1974年に放送された特撮テレビシリーズ『ウルトラマンレオ』のBlu-ray BOXが、2018年12月21日に発売されることが決定。これを記念して『ウルトラマンレオ』Blu-ray BOX発売記念プレミアムイベント スペシャルトークショー~レオの映像特典公開収録!~』が16日、池袋サンシャインシティで開催中の『ウルトラマンフェスティバル』会場にて行われた。

ステージには、主人公のおおとりゲンを演じた真夏竜、ゲンを厳しく鍛えるMAC隊長モロボシ・ダン役の森次晃嗣、ゲンを兄のように慕っている少女・梅田カオルを演じた冨永みーな、そして少年時代に『ウルトラマンレオ』を観て以来の大ファンだという坂本浩一監督が登場。客席を埋め尽くした幅広い世代の『レオ』ファンを熱く興奮させる激しいトークが繰り広げられた。

  • 上段左から、坂本浩一監督、森次晃嗣、真夏竜、冨永みーな、下段左から、アストラ、ウルトラマンレオ

『ウルトラマンレオ』は、『帰ってきたウルトラマン』(1971年)、『ウルトラマンA(エース)』(1972年)、『ウルトラマンタロウ』(1973年)に続く、いわゆる"第2期ウルトラマンシリーズ"の第4弾にして、最終作にあたる。ウルトラ6兄弟、ウルトラの母という"ウルトラファミリー"路線を打ち出し、全体的に大らかなムードを備えた『タロウ』に続く作品ということで、それまでのイメージとの差別化を図った『レオ』は、従来のウルトラ兄弟たちがM78星雲"光の国(ウルトラの国)"という故郷を持っているのに対して、獅子座L77星出身という設定が作られているのが、大きな特徴となった。

L77星はマグマ星人の操る凶悪な双子怪獣によって滅亡。家族を失ったレオは地球にたどりつき、地球人おおとりゲンとして平和な生活を取り戻そうとしていたが、なんと地球にもマグマ星人の魔の手がのびていた。ふたたび地球を守る使命を帯びて宇宙パトロール隊MACの隊長となったモロボシ・ダン=ウルトラセブンは、双子怪獣によって足の骨を折られ、大ダメージを受けてしまった。セブンへの変身が叶わなくなったダンは、若き戦士ウルトラマンレオ=ゲンをMACに入隊させ、共に第二の故郷である地球を命がけで守り抜く決意を固めた。

前年に劇場公開されたアクション映画『燃えよドラゴン』の影響を強く受け、ウルトラマンレオは激しい空手アクションを強調。初期エピソードでは、まだ戦士として未熟なゲンをダン隊長が鬼コーチさながらに厳しく鍛え上げる「特訓」シーンが大きな見せ場となった。第4話「男と男の誓い」では滝の水を手刀によって"斬る"特訓、そして第6話「男だ!燃えろ!!」ではダン隊長の運転するジープが走るゲンを追いかけまわす特訓などが行われ、そのあまりにも壮絶なアクション描写は強いインパクトをもたらした。

しかし、『レオ』は本放送当時、裏番組である歌謡バラエティ番組などに押され視聴率的に苦戦を強いられており、数字回復のためにさまざまな"強化策"が取り入れられることになった。死んだと思われていた弟アストラが生きていて、レオを助けて兄弟怪獣ガロン、リットルに挑む第22話「レオ兄弟対怪獣兄弟」や、宇宙の伝説となっている超人ウルトラマンキングがレオの窮地を救いに来る第26話「ウルトラマンキング対魔法使い」といった新キャラクターの登場は、まさに強化策のひとつとして試みられたことである。

そして第26話から第32話にかけての7本のエピソードでは、「日本名作民話シリーズ!」と銘打ち、桃太郎や一寸法師、浦島太郎、鶴の恩返しといった民話・昔ばなしを"ウルトラ風"にアレンジした夢のあるストーリーが展開。第29話「運命の再会! ダンとアンヌ」では『ウルトラセブン』(1967年)のひし美ゆり子、第30話「怪獣の恩返し」では『ウルトラマン』(1966年)の黒部進、桜井浩子といったかつてのウルトラマンシリーズの出演者がゲストで登場するなどのファンサービスも行われた。

第38・39話では、M78星雲ウルトラの国と地球のどちらかが壊滅するか!?という未曽有の危機が訪れ、ウルトラ兄弟とレオ兄弟が争い合うという宇宙的規模のストーリーが繰り広げられた。この事件を解決に導いた功績により、レオとアストラは正式にウルトラ兄弟として認められたのだが、『レオ』の物語は続く第40話でさらなる急展開を迎えることになった。

第40話「MAC全滅!円盤は生物だった!」から、地球侵略を狙うブラックスターからブラック指令がやってきて、空飛ぶ円盤(未確認飛行物体=UFO)に変形することのできる奇怪な宇宙生物「円盤生物」が地球の人々を襲撃することになった。円盤生物第1号シルバーブルーメによってMACはゲンを残して全滅し、地上でもゲンと親しかった人々がトオル少年以外すべて尊い命を奪われてしまう。宇宙人に父を殺され、今また最愛の妹カオルを失ったトオルを自分の境遇と重ね合わせたゲンは、トオルを1人でも強く生きられる男にするべく、厳しく鍛えるのであった。

まさに波乱万丈という言葉が似合う『ウルトラマンレオ』だったが、1975年3月28日に最終回(第51話)「さようならレオ! 太陽への出発」が放送され、長きにわたるシリーズにピリオドを打った。しかし、1978~1979年ごろ雑誌記事や書籍といった出版メディアからふたたび「ウルトラマンシリーズ」そのものの人気が再燃したことにより、やがて全国的にシリーズの再放送が行なわれる。『ウルトラマンレオ』はこのときの再放送があったおかげで、本放送当時よりも高い人気を子どもたちから得るようになった。

行く手を阻む数々の困難に命がけで挑み、たとえ一度敗れても決してくじけず、逆転勝利をつかみ取るまで努力を続けるおおとりゲン=ウルトラマンレオの精神は、時代を超えて多くの人々を感動させるものだったと断言できるだろう。

真夏は、会場につめかけた大勢のファンたちの熱い思いを受け取り、「ウルトラマンレオを愛してくれているみなさんの思いがあるからこそ、44年の歳月を経てもレオの人気が衰えていない。みなさんに感謝です」と、ファンの応援に感謝を示した。厳しいダン隊長・森次との共演については、「まず森次さんのアップカットを何話分かまとめて撮って、それが終わったら僕のほうの撮影が深夜まで続くんです。『いいなあ、森次さん早く終れて……』と思っていたら、あの『ゲン! その目はなんだ!』みたいな厳しいセリフの後とは思えないくらい優しい声で『ゲン、あとは頑張ってね~!』なんて言いますからね。そのギャップのすごさに驚きました」と、劇中での鬼隊長ぶりと素の森次とでは印象が全く違うことを懐かしそうに回想していた。

森次は、「最初、ダンとは違う役で隊長をやってくれと依頼されたのですが、同じウルトラマンシリーズに出るのだったら、やっぱりウルトラセブン=ダンのほうがいいんじゃないかと自分から提案して、MACのモロボシ・ダン隊長が生まれたんです」と、主演作『ウルトラセブン』のモロボシ・ダン役およびウルトラマンシリーズに対する愛着をのぞかせる裏話を明かした。しかし、本作ではセブンに変身できないダンという役柄なので、「悲しかったですよ~。デュワッ! と変身できないんですから。それで、若いゲンを鍛えて代わりに地球を守ってもらうわけなんですが、ずいぶんイジメましたね(笑)」と、劇中での過酷すぎる特訓の数々を改めて振り返りつつ、「まあ、愛のムチでしたね。ダンとゲンとの師弟愛というものが出せれば」と、あえて厳しい態度で挑んだ演技の狙いを語った。「当時の真夏の印象は?」という質問には、「新人なのに、新人っぽくなかった。やる気がありましたからね。ちょっとブルース・リーに似てるなって思った」と、さすがは『レオ』らしく何事にもファイトを燃やす姿勢に好感を持っていたことを打ち明けた。

撮影当時の冨永はまだ7歳の少女で、真夏を「真夏のお兄ちゃん」と呼んで撮影の合間もずっと仲良く遊んでいたという。もちろん共演者たちにもスタッフにも可愛がられていたので、「毎日撮影所に通うのが楽しみ」だったそうだ。『レオ』などの特撮巨大ヒーロー作品では、本編(人間の芝居の部分)と特撮(怪獣が街を壊したり、ヒーローと戦ったりする部分)が別班になっていることがほとんどだが、冨永は本編撮影の合間をぬって、よく特撮ステージにも遊びに行き、ビルのミニチュアを見学したこともあったと話した。

印象に残っているエピソードとしては、鳥取砂丘でロケを行った第37話「怪奇!悪魔のすむ鏡」があるという。冨永は当時、ロケバスの中で自作の歌を歌っていたのだが、そのひとつである「大の字のうた」を劇中でのカオルの歌として披露していることがあり、そういった意味でも忘れられないエピソードになっているそうだ。

真夏のリクエストで、急遽冨永が「大の字のうた」をアカペラで歌うことになり、少女だったころと変わらない可憐かつのびやかな歌声が客席を魅了した。

ブルース・リー、ジャッキー・チェンといったアクションヒーローと同じく、空手技を用いるウルトラマンレオを愛してやまない坂本浩一監督は、『ウルトラファイトビクトリー』などで現代にウルトラマンレオを甦らせ、本放送当時のイメージそのままにハードアクション演出を施している。坂本監督はレオの魅力を「特訓をすることで強くなっていく、体育会系ウルトラマン」と分析しており、「レオがあるからこそ、今の自分の作品がある」と『レオ』の世界観を心底愛している姿勢を見せた。

自分の監督作『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』でも、レオに特訓を受けるウルトラマンゼロを出している坂本監督は、『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(2015年)でウルトラマンゼロに鍛えられるウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーを描き、そして『ウルトラマンX』第13、14話ではウルトラマンビクトリーがウルトラマンエックスの剣さばきを激しく鍛えるシーンを挿入している。監督によれば「受け継がれる特訓の系譜。どちらかというと知的な傾向にあるウルトラマンシリーズで、体育会系の流れを作っておきたかった」という理由からであるらしい。

また『ウルトラマンジード』(2017年)のメイン監督を務めた際には、第1話でビル街のミニチュアセットを水没させたり、ウルトラマンキングが奇跡を起こしたりといった『レオ』の「アクション」以外のシチュエーションを積極的に取りこんで、『レオ』にオマージュを捧げようとしたことも語った。

さらに、坂本監督の将来的な野望は「レオの新作を作ること」と明かして、ファンのひときわ大きな歓声を集めた。坂本監督から「新作を作るならどんな内容に?」と質問された真夏は、「昔と逆転した話をやりましょう。ゲンが隊長(ダン)をイジメる(笑)」と返して、会場の爆笑を誘った。森次もこれに乗って「ゲン、俺にはできないー!!って言うのか(笑)」と続け、さらなる笑いをもぎ取っていた。「戦う敵はどうしましょう?」との問いにも、真夏が「"老い"との戦いだね」と返答したため、坂本監督がどうリアクションしていいか困ってしまう一幕があった。

続いて、『ウルトラマンレオ』の第22話「レオ兄弟対怪獣兄弟」の上映が行なわれた。オープニングでは、ステージ上の真夏が主題歌「ウルトラマンレオ(2番)」を客席のファンと一緒にナマで歌うという、最高に盛り上がるシチュエーションが到来。曲の最後には、真夏によるおおとりゲンの変身ポーズと、「レオーッ!!」という変身のかけ声まで披露してくれた。

上映の後には、ウルトラマンレオと弟アストラがステージにさっそうと登場。真夏はゲンになりきって「アストラ、久しぶり!」とアストラに握手し、これに対抗するべくダンはレオに向かって「レオ、元気だったか」と握手を求める光景が見られた。

最後にマイクを握った真夏は「みなさんの熱い思いに触れ、励まされております。今後ともレオをよろしくお願いします」とあいさつ。ウルトラマンレオ/おおとりゲンを愛し続ける熱心なファンへの感謝の心を新たにした。

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