとき40度の熱を出してしまって……。歩くだけでフワフワしてしまう感覚だったのをよく覚えています。後になってファンの方から「ラストでかぐや姫が去っていくとき、ゲンの瞳がうるんでいたのがよかった」と言われたことがありましたけれど、あれは熱でもうろうとしていただけだったんじゃないかな(笑)。

――改めておうかがいすると、やはり『レオ』の撮影はハードだったのですね。

いつも2本、あるいは3本のエピソードが同時進行でしたから、朝5時や7時に出発して、終わるのが夜の10時。そんな生活を1年間続けていました。だから、どのエピソードでどんな怪獣や星人が出てきて、どういう絡みをしたのかはぜんぜん記憶にないんですよ。むしろ、ファンの方たちのほうがずっと『レオ』に詳しいですね。最終回「さようならレオ!太陽への出発(たびだち)」で、トオルに別れを告げてヨットに乗って去っていくシーンなんていうのも、確かに撮影したという記憶は残っているけれど、細かい部分はさすがに……。40年以上も前のことだからねえ(笑)。

――『ウルトラQ』から『ウルトラマン80』までの8作品をひとつの"歴史"と捉え、これらの作品群と直結した世界観で作られた『ウルトラマンメビウス』(2006年)の第34話「故郷のない男」では、ウルトラマンメビウス/ヒビノ・ミライを鍛えるため、ウルトラマンレオ/おおとりゲンがかけつけてくれました。このときのゲスト出演についての思い出はありますか?

僕としては、『メビウス』に出たときの記憶のほうが鮮明なんですよ。出演するにあたっては『レオ』の最終回で去っていったゲンが、あれからどうしてきたかという部分を強く意識しました。台本を読むと、ミライにゲンが「その顔はなんだ!? その目はなんだ!? その涙はなんだ!! そのお前の涙でこの地球が救えるのか!?」って喝を入れるんだけど、これって昔、ゲンがダン隊長に言われた言葉(第4話)なんだよね。まあ、ある種の仕返しか(笑)。

最初は普通の格好でミライの前に現れることになっていたんだけど、僕としては、全滅したMACの仲間や命を失った親しい人たちの弔いをするために、これまで托鉢の行脚をしてきた、というのがいちばんおおとりゲンらしい行動だと思った。それで、あの僧のスタイルにしたいと僕から提案したんです。僕にとって『メビウス』の第34話は、『レオ』の第1話から第51話の集大成という気持ちで、最終回の"その後"を演じるつもりで挑みました。