賃貸住宅での一人暮らしを検討しだすと、家賃以外にもいろいろな費用が掛かることに気が付きます。そのひとつが、「共益費」。共益費って本当に必要なの?何に使われているの?という疑問に関して、不動産・住生活ライターの高田七穂先生に聞きました。

共益費とは何か

家賃以外に毎月、必要な共益費。いったい何に使われているの?

通常、共用廊下の電気代や水道代、設備のメンテナンス費用、清掃代など、住んでいる人の生活を維持したり快適にしたりするために使われています。共益費には、管理費という呼び方もありますが、この2つは違うのでしょうか。

実は、用語としての違いはあるものの、賃貸住宅では、管理費と共益費は明確に区別されていません。(社)日本住宅建設産業協会(現・一社 全国住宅産業協会)が賃貸住宅にかかわる2つの団体に、共益費について尋ねた調査があります(「賃貸住宅における『共益費』のあり方に関する研究 報告書」平成19年)。

そのなかで、「共用部分維持管理費用対価」の呼び方について尋ねたものでは、全国的に「共益費」が83%と最も多くなっています。「管理費」は22%です。東北や関東では「管理費」が高く、それぞれ24%、35%なっています。反面、信越、東海、北陸、中国、沖縄では「管理費」という呼び方はゼロでした。

さらに、「共益費」とは何かを尋ねたところ、「共用部分の維持管理対価」という回答が77%で最も多いものの、続いて「家賃の一部」という回答も32%にのぼりました(複数回答、)。また、共益費の算出基準について尋ねたところ、最も多いのは「近隣の相場を考慮して」40%、「物件規模(階数)に応じて固定している」39%、「かかる実費を予測し、シミュレーションして算出」33%の順になっています。

実際、管理費がない賃貸マンションやアパートもあります。この場合、「管理費がゼロ」なのではなく、家賃に含まれていると思っておいたほうがよいでしょう。大家さん(あるいは管理を受けている管理会社)が、共用部の電気代などのかかった金額を各業者に払っていますが、借り主にはその明細は公開されていないということです。

では、なぜ共益費を設定するのでしょうか。場合によっては、見せ方の問題もあるようです。たとえば、「家賃8万円」よりも「家賃7万7000円+共益費3000円」と表示されているほうが、「安い」という印象をもつのではないでしょうか。ですから、借りる側としては、家賃だけにとらわれず、共益費を含んだ毎月の合計金額を意識しましょう。インターネットで検索するなら、かならず共益費を含んだ金額で探します。一方で、「家賃と共益費の合計額が8万円」であれば、「共益費ゼロで家賃8万円」よりも、トクなこともあります。礼金や敷金、仲介手数料は家賃にのみにかかるからです。初期費用が少なくて済むのです。

ところで、先ほどの調査でも表れたように共益費は、近隣相場や実費の予測を基準としていることがあります。ですから、金額の目安はあります。それは、だいたい家賃の5%から10%程度。ただし、エレベーターがあるなどでは、もう少し高くなる可能性があります。

それでも、もし共益費が周辺と比べてかなり高額な設定であれば、借りる側も「高いレベルの管理」を期待してしまいそうです。その場合、「こちらは共益費が他と比べて高い印象がありますが、何か特別な管理があるのでしょうか」などと尋ねてみましょう。この質問をするためにも、周辺の共益費を事前に調べておきましょう。

また、自分でも現地に行った際に、管理の状態を確認しましょう。敷地内の樹木がキレイに剪定されているか、清掃が行き届いているかなど、メンテナンスの良さを感じられるかをチェックしたいもの。掲示板も見て、乱雑に貼られていないか、エレベーターなど設備メンテナンスのお知らせはあるか、などもみてみましょう。さらに、周辺環境を確認するためにも、夜にもう一度、行ってみるのがおすすめです。その際、切れた電球がないか、などに気を配りましょう。

なお、住んでから「電球が切れているのに長い間、取り換えられない」などと管理に対して気づくことがあったら、管理会社や大家さんに早めに連絡するようにしましょう。その際、あまりにも管理の不手際が続くようであれば、更新時に共益費について交渉してみてはいかがでしょうか。

高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『絶対にだまされない マンションの買い方』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中