
HINANO、IROHA、AN、MOMOKA、MANAMIからなる10代女子5人の表現者集団・CYREN(サイレン)。大阪のスクールで出会った5人は東京で共同生活を始めて1年余り——ジャパニーズ・ヒップホップの正統な系譜を継承する本物志向を掲げ、1st EP『ONE』をリリースした。収録曲のリリックの大半は、メンバー自身がパッションのまま書き連ねたリリックをプロデューサー陣とともに磨き上げたガールズグループの定石を覆そうとする本気が、5曲のEPに詰まっている。
プロデュースを手がけるのが、サウンドを担うDJ HAZIMEと、リリック監修とラップ指導を担うDABO(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)だ。HAZIMEは、NITRO MICROPHONE UNDERGROUND、SHAKKAZOMBIE、K DUB SHINE、安室奈美恵、PUSHIMら名立たるアーティストに楽曲を提供してきたトップDJの一人。DABOはNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMCとして頭角を現し、2001年にはDef Jam Japan第1号アーティストとしてメジャーデビュー、緻密かつ強靭なラップ・スキルで日本語ラップの基準値を引き上げてきたレジェンドの1人である。そんな盤石な布陣で歩み始めたCYRENの5人と、DJ HAZIME&DABOに話を聞いた。
ーメンバーの5人は、いつ頃からの付き合いなんですか?
HINANO:もともとアーティストを目指す子たちが集まる同じスクールに通っていたんです。AN、MANAMI、私の3人は最初から入っていて、オーディションでIROHA、MOMOKAが入ってきて、最終的にこの5人になりました。一番長い関係で7年くらいですね。スクール時代は、学校が終わったらすぐレッスンだったので、本当に家族より長く一緒にいて。上京してきてからは一緒に住んで全部共有してるので、家族と一緒くらいの仲です。
MOMOKA:初めは、私たち以外にも選抜された人たちが集まってグループになったんですけど、最終的に見ているところが同じ5人が残って活動することになったんです。
MANAMI:デビューまで行ったこの5人は、ヒップホップ、R&Bにやる気がある人たちなので、それが同じ目標になっています。
ーHAZIMEさんは、別のインタビューで「どこまで本気で一緒にやれるか」というお話をされていました。
HAZIME:自分たちでリリックを書いてもらうこともそうだし、全部こっちが用意して歌ってもらうのは、本当の意味で本気にならない部分もあると思うんです。「ラップってなんぞや?」みたいなことを僕が言うつもりはないですけど、やっぱり自分でリリックを書かないと本気にはならないと思っていて。
ーメンバーの皆さんそれぞれの音楽ルーツも聞かせてください。
MOMOKA
MOMOKA:日本語ラップはよく聴いていたんですけど、最近は洋楽も聴くようになって。ヒップホップってR&Bとも近いから、そういう音楽も聴くようになったし、自分が今後音楽活動する中で取り入れたい音楽性を聴いて学んでいる感じです。最近はSZAやFLOを聴いています。今のムードだったりがそれなだけで、ちょっと前はめっちゃ日本語ラップを聴いていたりとか。仙人掌さんとかを聴いたりしていました。

HINANO
HINANO:私は幼少期から歌って踊るスクール生やったんですけど、親が安室奈美恵さんとかが好きでずっと聴いていたり、ラップというより歌の方が好きでした。途中から J-RAPを聴くようになって、全般を聴くんですけど、BonberoさんとかWILYWNKAさんが好きでめっちゃ聴いています。

MANAMI
MANAMI:私は最終形がヒップホップなんですけど、そこに行くまでにジャンルがいろいろ変わってきていて。最初はポップスの明るい曲、勇気づける曲をよく聴いていたんですけど、今は個性的なラッパーの方を聴くようにしていて。「声で誰かわかる」っていうのを目指したくて3Li¥enさんを尊敬してよく聴いています。それと、幅広いジャンルを聴くためにR&Bも聴いていて、笠原瑠斗さんがすごく好きです。

IROHA
IROHA:私はJ-POP、ヒップホップとかいろんなジャンルを聴くんですけど、最近はJinmenusagiさんやACE COOLさんを聴いています。私はアニメやゲームが好きなんですけど、お2人とも哲学的なラップで、アニメ用語が出てきたりするんです。そういう面白いリリックがすごく参考になることも多いんです。

AN
AN:私はグループの中で歌を担当しているので、R&B寄りの曲がすごく好きです。あと、ダンスもやっていたので洋楽を聴くことが多かったんですけど、J-RAPだとDaichi Yamamotoさんの曲が好きで。たまにメロディも入るんですけど早口ラップもできて、声も低くて分かりやすいんですよね。R&BだとCrystal Kayさんが昔から好きでずっと聴いてました。
ーメンバーのルーツに関して、DABOさんとHAZIMEさんは、いかが思われますか?
HAZIME:僕も今初めて聞いたんですけど、「ああ、わかるわかる」っていう感じで。一番最初に勝手なイメージで「日本人の女の子の曲が好きなんでしょう?」って言ったら、「全然そんなことないですよ」って返ってきたので。こういうインタビューの機会じゃないと基本的に聞かないので、こっちも勉強になります。

左から、DABO、HAZIME
ーグループ名「CYREN」には、どんな意味合いがあるんですか?
IROHA:漢字で書くと「彩」に「蓮」という表記になるんですけど、「蓮の花が泥から這い上がってくる」というのを自分たちに例えて、自分たちの歌声で世界を彩るという意味で、彩に蓮でCYRENと名乗っています。
ーそこからデビュー曲「CYREN」が生まれた?
HAZIME:これは、メンバーから「ちょっと和っぽいテイストのものをやりたい」という声があって、「じゃあそこからスタートしましょう」と。
MOMOKA:日本人として日本語ラップをするにあたって、和の要素を入れたかったんです。
HAZIME:僕がトラックを作って、メンバーにリリックを書いてもらって。フックも何パターンも作ったんですけど、なかなか着地しなくて。ラップの部分もDABO先生が加わってだいぶいい感じだったんですけど、フックがちょっと見えてこなくて。そしたら偶然、彼女たちのボーカルトレーニングをやってるユカ先生が、我々が昔から知ってる先生だったんですよ。それでフックを作ってもらったら、そこからめっちゃ加速していって。次の曲、次の曲ってどんどんお題が出てくるし、リリース日も決まっていくから、本気でやらないと追いつかないくらいの状況が出来上がったんです。

ーリリックを見ると、かなり強い言葉も並びますが、最初に書いたものからこういう言葉が多かったんですか?
HAZIME:結構ありました。今はおとなしくしてますけど、まあ言葉遣いは悪い(笑)。
一同:(笑)。
ーDABOさんは、上がってきたリリックを見てどう感じましたか?
DABO:「ほうほう、なるほど、こういう感じね」って。そもそも、自分たちがやりたい感じを書いてくるわけじゃないですか? なので「こういう角度、こういうノリね」というのを最初にいただいてから調整していった感じです。並べ替えたり、間引いたり、ちょっと足したりする作業ですかね、僕は。
ー大元のリリックは変えずに?
DABO:なんとなく言わんとしてることは理解できるので、「だったらここいらないよね?」とか、「もうちょっとここを足さないと意味が通らないよね」とか、1つ1つの整理整頓はしています。一から僕が書いたらメンバーに作ってもらってる意味がないので、「僕だったらこうするよ」って提示する感じです。鬼コーチとかじゃないんで、僕も(笑)。

DABO
ーDABOさんはショーケースのMCで「今は誰でもラップする時代」とおっしゃっていました。ヒップホップのあり方が多様化していく中で、メンバーたちにヒップホップのどういう部分を伝えたいと考えていますか?
DABO:そこは手探りですね。僕とDJ HAZIMEが伝えられること、教えられることはやろうと思ってるんですけど、「継承させよう」みたいな大きい感じはあまり考えていないです。僕たちよりめちゃくちゃ若いので、若者と作業することで僕の方が勉強になる。「こういう感じなんだ」みたいなことが関わるだけでいろいろあるので、ウィンウィンですね。
ーDABOさんは、どんな部分が勉強になっていますか?
DABO:感覚ですかね。僕と彼女たちだと時代が違うし、常識も違うじゃないですか? わかりやすく、僕たちはネットがない時期に青春を送っていたとか、皮膚感覚が違うと思うんですよ。その感覚を勝手に勉強しているっていうか、教わってるつもりです。
ーメンバーの皆さんは、DABOさんとのコミュニケーションの中でどんなことを感じていますか?
MANAMI:制作するにあたって、私たちの書いたリリックを手直ししてくださるんですけど、「こっちの方が伝わるよ」とか、私たちには出てこない知識の量や引き出しの多さから、フロウやトラックへの乗せ方も学ばせてもらっています。全部を変えるんじゃなくて、私たちが今知ってる言葉、流行りの言葉を生かしながら手直ししてくださるので、この年代の私たちが発信する意味もあるし、自分たちだけではできないことを学ばせてもらっています。
ーリリックは、メンバーごとに分担して書いているんですか?
MOMOKA:自分のバース全体を書きます。
HAZIME:そもそも曲を作るときに、僕から「こういうことをやろうと思います、テーマはこれにします。ここの歌詞をお願いします」と伝えて、戻ってきた歌詞を「DABOくん、こういう感じで上がってきたんでお願いします」みたいな感じの流れなんです。
ーHAZIMEさんが提示するテーマは、どうやって決めているんでしょうか?
HAZIME:僕は、日々いろんな人の前でDJをやって選曲していて、「今はこれだろうな」みたいなものが基本的にあるんです。そこからスタートして、CYRENに落とし込むにはテーマをこれにしよう、と考えるパターンの方が多いです。トリッキーなことをやろうと思えば何でもできちゃうと思うんですけど、まずは王道なことを1回やろう、というのがありました。変に歪めず、変な味付けせず、王道勝負が基本コンセプトです。

HAZIME
ー「変な味付けはしない」というのは、どうしてそう考えたんでしょう?
HAZIME:CYRENをやるにあたって、日本のグループの曲もいろいろ聴いたんですけど、味付けが濃い目なグループも多いし、「これはヒップホップとは言わないだろう」というグループもいっぱいあった。逆に、正当にやることの方が他にいない気がして。ストレートにちゃんとやるヒップホップグループの方が希少価値が高いんじゃないかなって思うんですよね。長年ヒップホップを聴いてきた人も、最近聴き出した人も、ちゃんとこのジャンルが好きな人が聴いて「これはかっこいいね、変な味付けされてないね」って評価されるものを作りたかったんです。
ーまさに「CYREN」は、王道であり、ヒップホップに正面から挑んだ楽曲ですよね。
MOMOKA:「CYREN」を書いたタイミングは、リリックを本気で書いたこともなかったんです。自分が本気にならないと、このままやってたら続けていくには無理やなって思ったから、その気持ち、覚悟を書きました。
HINANO:まさに、宣戦布告です。東京に来てちょうど半年くらいでこの曲を書いて、みんなの気持ち的にも上がっていて、「行くぞ!」みたいな。カマすぞ系の曲で言いたいことを全部言ったみたいな。ぐちゃぐちゃでもいいから書いてみて、できたら何回もやり直して。
ー「宣戦布告」というのは、何に対しての宣戦布告ですか?
HINANO:今まで、自分たちがやりたいことをできなかった経験をしていて。ヒップホップが大好きだし、伝えたいことをやっとここで言える、っていう意味での宣戦布告です。
AN:私たちはずっとデビューを目指してやってきて、上京もデビューに近づく一歩としてすごく大きかったんです。そこからやっと曲がリリースされるってなって。「CYREN」は1曲目だったから、どれだけ自分たちの思いや意思表明を乗せられるか、その曲だけでも伝わるくらいの勢いでやろうと思っていました。みんなのやる気もグンと上がっていたし、「CYREN」は決意表明や宣戦布告が一番詰まっている曲だと思います。
ーDABOさんは、「CYREN」のリリックに関して、どんなことを感じますか?
DABO:コツとかロジックとか、いわゆる経験値が備わっていない若い子がパッションで書いた詞なんですよね。10代の若い子たちのパッションに僕とHAZIMEの経験値を掛け合わせてできたものが「CYREN」かなと。僕からは出てこないワードが出てくるのが面白いんですよ。そこを楽しみながら、自分が思うように並べていって、順序を変えて整理整頓していった感じでした。
ー1st EP『ONE』の他の収録曲についても、それぞれ込めた思いを聞かせてください。
MANAMI:「Dear My Friends」は、それまで仲が良かった地元の友だちや、スクールで出会った友だち、今まで一緒に活動していたけど違う道に進むことになった仲間に向けて、感謝とリスペクトを込めて書いたリリックです。やっぱり友だちって一番身近で、同年代と会話する中でできた絆だから、そこは壊れない。5人のメンバー同士に思うことも書いているし、個々で角度が少しずつ違うんですけど、結局は友だちに向けた曲で、感謝が多めな曲になっています。
IROHA:EP全体を通して、自分が今思っている等身大のメッセージがある曲や、上京してからの心境の変化が書かれた曲、新しい自分たちが詰め込まれた5曲が入ったEPになっています。特に「Story of My Life」は、去年の4月に上京してきて住む環境が変わったり、自分たちでごはんを作ったりして感じ方がすごく変わったからこそできた曲です。
ーかなりメンバーの気合いを感じますが、お2人はメンバーからの熱量を感じますか?
HAZIME:熱量を感じないとは言わないですけど、変な話、あって当たり前なので。「今日気合入ってんね」って感じる方が逆に困っちゃう。それを標準にしてもらいたいんですよ。気合が入ってて当たり前。そういう意味では、みんな本当にちゃんとやってくれてます。
ーEPがリリースされた今、HAZIMEさんはどんな気持ちですか?
HAZIME:もっと売れてほしいし、2枚目、3枚目とかも当たり前にできるようにちゃんと認知されたいし、評価もされたい。それを今は思っています。
DABO:僕は、どっちかというと彼女たちと近いというか。作詞提供やプロデュースの仕事は新人なんですよ。なので「成功しろ、売れろ」と思うし、それが僕の評価にもなる。CYRENも手掛けたDABOとして自分のキャリアの1つにもなるわけですから。生涯なるべく音楽に携わっていたいので、自分が演者としてアーティストをやるのはライフワークとして、それ以外の人に対してもこういう自分の力の使い方もあるんだなと思って楽しんでやっています。6人目のメンバーくらいの気持ちなんですよ。彼(HAZIME)はビートをやっているし、CYRENの作品だけど、確実に僕の作品でもあるし、みんなの作品でもある。ファンも含めてみんなで作ったEPだと思うので。僕は楽曲って自分の子どもだと思うんですよ。その子どもがスクスク大きくなったらうれしいし、みんなで育んでいけたらという感じです。
ー5月9日にはショーケースライブ「Page One」を行い、初めてのライブを行いました。手応えはいかがでしたか?
HAZIME:ライブは表現の仕方がまた別物で、お客さんも招待者だけだったので、本当にここからがスタートだなと感じたのが素直な感想です。
MANAMI:やっと本当に自分たちがめっちゃしたいことを見せられた、っていう感じです。もともと「したいこと」はできていたんですけど、それで満足はしていなかった。HAZIMEさんが言っていたように、「ここからスタートできる」って、ライブをやっている間もめっちゃ感じました。みんなの顔つきを見ながらやっていたんですけど、前とは全然雰囲気が変わって、本気の顔になっていて、自分でもウルッときたくらい感極まっちゃいました。
DABO:僕は、リリースライブで初めて生で歌っているのを観たので、やっと手の内を全部見終わったなって感じだったんですよね。「思ってたより全然いいじゃん」っていう部分もあったし、アドバイスしたくなるところも発見した。今、レコーディングや制作のスキルが上がっていってるところだと思うんですけど、お客さまの前でパフォーマンスすることに関しては、まだまだ全然伸びしろがあるなと。ステージングとか、お客さんへの会い方とかがもっと工夫されて、これから作品、ライブともに豊かなグループになっていくと思います。
HAZIME:これから、CYRENというグループとしての音楽性は保ちながら音楽の幅もちょっとずつ広げたい。ただ、変な味付けはやらない。出す料理の種類は増やせるけど変なことはやらない。あくまで王道のヒップホップ、R&B、今現行のものの基盤はちゃんと持ったまま、どんどん音楽を出していって会場も大きくしたいし、来る人数も増やしたい。セールスももっと取っていきたい。本当にまともにヒップホップ、R&Bをやって、なるべく早めに武道館までやりたいです。

ー最後に、メンバーそれぞれの目標を聞かせてください。
AN:私たちの曲を聴いてくれる人がもっともっと増えて、ファンの方だけじゃなくて、私たちを初めて観る方が多い中でのステージ、フェスやイベントにたくさん立って、もっと広げていきたいというのが今の一番近い目標です。大きい目標としては、私たちは武道館を目指しているので、武道館に入りきらないくらいファンの方を増やしていきたいです。
IROHA:音源のクオリティもこれからどんどん上げつつ、現場のクオリティをもっと上げていきたい。私は今15歳なんですけど、ラッパーの中で最年少で武道館に立つことが今の自分の中での一番大きい目標なので、今ついてくださってるコアなファンの方も含めて、全員武道館に連れて行くっていう気持ちで頑張っていきたいです。
MANAMI:自分たちで制作に関わらせていただいて、一から自分たちでリリックを書ける機会をもらっているので、もっとリリックを書く面でもスキルを上げて、自分たちの思いをちゃんと乗せられるように書きたい。パフォーマンス面でも、自分たちだけで楽しまずに、お客さんをどう巻き込んでいくか、MCでもどう楽しませられるかをもっと考えて、「もう1回観に来たい」と思ってもらえるようなライブを作れるように頑張ります。
HINANO:私は、1人でも欠けたらヤバいってなるくらい、個々が強いグループを目指したいです。1人1人がドレイクとかエイサップ・ロッキーとか、そのくらいレベルの高い人になって、「1人でも強いよね」って言えるくらいのグループになりたい。その上で、CYRENとして5人で目標の武道館に立てるように、リアルを届けたいです。
MOMOKA:自分たちが届ける曲がもちろんバズって聴いてもらうのはうれしいんですけど、そこから私たちの表現自体を好きになってくれて、いろんな曲を聴いてもらいたい。自分たちにしか出せないものを聴いてもらいたいです。
<リリース情報>
CYREN
1st EP『ONE』
リリース日:2026年5月1日(金)
Instagram:https://www.instagram.com/cyren_jp/
