御茶ノ水は江戸時代から続く大学街、神保町は昭和レトロな古書店街。さらにお隣はサブカルの聖地・秋葉原。ここは、とりどりな文化の香り漂う街である。その中心にあるのが、明治大学だ。一風変わった環境のためか、大学とその周辺は他にはない魅力がたっぷり。そんな、時代や文化の枠を超えた街歩きを紹介しよう。

  • 明治時代から続く明大へ!

    明治時代から続く明大へ!

大学と老舗の街を行く!

古くは武家屋敷もあったという明治大学周辺(東京都千代田区)は、今や車の往来がとどまることのない大都市と化している。しかし、そんな喧騒の中にあっても、不思議と"和み"もあるように思える。それは、明治大学や日本大学、数々の医大などが集う大学街であるためかもしれないし、長い年月、街を守ってきた老舗やレトロ建築が数多くあるためかもしれない。日本の穏やかさを随所に感じられるような街なのだ。

御茶ノ水と神保町は、それぞれ路線は違うが1kmも離れていない。その間に明治大学があるのだが、それを含めて巡り歩いても足がくたびれる距離ではない。ただしこのあたりは坂が多いため、散策には歩きやすい靴がお勧めだ。

  • 筋トレのような急階段の「男坂」。このほか女坂もある。ちなみに女坂も急階段で、特に女性に優しくはない

    筋トレのような急階段の「男坂」。このほか女坂もある。ちなみに女坂も急階段で、特に女性に優しくはない

いろんな意味で「さすが明大だ」!!

明治大学は、明治14(1881)年に明治法律学校として開校した由緒ある大学だ。しかし、その歴史もさることながら、明大の魅力は自由で独特な発想ではないだろうか。目の付け所が、ほかの大学と違っている。

その意味で特に注目したいのが、「明治大学博物館」と「米澤嘉博記念図書館」。どちらも一般の入場は無料(一部有料)となっている。

明治大学博物館に常設展示されているのは、「商品」「刑事」「考古」の3部門。なかでも「刑事」は、江戸時代の取り調べや刑罰に使われた器具が展示されている。かつて海外で使用されていたギロチンや拷問器具のレプリカなどもあり、とんでもない迫力だ。映画でしか見たことのないような恐ろしげな装置が実寸大で目の前にあると、たとえレプリカであっても背筋が寒くなること請け合いである。

  • 明大には、残念ながら開校当初の建築は残されていない。博物館も、「アカデミーコモン」というガラス張りの近代的なビルの中に入っている

    明大には、残念ながら開校当初の建築は残されていない。博物館も、「アカデミーコモン」というガラス張りの近代的なビルの中に入っている。アカデミーコモン内には、博物館のほか、作詞家・小説家などで知られる阿久悠の記念館もある

また、米沢嘉博記念図書館は、明大付属のまんが・サブカルチャー専門の図書館である。書庫にあるものも含めると約8万冊のコレクションが保存されている。1階展示室は無料、コレクションの閲覧ができる2階は有料(1日会員300円)となる。

1階展示室では、過去に企画展として「チェコ・コミックの100年展」なども行っていた。2月9日~5月20日には、100人の漫画家による震災支援企画「おきあがりこぼしプロジェクト」を開催する。漫画を読むことに限らず、幅広い展示やイベントを楽しめるようだ。

  • 「なぜ大学がまんがとサブカルを!?」と思うところだが、明大としては相当に力を入れているように見受けられる

    「なぜ大学がまんがとサブカルを!?」と思うところだが、明大としては相当に力を入れているように見受けられる。さらに大きな「明治大学東京国際マンガミュージアム」の建築も予定しているとのこと

  • まんがファンでなくても楽しめそうな企画も!

    まんがファンでなくても楽しめそうな企画も!

この他、明大のカフェや食堂も注目スポットだ。博物館のあるアカデミーコモン1階にはスタイリッシュな「カフェ パンセ」がある。リバティタワー17階「スカイラウンジ暁」、23階「サロン燦」では、展望や夜景を楽しみながらの食事もできるという。ただし、いずれも日曜日・祝日は定休日となっているため注意しよう。

明大周辺の散策&プチグルメ

明大周辺には、文豪にまつわるスポットや、明治~大正時代の建築が点在している。これも、その昔から文化的な色が濃い街だったゆえんだろう。

  • 与謝野鉄幹、与謝野晶子などが大正10(1921)年に設立した「文化学院」。アーチが美しい

    与謝野鉄幹、与謝野晶子などが大正10(1921)年に設立した「文化学院」。アーチが美しい

  • 当時、山田耕筰や高浜虚子などの著名人が講師をしていた

    当時、山田耕筰や高浜虚子などの著名人が講師をしていた

  • 大正5(1916)年築の駐在所。現在は町会詰所となっている。この付近は、古い建築が不意に現れるところが面白い

    大正5(1916)年築の駐在所。現在は町会詰所となっている。この付近は、古い建築が不意に現れるところが面白い

文豪気分でロールケーキを

明治大学に隣接した「山の上ホテル」は、川端康成などの多くの文豪が滞在したり、カンヅメになって執筆したりしたことで知られている。アール・デコ調の建築で、現在もレトロな客室に滞在できる。レストランやバーも豊富だ。

  • 地下1階「コーヒーパーラーヒルトップ」のケーキはテイクアウトもOK。写真は、昔から定番として人気が高いという「ロールケーキ」(486円)。ホテルにしてはお手頃価格

    地下1階「コーヒーパーラーヒルトップ」のケーキはテイクアウトもOK。写真は、昔から定番として人気が高いという「ロールケーキ」(486円)。ホテルにしてはお手頃価格

●information
山の上ホテル
東京都千代田区神田駿河台1-1

やってみたい! 昔懐かしい遊びの店

「老舗のゲーム屋」と言うといかにも想像し難いが、かるた、組み木、将棋、チェスなどを専門に扱う店が「奥野かるた店」である。店構えは新しいが、創業は大正10(1921)年。昔ながらの遊びグッズを販売している他、古いかるたや芸術品に近いチェスの展示も行っている。店内を眺めていると、「たまにはみんなで紙や木のゲームで遊んでみようか」という気持ちになってくる。

  • 筆者は思わず「福笑い」(540円)を購入。おかめだけでなく、ヒョットコの福笑いも入っている

    筆者は思わず「福笑い」(540円)を購入。おかめだけでなく、ヒョットコの福笑いも入っている

●information
奥野かるた店
東京都千代田区神田神保町2-26

明治時代の西洋建築が豪華すぎ!

明大アカデミーコモンから東へ向かうと、日本らしからぬ巨大な西洋建築が見えてくる。これは正教会の「東京復活大聖堂(ニコライ堂)」で、明治時代にロシアからやってきた聖ニコライによって建てられた。都心にこれだけのものが残されているのは驚きだ。

  • ニコライ堂は国の重要文化財に指定されている。聖堂内の見学には献金(300円)が必要だ

    ニコライ堂は国の重要文化財に指定されている。聖堂内の見学には献金(300円)が必要だ

●information
東京復活大聖堂(ニコライ堂)
東京都千代田区神田駿河台4-1-3

さらに明治時代のお菓子で締めくくる

明治時代のお菓子と言っても、何のことはない「たい焼き」である。しかし、「たい焼き神田達磨」のたい焼きは、大きく羽根のついたその形といい、上品な甘さのあんこといい、逸品と言えるだろう。

  • 珍しい「揚げたい焼き(粒あん)」(190円)。焼いてから揚げている。このほかカスタードクリーム(210円)も

    珍しい「揚げたい焼き(粒あん)」(190円)。焼いてから揚げている。このほかカスタードクリーム(210円)も

  • ほんのりとした甘みのあんこで何匹でも食べられそう!

    ほんのりとした甘みのあんこで何匹でも食べられそう!

  • 定番の「羽根つきたい焼き(カスタードクリーム)」(200円)。羽根のサクサク感が楽しい。粒あんは180円

    定番の「羽根つきたい焼き(カスタードクリーム)」(200円)。羽根のサクサク感が楽しい。粒あんは180円

  • 卵の風味がしっかりとしたカスタードクリーム

    卵の風味がしっかりとしたカスタードクリーム

  • 「苺大福(白あん)」(240円)。 粒あん(240円)は大福がピンク色。農家から直送した新鮮ないちごを使っている

    「苺大福(白あん)」(240円)。 粒あん(240円)は大福がピンク色。農家から直送した新鮮ないちごを使っている

●information
たい焼き神田達磨 神保町店
東京都千代田区神田神保町1-12

明治大学とその周辺は、小さな範囲に面白みがギュッと凝縮された、散策に最適なエリアと言える。時間があれば、世界最大級の書店街である神保町を巡り歩いてみてもいいだろう。この辺りはレトロな喫茶店やブックカフェも多い。まるでかつての文人のように休日を過ごしてみるのも面白い。ただし、この一帯は日曜日定休の店も多いのでご注意を!

※価格は全て税込

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。