――今回は、エンタープライズ号がいろんな角度から撮られていました。クリス・パインも「遊園地をまるごと使えたような感じ」と言っていましたが、こだわった点は?

前作とは違い、本作では全部がつながっている巨大なエンタープライズ号のセットを作ったんだ。だから長いショットも可能になったよ。ただし、セットは作ったけど、左右に動かすことはできなかった。劇中でエンタープライズ号が大きく傾くシーンがあるけど、実はあのシーンは、昔ながらの映像テクニックで、カメラを動かして撮ったんだよ。すなわち俳優たちは、ワイヤーにつながれていたり、代わりにスタントマンが演じていたりする。そして撮影後にCGで落下物や火花を散らしたりたんだ。それは50年前のテレビショーと同じ手法で、すごく上手くいったけど、現場では、ただバカをやっているみたいに見えたと思うよ(笑)。

――核融合実験施設NIFでのロケも敢行されましたが、許可を取るのが大変だったのでは?

そう思うでしょ?実は全然難しくなかったんだ(笑)。科学者のひとりが言っていたんだけど、簡単に許可が下りたのは、みんなが『スター・トレック』のファンだったからじゃないかなと。でも、その結果、すごくリアリティが出て、良い影響を生んだと思う。

――本作のプロデューサーであるブライアン・バークが、2014年に『スター・トレック』のパート3の撮影に入ると明言されました。あなたはすでにこの後、『スター・ウォーズ エピソード7』の監督が決定していますが、パート3のメガホンは取らないのでしょうか?

そうだね。パート3については監督ではなく、プロデューサーとして参加する予定だ。新しく監督する人には「とにかく最高のキャストが揃っているので、おいしい仕事だよ」ってことを伝えたい(笑)。もちろん僕は、絶対に現場には顔を出すつもりだ。

J.J.の言葉からは、本作についての愛情とクリエイティブに対するこだわりが感じられ、アクションや設定だけでなく、ストーリー全体やキャラクターの細かい感情の描写まで繊細に組み立てられていることを実感できたインタビューだった。<天才>が創り上げた『スター・トレック イントゥ・ダークネス』の世界を、劇場で思う存分に体感して楽しんでほしい。

エンタープライズ号の内部に潜んでいた静かな悪がもたらした地球最大の危機。復讐の炎により、大量殺戮兵器と化したひとりの男の前に宇宙艦隊は全滅寸前まで追い込まれる。若きキャプテン・カーク(クリス・パイン)は、世界を救うため、その男を追って自ら戦闘地帯へ身を投じる

J.J.エイブラムス


1966年6月27日生まれ。アメリカ、カリフォルニア州ニューヨーク出身。サラ・ローレンス大学4年生の時に書いた脚本がタッチストーンに買われ、製作を兼ねた『ファイロファックス/トラブル手帳で大逆転』(1990年)で映画界デビュー。のち、ハリソン・フォード主演『心の旅』(1991年)やメル・ギブソン主演『フォーエヴァー・ヤング』(1992年)で製作と脚本を手がけ、ブルース・ウィリス主演『アルマゲドン』(1998年)にも協力する。『フェリシティの青春』(1998~2002年)でTV界に進出。『エイリアス』(2001~2006年)と『LOST』(2004~2010年)を大ヒットさせる。トム・クルーズ主演の大作『M:I-III』(2006年)で劇場映画初監督。往年のSFシリーズをリブートした映画『スター・トレック』シリーズの監督に抜擢される。映画『スター・トレック イントゥ・ダークネス』が最新作となる