2014年10月は上野東京ラインの開業が正式発表され、北陸エリアの新しい列車名が発表されるなど、来年3月のダイヤ改正に向けた動きが加速した。D51形の復活、371系引退など、車両の話題も豊富だ。一方で台風の影響による東海道本線の不通が物流に大打撃を与えた。

上野東京ライン開業で宇都宮線・高崎線と東海道線の相互直通運転が実現

上野東京ライン開業日決定! 常磐線特急も変化

10月30日、JR東日本は上野東京ラインを2015年3月14日に開業すると発表した。かねてより2015年春開業と告知されており、北陸新幹線金沢開業と同じ日で大方の予想通り。来年3月のダイヤ改正の大きなトピックとなる。東京圏の鉄道路線網が大きく変わる。

JR東日本の発表と報道をまとめると、上野東京ラインの直通列車は1日約300本で、東海道線の列車のほとんどが上野駅以北へ直通する。宇都宮線、高崎線、常磐線は各100本が東海道線へ直通予定。常磐線については品川駅折返しとなるが、各方面の新幹線に乗り換えしやすくなる。これで上野駅から山手線や京浜東北線に乗り換えていた通勤通学客が分散され、通勤ラッシュが改善される。

常磐線特急に品川駅発着の列車が登場。「ひたち」「ときわ」に名称変更される

この直通運転の開始にともない、東海道線の車両基地が再編成され、田町~品川間の車両基地も縮小。山手線・京浜東北線の新駅と再開発も加速するだろう。

常磐線の特急も多くが品川駅発着となり、運行系統も変化。現行の特急「スーパーひたち」「フレッシュひたち」も、上野東京ライン開業を機に「ひたち」「ときわ」に再編成される。「ひたち」は速達タイプ、「ときわ」は停車駅が多いタイプ。「ときわ」は常磐線の急行列車に使用されていた列車名で、1985年に「ひたち」に統合されて以来、30年ぶりの復活となった。高崎線経由の特急「スワローあかぎ」に準じた新たな着席サービスも始まる。

上野東京ラインは東海道線・宇都宮線・高崎線の相互直通客だけではなく、常磐線利用者にとって大きなサービス向上になる。常磐線沿線の不動産価値上昇など、多方面に影響がありそうだ。

JR西日本、D51形蒸気機関車の本線復活を発表

JR西日本は10月17日、D51形200号機の本線復活計画を発表した。同機は1938年製で、中央本線の貨物輸送を最後に引退。現在は梅小路蒸気機関車館で動態保存されている。ただし、本線走行に必要な設備を持っていなかった。そのため、2017年までに大規模な修繕と改造工事を実施し、「SLやまぐち号」「SL北びわこ号」で運行する予定とのこと。

D51形の復活は、JR西日本の「持続的なSL動態保存体制の整備」という施策の一環だ。JR西日本は梅小路蒸気機関車館周辺を「京都鉄道博物館」として整備する方針で、梅小路蒸気機関車館にSL専用検修庫を新設。設備を改善してSLの整備効率を上げるとともに、見学も可能にするという。

D51形の復活は良いニュース。しかしこの背景には、現在、「SLやまぐち号」などに使われているC56形160号機の不調があるようだ。「SLやまぐち号」はC57形1号機が使われており、故障や検査のときにC56形が使われていた。だが、C56形単機ではパワー不足で、ディーゼル機関車を補機として連結していた。D51形を復活させることで、「SLやまぐち号」はC57形と2機体制となり、蒸気機関車単機運転を継続できる。任務を外れたC56形160号機の動向も気になるところだ。新しい研修庫における入念な整備を期待したい。

特急「あさぎり」で活躍した371系が引退へ、譲渡先は?

JR東海は10月20日、371系電車の引退を発表した。ラストランは11月30日の「御殿場線80周年371」号の復路(上り列車)とのこと。

JR東海371系は2012年3月まで、特急「あさぎり」で活躍した

371系は沼津駅からJR御殿場線と小田急線経由で新宿駅まで結ぶ特急「あさぎり」のために製造された車両で、小田急ロマンスカー20000形RSE車と共通の仕様としていた。1編成しかない希少車種で、中間車に2階建て展望車両を連結し、流線型のスマートな姿で人気がある。

2012年3月以降、「あさぎり」はすべて小田急ロマンスカー60000形MSE車に置き換わり、371系は臨時列車「富士山トレイン371」などの臨時列車に起用されていた。

小田急20000形は廃車の後、1編成が富士急行に譲渡され、8000系「フジサン特急」となっている。371系の今後については、JR東海が利用者からの問い合わせに対し、「地方私鉄から引き合いがある」と譲渡の可能性を示唆しているようだ。噂では、「フジサン特急の第2編成では?」とささやかれているが、小田急20000形の2階建て車両は「フジサン特急」に含まれなかった。なんとか2階建て車両も残してほしいけれど、どうなるか? 譲渡の正式発表があるか、待たれるところだ。

「ダイナスター」「TRAIN SUITE 四季島」新しい列車名が続々

10月上旬は新しい列車名が次々と発表された。北陸新幹線金沢開業で活気づく北陸エリアでは、のと鉄道が観光列車を「のと里山里海号」と命名。来年4月29日から運行開始予定で、全席にテーブルを設置し、能登の山海の美味を提供する。JR西日本は七尾線の観光列車を「花嫁のれん」と発表しており、2015年10月の運行開始を予定している。車体外観や内装に輪島塗や加賀友禅、金箔などを用いて、和の絢爛な空間を演出するという。

さらにJR西日本は、北陸新幹線金沢開業に合わせて運行開始する特急列車として、「ダイナスター」「能登かがり火」を発表した。「ダイナスター」は北陸新幹線と接続し、福井~金沢間を結ぶ。名称の由来は、福井県が恐竜の化石発掘で世界的に知られていることから、恐竜の「ダイナソー」と星を意味する「スター」を合わせた。「能登かがり火」も北陸新幹線と接続し、金沢駅と和倉温泉を結ぶ。能登地方にかがり火を用いた祭りが多く、炎の幻想的なイメージや勢いの意味を込めたとのこと。

「花嫁のれん」は旧加賀藩の嫁入りの慣習が由来というけれど、認知度としては東海テレビ制作、フジテレビ系で放送されていたドラマのタイトルのほうが大きいだろう。主演の野際陽子、羽田美智子の好感度も高く、ドラマとこの列車のタイアップが実現したらおもしろそう。一方、「ダイナスター」はアニメヒーローの名前みたいだ。JR西日本が山陽新幹線で展開する「カンセンジャー」との絡みを期待したい。……いや、もしかして最初からそのつもりで名づけたのでは? 「カンセンジャーvsダイナスター」の映像作品があれば観てみたい。

なお、JR東日本も2017年から運行予定の豪華観光列車の名前を「TRAIN SUITE(トランスイート) 四季島」と発表している。日本の古い国名の「しきしま」と、「全室スイートルーム」が由来とのこと。遊び心のJR西日本に対して、JR東日本の列車名は上品なイメージだ。どの列車も乗ってみたい。デビューが楽しみである。

東海道本線の台風被害、貨物列車に大きな影響

10月は台風18号が日本列島を舐めるように通過し、各地で被害が出た。鉄道では東海道本線に甚大な被害があり、10月6日にはJR東海管内の東海道本線興津~由比間、金谷駅構内、新所原~鷲津間、身延線の芝川~稲子間と内船~甲斐大島間が一時不通となった。中でも興津~由比間の被害が大きく、当初は10月20日に運転再開予定と発表されていた。実際には復旧作業の努力が実り、10月16日始発から運行再開されている。それでも10月5日の事前運休も含め、11日間も東海道本線が分断された。

この間、普通列車の代行手段として代行バスが運行されたほか、東海道新幹線「こだま」による振替輸送、本来は三島駅から静岡駅までの回送列車1本を営業運転するなど、異例の措置が取られた。特急「(ワイドビュー)ふじかわ」と寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」も運休し、長距離利用客にも影響が大きかった。

しかし、最も広範囲に影響が及んだ列車は貨物列車だ。東海道本線は1日あたり約90本の貨物列車が走る。輸送量は12フィートコンテナで約1万1,000個。5万5,000トンの輸送が止まった。JR貨物が1日で扱う貨物コンテナの約半分という。旅客列車のように他の路線に振り替えられず、トラックを手配したり、日本海岸や中央本線経由の臨時貨物列車を手配したりしたものの、この大きな輸送量は補えなかった。宅配便の到着遅延や出版物の発売延期など、消費者に見える形での影響があったようだ。

長距離トラックなら道路を迂回できる。しかし貨物列車は足止めとなる。長距離トラックのドライバー不足や環境面でのモーダルシフトが検討される中で起きた案件だけに、今後は鉄道貨物輸送の二重化が課題となりそうだ。

東海道本線の一部区間不通により、貨物列車も大きな影響を受けた

10月は新駅・新技術の話題も多数

その他、10月の話題としては新駅関連が4つ。東京メトロ日比谷線の霞ヶ関~神谷町間と、JR東日本の大船渡線BRTに新駅設置の報道があった。広島市のJR山陽本線とアストラムラインが接続する新駅に関して、駅名が「新白島」に決定している。ひたちなか海浜鉄道では10月1日、高田の鉄橋駅が開業した。

えちごトキめき鉄道では、新造ディーゼル車ET122が公開された。また、JR東海はリニア中央新幹線の建設が認可された発表しており、いよいよ建設に向けて動き出しそうだ。「来年のことを言えば鬼が笑う」というけれど、鉄道分野は前向きな良い話が比較的多かった。福の神が微笑んでいるかのようだ。