全19作のひと言コメントと採点(3点満点)

『貴族探偵』 月曜21時~ フジテレビ系

武井咲

出演者:相葉雅紀、武井咲、松重豊ほか
寸評:「推理をしない」ことは分かっていたが、ここまで主人公が画面に映らないのは稀であり、相当思い切ったチャレンジ。その分、使用人たちを活躍させることで異色のムードを作っていた。毎回、貴族探偵と女探偵の推理を2パターン用意し、誰もが納得のフィナーレを手がけた脚本は巧み。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』 火曜21時~ フジテレビ系

小栗旬

出演者:小栗旬、西島秀俊、田中哲司ほか
寸評:最初から最後まで、ハードなアクションと後味の悪さを詰め込んだ世界観はエポックメイキング。特にクレジットのない敵役のアクション俳優たちが作品のクオリティを上げていた。ただ、金城一紀ならもう一歩踏み込んで事件背景や犯人心理が描けるはず。意味深なラストシーンに続編の予感。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『あなたのことはそれほど』 火曜22時~ TBS系

波瑠

出演者:波瑠、東出昌大、仲里依紗ほか
寸評:ちゅうちょなく不倫に走るヒロインは最後まで美化されず。「ヒールを貫く」という采配で話題性をキープした。不倫する側と暴く側、双方の気持ちとテクニックをふんだんに織り込んだ脚本は、ネットとの相性抜群。バッシングに負けず、女優としての矜持を見せた波瑠はもっと評価されていい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『母になる』 水22時~ 日本テレビ系

沢尻エリカ

出演者:沢尻エリカ、藤木直人、小池栄子ほか
寸評:「誘拐された子が大きくなって戻ってくる」という荒唐無稽な設定だった反面、各シーンは時間をかけて丁寧に描かれていた。残念だったのは、母子の関係よりも、母同士のバトルを優先させたこと。子どもの心境がほとんど描かれず、距離感の変化も分かりにくかった。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『3人のパパ』 水曜11時56分~ TBS系

山田裕貴

出演者:堀井新太、山田裕貴、三津谷亮ほか
寸評:若手俳優3人を抜てきした分、フレッシュさこそあるものの、視聴者になかなかキャラクターが浸透せず。もともと深夜ドラマとしては難しいテーマであり、最後まで狙いが見えなかった。赤ちゃんのかわいらしさは鉄板だっただけに、ベテラン俳優でギャップを作ったほうがよかったかも。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

『警視庁・捜査一課長』 木曜20時~ テレビ朝日系

内藤剛志

出演者:内藤剛志、田中圭、斉藤由貴ほか
寸評:第2弾もオーソドックスな刑事ドラマに終始。事件と解決方法のご都合主義は否めないが、一課長と部下たちが一丸となって犯人を追う展開で同枠のファン層を楽しませた。個人的には連ドラより、不定期の2時間ドラマでしっかり作ってほしいところ。芸人やバラエティタレントの多用は疑問。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】

『緊急取調室』 木曜21時~ テレビ朝日系

天海祐希

出演者:天海祐希、田中哲司、小日向文世ほか
寸評:前シリーズより取り調べの攻防にフォーカスした分、緊張感が高まり、シリアスなムードで視聴者をグッと引き込んだ。キントリのメンバーも各話のゲストも熟練者ぞろいで、芝居は最後まで高値安定。ただ、事件の質や犯行動機などに意外性はなく、結果としてクオリティは初回が最高だった。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】

『人は見た目が100パーセント』 木曜22時~ フジテレビ系

桐谷美玲

出演者:桐谷美玲、水川あさみ、ブルゾンちえみほか
寸評:「ヒロインが美人すぎる」などのバッシングが多く結果は出なかったが、見ている人の熱は高かった。徐々に「リケジョたちを応援したい」と思わせたのは変幻自在の演出。美の学びと「あるある」をほどよく加えてハイブリッドな仕上がりに。見た目のビフォーアフターがもう少しほしかった。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『恋がヘタでも生きてます』 木曜23時59分~ 日本テレビ系

高梨臨

出演者:高梨臨、田中圭、土村芳ほか
寸評:序盤はヒロインより土村演じる"マグロ女"が物語をけん引。相手役の淵上泰史とともにさらなるブレイクを予感させた。中盤以降は高梨演じる"仕事女"にはかなさが宿り、黄金期の"月9"を思わせる恋模様を展開。ラストはこれ以上ない大団円で視聴者を納得させた。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『釣りバカ日誌 season2新米社員 浜崎伝助』 金曜20時~ テレビ東京系

濱田岳

出演者:濱田岳、広瀬アリス、西田敏行ほか
寸評:ハマちゃんとスーさんに加え、鈴木建設社員たちの安定感は抜群。キャラが濃いのに、実在するとしか思えない、絶妙なバランスのキャスティングだった。ドタバタコメディの中に泣かせるポイントを作るなど、映画版ファンへの配慮もチラリ。ハマちゃんの毒を強めにしているのは現代性か。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~』 金曜22時~ NHK系

多部未華子

出演者:多部未華子、高橋克典、倍賞美津子ほか
寸評:手紙というフィルターを通して、ひも解かれる人々の思いが、静かに胸を打つ秀作。そのストーリーは、1990年代のジブリ映画を思わせる素朴さであふれていた。人物、風景、小道具、光などの繊細な映像美は職人の技。現代のテレビ視聴者には伝わりにくい内容だが、挑戦した価値はあった。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】

『リバース』 金曜22時~ TBS系

藤原竜也

出演者:藤原竜也、戸田恵梨香、市原隼人ほか
寸評:事件の真相を追うミステリーに、主人公が追い詰められるサスペンスをほどよくブレンド。加えて、主人公たちの"今"を切り取る成長譚になっていた。最終回も単なる悲劇や美談で終わらせず、ほろ苦さと希望が交錯した余韻あるものに。そもそも本格ミステリーに挑むだけで希少価値は高い。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】

『女囚セブン』 金曜23時15分~ テレビ朝日系

剛力彩芽

出演者:剛力彩芽、山口紗弥加、安達祐実ほか
寸評:近年、深夜ドラマで技量を磨いた剛力が真価を発揮。ぶっ飛んだキャラを難なくこなし、女囚たちがコメディを繰り広げる中、別次元の存在感を放っていた。最終回の脱走劇や刑務所に戻るラストなど、脚本の強引さは否めないが、これは「そのあたりをツッコミながら見て」という確信犯か。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『4号警備』 土曜20時15分~ NHK

窪田正孝

出演者:窪田正孝、北村一輝、阿部純子ほか
寸評:銃と手錠を持てないボディーガードならではのアクションは説得力十分。窪田のカッコよさを追求する演出で熱狂的なファンを作った。ただ、1話30分間の枠では事件の背景を描き切れず、爽快感や感動の面では物足りない。全体的に詰め込み過ぎであり、続編を作るなら引き算が必要だろう。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『ボク、運命の人です。』 土曜22時~ 日本テレビ系

木村文乃

出演者:亀梨和也、木村文乃、山下智久ほか
寸評:放送前はどこかで見た設定とキャストに不安がよぎったが、そこはラブコメの名手・金子茂樹。"運命"という脚本家にとって都合のいい設定をフル活用して、主人公の恋を盛り上げた。しかし、告白の成功がクライマックスとなり、以降をソフトランディングで終えたのはもったいないところ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『犯罪症候群』 土曜23時40分~ フジテレビ系

玉山鉄二

出演者:玉山鉄二、谷原章介、渡部篤郎ほか
寸評:WOWOWとの共同制作らしく、「笑いは一切なし」のハードボイルドな世界観を貫徹。玉山、谷原、渡部の3人が真っ向から渡り合うことで、スケールの大きさを感じさせた。事件と解決への道筋に新しさはなく、「season2の急展開に乞うご期待」の流れは視聴者にとってマイナス。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『小さな巨人』 日曜21時~ TBS系

長谷川博己

出演者:長谷川博己、岡田将生、香川照之ほか
寸評:『半沢直樹』の系譜を継ぐ"熱い男"シリーズの最新版。今作は刑事モノながら勧善懲悪ではなく、最後も警察の闇が解消されず主人公がヒールに変わるような結末だった。早口のセリフや顔のアップなどの濃厚演出には賛否があり、事件の証拠やそれを得るための展開に違和感が残る。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】

『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』 日曜21時~ フジテレビ系

観月ありさ

出演者:観月ありさ、藤ヶ谷太輔、上川隆也ほか
寸評:観月の変人ヒロインは見慣れているが、白骨死体ばかりの映像は斬新。他の事件解決モノとは明確な差別化ができていた。惜しむらくは、原作やアニメからの改編が裏目に出て、ファンを引きつけられなかったこと。いまだ残る「キャスティングありき」の制作過程によるものだろう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

『フランケンシュタインの恋』 日曜22時30分~ 日本テレビ系

綾野剛

出演者:綾野剛、二階堂ふみ、柳楽優弥ほか
寸評:「怪物の目を通して人間の素晴らしさと愚かさを描く
物語に破たんはなし。ただ、怪物をピュアで万能なキャラにしすぎたことで、等身大で生きる人間のほうが魅力的に映った。「怪物は恋をしても、それが成就しても、また孤独に戻ってしまう」という残酷なラストシーンには共感。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

■著者プロフィール
木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月間20本超のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人を超えるタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。