「アメリカの国立公園には昔から根強いファンがいるのですが、ここ数年のエコ・ブームや自然そのものの魅力が再認識されているためか、人気が高まっているのを感じています」。アメリカ西部5州政府観光局・日本支局の南部貴子氏は、筆者に嬉しそうに話す。

ユタ州南部、アリゾナ州北部、コロラド州南西部、ニューメキシコ州北西部にまたがる「グランドサークル」と呼ばれる地域には、アメリカを代表する国立公園がいくつも集まる。たとえば、ユタ州のブライスキャニオン国立公園。この公園に向かってハイウェイを車で走っていると突然、赤茶色の巨大な奇岩が現れる。公園にある展望台からは、数千万年にわたる雨水や氷の侵食によってできた岩の尖塔群が続く驚きの光景が望める。さらに、展望台から尖塔群の間を縫うように続くトレイル(小道)を歩いて谷底に降りて行くと、岩の間に背の高いもみの木がそびえ立つ不思議な空間に辿り着く。

ブライスキャニオン国立公園、サンセットポイント展望台からの眺め

面積の狭い島国に暮らす日本人にとって、大陸の広大な自然とその風景はどこか特別なもの。都市で生活するビジネスパーソンにとって、それは何より魅力的ではないだろうか。

アメリカの国立公園には、広大な自然がそのまま残されている。それが最大の魅力である。国立公園内の生態系は、自然環境の「プロ」であるパークレンジャーや複数の自然保護団体、そしてボランティアの市民により守られている。アメリカでは「世界遺産」よりも、「国立公園」の反応がいいというが、その理由はそれだけ国立公園というものにプライドを持っているからだろう。比べても仕方がないが、日本の国立公園の場合、ダムや舗装道路やレジャータウンがあって興ざめしてしまうことも少なくない。アメリカの国立公園は、同じ国立公園と名が付いていても、そのスケールからしても、保護の徹底ぶりからしてもまったく別物なのである。

ブライスキャニオンの谷底にあるもみの木

ナバホループ・トレイル