――こういう展開になるというお話はどなたからお聞きになったのでしょう。

大森(敬仁)プロデューサーですね。もう10年来お付き合いさせていただいている大先輩、お兄さんなんですけれど、僕から「一海、死にますよね?」って聞いたんです。大森さんは最初「いやいや……」って感じだったんですけど。でも、僕としては、「その世界の中で生ききる」という姿勢に美学を感じていて、一海が死ぬことが嫌だとかはなく、一海が自分の生き方を全うできればいいなと思っていました。一海が自分を貫いた結果、命を懸けなければならないことがあるというのは見えていたので。

僕は、前回出演した『仮面ライダーキバ』でも死んでいますし、それでそういうところが見えていたのかもしれません。自分の思いをもって戦って、そうなってしまうのであれば、一海としても本望かなと思うんですね。僕は一海がそうなっていくことにまったく抵抗がなくて、台本を読んでも、撮影に向けて気持ちが燃えたんですよ。でも、僕がいなくなったあとの全員の表情がワンシーンだけあるんですけど、そこが辛かったですね。見てられないというか……。台本をもらった時も、みんなでメシを食っていたんですけれど、ちょっと無理で外に出てしまいました。

一海の最期については、僕も日々の生活の上で準備していたこともありますし、そういったことを全部ぶつけました。視聴者の方々には、『ビルド』という作品が一体何を伝えたいのか、そこで描かれている命の尊さというものも、ぜひ家族で見てもらえたらうれしいです。僕もそうでしたが、子どもでもちゃんと記憶に残ると思うんです。

僕も役者という仕事で生活をしている以上、命を懸けてやっていますので、それを受け止めていただけたら、僕も役者をやっていてよかったな、役者として生きてきてよかったな、一海として生きてよかったなと思えるので。

――今までの物語の中で、特に心に強く残るエピソードはありますか。

たくさんあるんですけど、戦兎が青羽の命を奪ってしまったときに、北都との代表戦を前に苦しむ戦兎に向かって、一海が喝を入れにいくんです。それって、戦兎に言っているんですけど、実は自分に向けてでもあるんですね。代表戦で一海は負けてしまうんですけれど、その後、第29話「開幕のベルが鳴る」で、今度は逆に戦兎が「俺は敵も味方も死なせないと言った……愛と平和を掲げて闘うと誓った……」と、苦しんでいるグリスに伝えるシーンが好きです。そのあとビルドと力を合わせてヘルブロスを倒すというところがあるんですけど、そういうところは長いストーリーだからこそできる展開なので、すごく印象に残っています。

あとは……いっぱいあるんですよね。第26話「裏切りのデスマッチ」の西都との代表戦で、アフレコのときに血管が切れるんじゃないかというくらい気合を入れてやったことがありました。

――「友情、厚情、激情!今の俺は負ける気がしねえ!」という叫びにも似たセリフは、とても印象的でした。

そうして仲間の思いを背負ってやれたことは、僕としてはよかったと思います。あとは仲間との別れ、三羽ガラスとの別れは辛かったですね。