「妊娠したかも! 」と思った時、訪れる場所として想像できるのは「産婦人科」か「助産院」だろう。しかし、その違いは何なのだろうか。妊娠した時点、そして出産する場所としてどちらを選ぶかを考える上でのそれぞれの特徴を、順天堂大学医学部附属練馬病院産婦人科長の荻島大貴先生にうかがった。

産婦人科と助産院とでは担うサポートが異なる

「妊娠したかも! 」と思ったらまず産婦人科へ

生理が遅れていると思った時、多くの人が最初に行うのは市販の妊娠検査薬での検査だろう。そこで"妊娠陽性"の反応が出た場合は、ほぼ間違いなく妊娠しているとのこと。「その場合には、まず産婦人科を受診してください」と荻島先生は言う。その理由のひとつは、「産婦人科でしかできないことがあるから」なのだそう。

産婦人科では、お腹の上からの超音波検査ではなく、より正確に子宮の中を見ることのできる「経腟超音波」を使用し、正常な妊娠かどうかを確認する。子宮外妊娠など、異常な妊娠を確認した場合は緊急手術の対象になることもあるため、母体の命を守る上でも大切な検査となる。

また、赤ちゃんが生まれる日である「分娩予定日」の算出も産婦人科医が行う。予定日は、"頭殿長(胎児の頭から殿部までの長さ)から算出したもの"と"最終月経日から算出したもの"とに誤差がないかを確認して決定する。「分娩予定日を算出することは非常に大事。正しく算出することで、出産までの間、赤ちゃんが正常に発達しているかどうかの確認ができ、過剰な医療提供の防止にもなります」とのこと。

助産院のメリット「メンタル面での手厚いサポート」

初めての出産は、何もかもが分からずに不安なもの。そんな時に心強い存在は助産師だろう。病院か助産院かに関わらず、メンタル的なサポートをしてくれる助産師だが、特に助産院では、手厚いサポートをしてくれることが多いのだそう。

助産院の場合、ずっと同じ助産師に診てもらえたり、子育てなども含めたトータル的なメンタルサポートをしてくれたりすることもある。そのほか、家族に囲まれての出産ができるため、子供の誕生をみんなで一緒に体験できるなどのメリットもある。

助産院では、同じ助産師に産後も相談できるメリットがある

助産院で確認しておきたい重要ポイント

助産院での出産を選ぶ際は、病院との違いもしっかり確認しておきたいところ。その一番大きなものは、助産院では医療行為ができないという点だ。

荻島先生は、「助産院は、異常が起こるリスクが高くないと予測される妊婦さんの選択肢のひとつ」と言う。もとより、妊娠・出産は妊婦のハイリスク・ローリスクの線引きができないものなのだそう。通常、助産院は緊急事態の対策として医療機関と提携しているため、具体的にどこの病院と提携しているのか、異常分娩時の対応はどのようにされているのかを確認しておくことが大切だ。

妊娠や出産は自然なものながら、人生のビッグイベントであり、不安も少なからずあるもの。産婦人科と助産院の違いを考慮しつつ、自分に合った出産方法を選んでみてはいかがだろうか。

※本文と写真は関係ありません

監修者プロフィール: 荻島大貴

1994年順天堂大学医学部卒業、2000年同大学大学院卒業。現職 順天堂大学医学部付属練馬病院 産科婦人科診療科長・先任准教授。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医・指導医・評議委員、日本がん治療認定機構がん治療認定医、日本周産期・新生児学会周産期専門医、母体保護法指定医。練馬区を中心として城西地区の婦人科がんの診療と周産期医療を行っている。

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。