『ウルトラマンX』(2015年)や『ウルトラマンオーブ』(2016年)などで知られる田口清隆監督による短編自主映画作品『女兵器701(じょへいき・セブン・オー・ワン)』(2017年)のBlu-rayソフト化を記念し、東京・LOFT9 SHIBUYAにて12日、トークイベント「『女兵器701』発売記念観覧式」が開催された。

  • 左から、百川晴香、田口清隆監督、和泉美沙希、青柳尊哉

『女兵器701』とは、2017年3月4日に北海道夕張市で開催された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」にて上映が行なわれた28人の映像作家による怪獣お笑いオムニバス映画『大怪獣チャランポラン祭り 鉄ドン』の1本として製作された短編作品である。

  • 『女兵器701』Blu-rayジャケット

  • 『女兵器701』パンフレット表紙

物語は、平和な街を破壊する大怪獣「鉄ドン」を殲滅するべく、陸上自衛隊の巨大秘密女兵器「701」が出動するところから始まる。その名のとおり、巨大な女子の姿をした人型決戦兵器・701の体内には、女性自衛官・佐藤小百合(サユリ)が搭乗していた。果敢に戦う701であったが、さすがに鉄ドンは強い。鉄ドンの猛攻によって701は不覚にも傍らにあったある建物に激突し、部屋の一室を露出させてしまう。だが、その部屋の中にいた男女は、サユリのよく見知った人物たちなのであった――。

オムニバス映画『鉄ドン』では規定時間の3分半で上映された『女兵器701』だが、田口監督はこれと同時に5分のディレクターズカット版も製作していた。今回のBlu-rayには、『鉄ドン』版に加えて、このディレクターズカット完全版も収録されているほか、25分間にもおよぶ撮影メイキング「Making of 女兵器701」、そして田口監督と出演者の青柳尊哉とのロング対談「Taguchi×Aoyagi Vol.1」(57分)、以前の『鉄ドン』のために田口監督が作った2本の短編『ZONE-絶対区域-』『DELTA』という、豪華な映像特典が入っている。

司会を務めるのは、『ウルトラゾーン』『ウルトラマンX』『ウルトラマンオーブ』など、田口監督作品のメイキング映像を多く担当し、自らも映像作品を製作する島崎淳(本作では監督補として田口監督をサポート)。島崎は本作でも特典映像のほとんどを手がけ、情報量満載の濃密すぎるパンフレットの編集・執筆もこなしている。このパンフレットの作成期間は非常にタイトであったらしく、田口監督によれば島崎は「マジで命を削って」パンフレットを作ったと相棒の労をねぎらった。

壇上にはまず、701とサユリの二役を熱演した和泉美沙希と、浮気男・秀夫役の青柳尊哉が現れた。青柳は『ウルトラマンオーブ』のジャグラス ジャグラーを演じた際に田口監督と出会ったことがきっかけで意気投合し、今回の出演に至ったという。ヒロインの和泉は、今回の作品に少々セクシーな要素があると事前に言われたところ、「ぜんぜん大丈夫です!」と即答し、田口監督が安心して起用を決めたという逸話を披露。その心意気を受けた田口監督がどのような演出を施したのか、それはぜひ映像をご覧になってお確かめになってほしいところ。

青柳と田口はBlu-rayの特典映像のため開店前のバーを貸し切り、酒を飲みながらなんと3時間も語り明かしたのだが、『701』自体の話題は早々と終了し、その後はどんどんフリートークになっていったという。3時間の素材を島崎が57分に編集した特典映像は、イキのあった2人のトークがテンポよく進むとても面白い対談になっているそうなので、こちらもぜひBlu-rayにてチェックをしてもらいたいものだ。

今回のイベントの目玉であるBlu-rayのパッケージを手にする出演者。このBlu-rayも商品が完成したのがイベントの前日夜で、田口監督と島崎がこのパッケージを手に取ったのはこの場が初めてだったそうだ。

『女兵器701』がBlu-rayになったことを改めて実感し、パッケージをしみじみと眺める田口監督と和泉。青柳は「Blu-rayにはビニールがついているから、みんなでこれから"開封式"をやろうよ!」と提案し、サイン会用にBlu-rayを購入していた観客たちと一緒にビニール封を破る際にどういうかけ声で破ろうか、という話になっていった。

そんな中、サユリの友人・由佳を演じた百川晴香が遅れてかけつけた。『ウルトラマンX』のルイルイこと高田ルイ役で明るさを振りまいた百川は、アイドルグループ「全力少女R」のリーダーを務めている。この日も全力少女Rのステージが八丈島(の納涼花火大会)で行われており、それが終わってすぐに渋谷まで急行したのであった。

協議の結果、みんなで「田口清隆~!」というかけ声と共に、ビニールを開封する段取りになり、全員立ち上がって「たぐち~」「きよたか~ッ!」を合図に開封式が行われ、照れまくる田口監督をよそに会場全体の一体感が高まった。

続いて、田口監督と出演者たちが生コメンタリーを入れつつ、客席からは発声OKという「応援上映」のスタイルで『女兵器701』完全版(5分)が上映された。5分という短編作品ながら、起承転結のしっかりあるストーリー、巨大怪獣「鉄ドン」の凶暴ぶり、そしてサユリの操縦する701の魅力的なデザインと果敢なるアクション、さらにはホテル「ユナイト」の中で(裸で)狼狽する秀夫と由佳の緊張感に満ちたリアクション……と、濃密な情報が詰まった本作だけに、コミカルシーンでは笑いが起こり、鉄ドンと701との決戦シーンでは、某巨大ヒーローが怪獣に立ち向かうときのように客席から「がんばれー!!」という純粋な声援が飛んでくるなど、思わず胸が熱くなる良質の応援上映が繰り広げられた。青柳のおすすめシーンは、冒頭で701が鉄ドンに向かっていくところ、手前のビルを女子っぽく内股で脚を跳ね上げながら飛び越える短いショットだという。「俺はあの、ビルを飛び越える一歩めがすごく好きなの。あの一歩がヤベエ!(笑)」と、和泉の演技に心ときめかせていたことを強くアピールした。

「5分の作品のパンフレットが36ページ!」と田口監督が絶賛するパンフレットは、もはや立派な特撮ムックと呼べるほどのビジュアルと情報の量が"ハンパない"一冊となった。製作期間がとてつもなくタイトで、完成したのはBlu-rayと同じく、このイベントが行われるギリギリ前であったそうだ。毎晩、深夜に島崎から田口監督に原稿依頼の電話がかかり、田口監督自身もプロダクション・ノート(製作過程)やシナリオ、画コンテの解説を急ピッチながら濃厚に執筆している。

巻末には、『ウルトラマンサーガ』の監督を務め、『大怪獣チャランポラン祭り 鉄ドン』の総合演出を手がけた岡秀樹監督による寄稿文「怪獣使いの少年-田口清隆(キミ)が目指す遠い星-」が収められており、田口監督ファン、ならびにウルトラマンシリーズのファンを感涙させること間違いない。

田口監督によるパンフレットのオススメポイントは、メイキングページで「怪獣鉄ドンのスーツから体を出す俳優」の写真であるという。田口監督は少年時代、ゴジラ俳優として知られる薩摩剣八郎がゴジラスーツの中から上半身を見せる『平成ゴジラVSシリーズ』の「メイキング」特集に強い感銘を受け、いつかは自分も怪獣映画を作りたいと夢を抱いたという。パンフレットの特撮メイキング記事には、そういった田口監督の映画作りの原点、怪獣と特撮映画に対する深い愛情が注ぎ込まれている。

『女兵器701』のメイキング部分で驚かされるのは、秀夫と由佳が宿泊していた「ラブホテルの一室」が、実際のホテルでロケを行ったのでなく、1/6のミニチュアで室内を作り、そこに青柳と百川の芝居を合成で入れ込んでいるという撮影テクニックである。田口監督によれば「実際のラブホテルを使うと引き(ロング)の画が撮りにくいし、別にセットを組むのも大変。だったら大きめのミニチュアを作って撮ったほうが早いし、効果的だ」と、このシーンの撮影に至った経緯を明かした。青柳は「映像を観ると、俺たちが普通にホテルにいると思うでしょ? でも本当は2人でブルーバックの前で芝居をしていたわけですからね。ここが"特撮"の面白いところ。ミニチュア特撮がこういうところで使われるとは」と、田口監督の映像感覚を称えていた。

ステージ上には、撮影で使われたラブホテル「HOTEL UNITE」の外観として使われた1/25のミニチュアセットが置かれ、自由に写真撮影ができるスポットとなった。中に置かれている人形は、1/6サイズのミニチュア製作時に見え方の参考として用意された市販の1/6ドール。

青柳と百川の縮小パネルと共に置かれているのは、撮影で使用された1/6ラブホテル室内の小物一式。ベッドやソファーはもちろん、フロントへの直通電話やワイングラス、ゴミ箱などが精密に造形され、画面にリアリティを与えている。

本イベントのオリジナルメニューは、カシスソーダ「701」、カルアミルク「秀夫の浮気」、ファジーネーブル「由佳の気持ち」といったドリンク、スライスサラミ「鉄ドンスライス」、チェーシュー丼「テツ丼」といったフード、バニラアイスにストロベリーソースのかかった「サユリの吐血」というスイーツが提供された。イベント開始早々に売り切れてしまったものの、1つだけ作ることができた「テツ丼」を前にした田口監督と青柳は、交互に「食レポ」風の試食を行い「総じて美味い! テツ丼美味かった」と満足したようすを見せた。

イベント後半では、701のコスチュームを身に着けた和泉がさっそうと登場。元気いっぱいにポーズを取り、観客の記念撮影に応じていた。

イベント後半では、田口監督が12歳のときに友人と一緒に作った怪獣映画の連作が一挙に上映された。田口少年はこの作品中で撮影と演出全般を手がけるとともに「怪獣フトンギラス(布団を被った胴体に、段ボール製の顔がついている)」のスーツアクターも兼任。人間たちと対峙する巨大怪獣を同時に捉えながら、カメラが人間側から怪獣のほうへ移っていくというリアリティのある"怪獣映画的"アングルを、この時点ですでに自分のものにしているのが驚きである。さらには、フトンギラスと戦う巨大ヒーローまでもが登場。さきほどの「応援上映」のノリが残っている観客からは思わず「がんばれー!」という声援が飛び出した。田口監督はイベント終了直後、このことについて「中学時代の自分が、みんなから全力で応援されている気持ちになり、感激した」としみじみ語っていた。

終盤間近には、本イベントで初めて明かされる田口監督の"自主"映像作品『空想科学連続ドラマシリーズ UNFIX』の予告映像が上映された。「田口清隆×青柳尊哉 新企画始動」と銘打たれたこの作品は、単発ではなく「連続」ドラマとして「YOUTUBE」での配信をメインに展開していくという。映像では、地球外生命体を殲滅するべく陸上自衛隊の中で組織された「特殊外来生物作戦隊=特外隊」の戦いを描くというアウトラインが語られるものの、その全容はいまだ明らかにされておらず、今後の展開が大いに期待される。

予告編映像で青柳とタッグを組んでいる若手隊員役で、『ウルトラマンオーブ』でSSPメンバー・松戸シンを演じたねりお弘晃が出演。脇でイベントのようすを観ていたねりおがステージに呼ばれ、ファンに向かってあいさつを行うひと幕もあった。

『女兵器701』のBlu-rayとパンフレットは、現在のところ通販サイトなどでの販売は行っておらず、これから催される各種イベントの物販として販売される予定。Blu-rayの価格は3000円(税込)。パンフレットは2000円(税込)となる。今後の情報は、Twitterの『女兵器701』公式アカウント@FEMALEWEAPON701をぜひチェックしていただきたい。