ハリウッド映画界における監督のパワーランキングで、常にトップクラスにいる男と言えば誰もがJ.J.エイブラムス監督の名を上げるだろう。往年のSFシリーズをリブートした映画化第2弾『スター・トレック イントゥ・ダークネス』は、全米をはじめ各国でナンバー1のオープニング興行成績をマークしており、世界興収で3億8500万ドルを上げた前作をはるかに凌ぐメガヒットとなっている。マイナビニュースでは来日したJ.J.エイブラムス監督にインタビューを敢行。本作が持つ世界観、共感を呼ぶドラマについてや撮影秘話、そして気になるパート3の話を聞いた。

宇宙船エンタープライズ号の船長カーク(クリス・パイン)やスポック(ザッカリー・クイント)たち若きクルーの旅立ちと葛藤、そして宿命の戦いへの壮大な物語が描かれた前作。今回カークたちは、哀しい運命を背負った一人の最強の敵との戦いに直面する中で、仲間との絆や愛を試されていく。

映画『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のJ.J.エイブラムス監督

――今回、『スター・トレック』シリーズ初の3D映画となりました。脚本段階から想定されていたのでしょうか?

いや、最初は全く考えていなくて、3Dにするというのはスタジオサイドからの提案だった。それで、試しに前作の一部を3Dに変換してみたら、けっこう出来が良くてね。僕個人、3D映画を見ていると頭が痛くなってしまうことがあるんだ。だから、この作品をそういうものにはしたくなくて。本作はそういう意味では大丈夫だと思う。3Dにして良かったと感じたのは、冒頭で槍が飛んでくるシーンだ。観客がそれをよけるのを見て、やって良かったと実感したよ(笑)。

――本作では、カークの成長が描かれます。重責に担う主演のクリス・パインと、エンタープライズ号の船長であるカークの責任感がオーバーラップしましたが。

クリス・パインは頭が良い人で、演じたカークとは確かにいくつもの共通点があった。まず、見た目が同じ(笑)、そしてクリスもちょっと格好つけるところ、生意気なところがあるんだ。まあ、若いからそうなんだろうけど、彼のそういうところが僕は大好きなんだよ。前作からの4年間でクリスはすごく成長したと思う。本作では、カークに最大の試練が与えられ、彼が愛する人のためにどれだけの犠牲を払うかという物語が展開されるが、同時に、スポックとの友情の物語でもある。ふたりともストーリーの最初と最後で180度変わるというところが見どころだよ。

――本当は内面に熱い感情がありながら、常にそれを抑えているスポック。演じたザッカリー・クリントにはどんな演出をされましたか?

スポック役ではかなり自制した演技が必要だった。だから、ザッカリーには、本当に小さな動きで感情を表すようにリクエストをしたよ。内面の葛藤や悲しさを、何気ない動きで見せてほしいとね。最終的には、抑えていた怒りや悲しみが爆発するから、その振り幅がとても面白いと思う。

――ジョン・ハリソン役のベネディクト・カンバーバッチのキレのある演技も印象的でした。特にカークと対峙するシーンは、緊迫感にあふれていましたね。

ふたりとも優れた俳優だし、人間としてもとてもいいヤツなんだ。ベネディクトが常にすごく存在感があるので、クリスも自分のベストを尽くそうと張り合っていたよ。だから対峙するシーンは、互いに闘争心のようなものを感じたね。でも、実は彼らはすごく仲がいいんだ。それなのに緊迫感が出せたのは、俳優としての力量がふたりに備わっていたからじゃないかな。今回、ベネディクトがチーム位に加わったことで、良い緊張感が生まれ、全員がベストを尽くそうとしていたように思う。……続きを読む。