ケールというアブラナ科の野菜がある。日本だと青汁などに使用されている野菜なのだが、人によって味わいが大きく異なるという。

"スーパーテイスター"と呼ばれる味覚が鋭い25%の人々にとってはやたらと苦く感じるこの野菜だが、33%の人々にとってはほとんど苦味がない。残りの人たちはその中間の味わいを感じるのだそうだ。こうした違いは、私たちの味の認識がDNAにプログラムされているため遺伝的要素が強いという。

米フロリダ大学のリンダ・バートシャック教授によれば、プロの料理人やソムリエはスーパーテイスターの割合が比較的高いという。また、男性よりは女性、コーカソイド(白人)よりもアジア人やアフリカ人に多いそうだ。

さてあなたはスーパーテイスターなのか? それを見極める方法があるという。

スーパーテイスターは味蕾を備える舌の茸状乳頭の密度が高い。専門家によれば、自分がスーパーテイスターであるか確認するには、食品着色料で舌に色をつけ、一定範囲内にある茸状乳頭の数を数えればいいそうだ。自分の味覚が鋭いのか、舌バカなのかを知りたければ以下のものを用意して試してみよう。

用意するもの
食用色素青色、綿棒、鏡、ピンセット、直径7㎜のパンチ穴を開けた紙

1.青い食用色素(液体)を綿棒にとり、舌を青く染める。

2.鏡にむかい、穴の開いた紙を舌の前方3分の1あたりにあてて、穴の範囲で青く染まらずに残っているピンク色の丸い小さな突起を数える。市販のパンチ穴の直径は6mm~8mmなので舌にあてながら数えると数えやすい。また、スマホなどで写真を撮って拡大しても数えやすい。

この丸い小さな突起は茸状乳頭と呼ばれるもので、味覚を感じる味蕾が付いている。突起の数が多いほど味覚が鋭く、少ないほど味覚に鈍感というわけだ。結果は以下の表の通り。

さてあなたはスーパーテイスターだっただろうか? 普通? それとも舌バカだっただろうか?

スーパーテイスターと晴れて認定された人は、確かに味覚は鋭いことが証明された。だが良いことばかりではないのだ。

スーパーテイスターであることの弊害

実はこうした超味覚が備わる人々は結腸がんにかかるリスクが高いという。これはおそらく彼らが野菜を避ける傾向にあることが関係しているようだ。スーパーテイスターは苦味を強く感じることから緑黄色野菜を嫌うことが多く、これが健康リスクにつながっている。

ポリープの数で計測した結腸がんのリスクは、苦味を感じる能力に直接的な比例関係にあったという。これは特にキャベツに含まれるプロピルチオウラシルの苦味について当てはまっていた。また、苦味を隠す塩味を好む傾向も明らかとなっている。

スーパーテイスターであることの利点

一方でいい面もある。スーパーテイスターはスリムな人が多いのだ。摂取カロリーが低く、脂っこい食べ物を嫌う傾向がその原因だろう。2011年の実験では、通常の味覚の持ち主は立食形式の食事で、スーパーテイスターより多くのカロリーを摂取していた。また、昨年実施された類似の実験では、75名のスリムな女性に1週間実験室での立食形式の食事を食べてもらっている。

その結果、一般的なテイスターあるいはノンテイスターに区分された女性は、スーパーテイスターと比較して、カロリー摂取が多く、かつたんぱく質摂取が少なめだった。また、脂質の摂取もやや多かった。

科学者は、味覚に関連するいくつかの遺伝子を特定している。例えば、24個ほどの遺伝子はさまざまな種類の苦味と関連していることがわかっている。一説によれば、苦味に対する感覚は、毒を有する植物を避けるために進化したという。

舌の上の味蕾には、口にした食材の味を伝える受容器が備わっている。最近の研究からは、この味受容器が腸、鼻、脳など、全身に存在することが判明した。それらが果たす役割は明らかではないが、舌の味蕾と同じく防御的機能があると推測される。

例えば、ペンシルバニア大学の研究では、鼻にある特定の苦味受容器のおかげで、スーパーテイスターは副鼻腔感染症に強いことが明らかとなっている。

「苦味化合物を感じる能力の有無は上気道疾患に関してかなり有用でした」と同実験に携わったノーム・コーエン准教授は話す。彼は最近は肺で発見された味受容器の役割を調査している。「細菌から身を守るために苦味受容器は発達したのでしょう。身体が細菌から身を守ろうとする場所ならどこにでもあるのかもしれません」と同准教授。

スーパーテイスターの能力が生かされる仕事

時にスーパーテイスターの能力が仕事に大いに生かされることがある。自身がスーパーテイスターであることを知らなかったある女性は、かつて食品メーカーのマーケティング部門に勤めていたことがある。ここで彼女は開発スタッフからしばしばテイスティングを頼まれていた。他の人間には分からない、香辛料や調味料の味の違いを区別することができたからだ。

この女性は甘い食べ物や苦い食べ物、また肉の脂身のゼリー状の食感が大嫌いだったという。そこでこれに対処するための方法を考案するようになった。例えば、芽キャベツに砂糖をまぶすといった具合だ。彼女は現在コンサルタントとして活躍している。

科学者は、味受容器とそれに関連する遺伝子を特定すれば、栄養士が人に合わせたアドバイスをできるようになると考えている。また、遺伝子から食べ物の好き嫌いを把握できるようになる日は近いようだ。栄養士は、「油を控えて、フルーツや野菜を多めに食べましょう」とアドバイスする代わりに、「ケールや芽キャベツはお嫌いでしょうから、サツマイモやカボチャを摂るといいでしょうね」と話すようになるのかもしれない。

カラパイア

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