ポーランド・クラクフで開催されている世界遺産委員会にて7月9日、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)が世界遺産に登録された。5月5日には、世界遺産への登録可否を調査する国際的な諮問機関「イコモス(国際記念物遺跡会議)」より、8つの構成資産の内の4つを除外するよう、日本政府に対して登録勧告がなされたが、今回、8つの構成資産で登録となった。

沖ノ島は周囲約4km。九州本土から約60km離れた玄界灘の海上にぽつんと浮かぶ

『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群とは

沖ノ島自体、ごく限られた人しか立ち入れないという、謎に包まれた聖地。さらに、一木一草一石たりとも持ち帰ってはならない、島でのできごとは口外してはならないというように、いくつかの禁忌もある。そのような理由から、その存在自体が、長きに渡って広く知られることはなかった。

沖ノ島は福岡県宗像市に属する。島は宗像大社の私有地で、公共の交通手段はない

歴史の中で、その存在が厳かに守られ続けてきた沖ノ島では、これまで出土品がおよそ8万点見つかり、その全てが国宝に指定されている。それが、「海の正倉院」と呼ばれる所以だ。

今回の世界遺産登録においてイコモスが注目したのが、この沖ノ島を含む4つの構成遺産からなる「宗像大社沖津宮」で、沖ノ島とそのおよそ1km手前にある「小屋島」「御門柱」「天狗岩」という3つの岩礁だ。一方で、イコモスが除外を勧告したのが、大島の「宗像大社中津宮」(以下、中津宮)と「宗像大社沖津宮遥拝所」(以下、遥拝所)、「宗像大社辺津宮」(以下、辺津宮)、「新原・奴山古墳群」という4つの構成資産である。

「中津宮」「辺津宮」は「沖ノ島(沖津宮)」とともに、交通安全にご利益があるとして全国に知られる「宗像大社」を構成する三宮だ。ここで大きく関係するのが、天照大神から生まれたとされる宗像三女神の存在。その長女は沖津宮、次女が中津宮、三女が辺津宮に祀られていて、三女神が鎮座する場として、これら三宮が発展し、総称として「宗像大社」と呼ばれるようになったという背景がある。

「中津宮」の境内には天の川が流れ、その川をはさんで牽牛神社と織女神社が鎮座

大島の「中津宮」は三女神の次女・湍津姫神を祀る。湍津姫神が出雲大社の大国主神と結婚しため、大島は七夕伝説発祥の地とされ、この「中津宮」は特に縁結びのご利益があると評判だ。また、島内の「遥拝所」は、禁忌ゆえに立ち入れない沖ノ島を拝むための場所。大島へは神湊港渡船ターミナルからフェリーに乗って約25分。島の北側には風車展望所もあり、のどかなロケーションの中、ゆるやかな時間が過ごせる。

雄大な眺望を誇る「遥拝所」。島内には九州で唯一、船で渡るオルレコースも作られている

「新原・奴山(しんばる・ぬやま)古墳群」は、かつてこの地を支配していた宗像氏の墳墓群だ。福津市北部の新原及び奴山に所在する古墳群の総称で、現在は見学のための展望所が設けられている。

前方後円墳5基、円墳35基、方墳1基の合計41基から成る「新原・奴山古墳群」

「中津宮」や「遥拝所」、そして「新原・奴山古墳群」のように、いつでも足を運べるのが「辺津宮」だ。続いては、「辺津宮」の中でもここだけは見ておきたいスポットと、関連遺産群とともに味わいたいご当地スポットを紹介しよう。