研究におけるテレビゲームの評価には賛否があり、物議をかもすことが多い。しかし最近の研究によれば、ゲーマーの知覚能力が学習に好影響を与えているらしいことが明らかになっている。

アメリカのブラウン大学認識知覚学習研究所(Laboratory for Cognitive and Perceptual Learning)の研究者が発表した論文では、定期的にテレビゲームで遊ぶ人は、視覚的な知覚による学習を行う能力に優れており、ほかの知覚的な妨害に対しても強く、安定的かつ長期的な学習を行っている可能性があるという。

こうした研究結果はいくつもある。実は、近年テレビゲームは心理学において人気のテーマとして扱われてきた。それらの研究によると、ゲーマーたちは非ゲーマーよりも知覚能力や注意能力が高く、複数の気を散らす刺激を容易に識別したり、注意範囲を拡大したりすることができることがわかっている。

今回の論文では、テレビゲーム研究に新たな切り口から挑んでいる。とりわけ、「ゲーマーの強化された注意能力は、知覚的干渉や障害に強いのか」、そして仮にそうなら、「それは長期的な知覚学習を向上させるのか」という問いに対する検証が行われた。

研究チームは、9名のゲーマー(週に5時間以上ゲームをプレイする人)と9名の非ゲーマー(週に1時間以下)を集め、2セッションの識別作業(TDT/Task Discrimination Task)に参加してもらった。これは、4つに区切られた区画のどこかに表示されるターゲットの場所を当てるというもの。表示板の背景には縦線か横線が入り、測定者を"干渉"する仕組みになっている。このテストを用いて、参加者の反応速度と精度が測定された。なお、一度やった作業をどれだけ記憶しているかを測るために、各セッションの間には24時間のインターバルが与えられた。

過去のTDT研究では、干渉の種類によって知覚および学習結果が異なることが示されてきた。例えば、目の前のTDT作業をこれまでと違う干渉背景で邪魔をすることで、ターゲットの識別がより困難になる。すなわち、横線の背景に慣れた後、縦線で干渉されると学習しづらくなる。また、ターゲットと干渉画面が表示される間隔を短くすることでも、学習および記憶プロセスを阻害できるという結果となった。どちらの干渉も、学習を阻害する実世界を模したものだ。

なお、本実験でのTDTは、ゲーマーが干渉に対処した程度を調べるために、特別に用意されたもの。各セッションは、縦線干渉のセッションと横線干渉セッションに分けられたうえ、ターゲットと干渉画面が切り替わる速度はどんどん速くなる(180ミリ秒から60ミリ秒)ように設計されていた。

先行研究と同じく、ゲーマーは非ゲーマーと比較して、早くかつ正確に目標を特定することができた。さらに、ゲーマーは干渉の変化に対しても強いというおまけのデータまで得られた。また、1日後に実施されたセッションでは、非ゲーマーよりもターゲットの位置を正確に記憶していたことも明らかになった。

これらの結果によって、ゲーマーたちは、矢継ぎ早に次々とやってくる刺激に普段からさらされ、それに対処してきたことが原因で、阻害刺激があっても長期的に学習能力を維持する能力を身につけたことが示唆された。同様に、数多くの要素を解釈し、識別してきたメカニズムが、長期的な記憶固定も助けている。

研究者の見解では、ゲーマーが日常経験しているような長期的視覚訓練によって、脳の中でも特に視覚を用いた固定メカニズムの効率を向上させられる可能性があるという。そして、ゲーマーが発揮するより効率的な固定メカニズムは、学習全般において優れた結果を残せる可能性があるそうだ。

こうした研究は、視覚学習に関する新モデルの考案につながり、提示された情報への対応のみならず、情報の維持に関するゲームの効果に新しい洞察を与えることになるという。

研究者たちは、こういったタイプの研究は新しい視覚学習のモデルにつながると信じている。

ゲームをすることが、人が情報に対処する能力や記憶に影響を与えることがあるという今回の研究結果は、視覚学習における新しいモデルの考案につながると期待されている。

カラパイア

ブログ「カラパイア」では、地球上に存在するもの、地球外に存在するかもしれないものの生態を、「みんな みんな 生きているんだ ともだちなんだ」目線で観察している。この世の森羅万象、全てがネイチャーのなすがままに、運命で定められた自然淘汰のその日まで、毎日どこかで繰り広げられている、人間を含めたいろんな生物の所業、地球上に起きていること、宇宙で起きていることなどを、動画や画像、ニュースやネタを通して紹介している。