前回のアーチーズ国立公園前編はいかがでしたか? 後半の今回は、世界で一番大きなアーチといわれている"ランドスケープ・アーチ"と、夕日のさす時間帯になると真っ赤に染まり、アメリカで最も有名と評判のアーチ"デリケート・アーチ"をご紹介します。

ランドスケープ・アーチは世界最大

世界最大のランドスケープ・アーチ

前回の最後に紹介したウィンドウ・セクションから、公園内の道をバランスロック近くまで戻り、公園の奥へと車を走らせると、一番奥にデビルズ・ガーデンと呼ばれるエリアがある。多種多様なアーチがある場所だ。パーキングに車を停め、トレイルの中に入っていくと、アーチになる手前の岩"フィン"がたくさんある。それを横に見ながらどんどん進み、約15分でランドスケープ・アーチに到着する。

このアーチは、現在世界最大のアーチとされていて、横の長さは88.4m。2006年の調査により、同じユタ州のザイオン国立公園(次回のコラム予定)のコロブアーチより、ほんの少し長いことが分かり、世界最大になったのだ。アーチーズには数多くのアーチがあるが、やはりこんなに大きくて、こんなに細いものはなく、感動する。

ランドスケープ・アーチの下に展望台があり、そこからはアーチとその向こうの空まで見ることができる。しかし、そこからトレイルを少し進んだり、戻ったりして、アーチからの距離が少し離れると、空が見えなくなってしまうので、展望台まで行き、しっかりと写真を撮っておこう。このランドスケープ・アーチの厚さは薄いところで約2mしかなく、近年ちょこちょこと崩れている。

アーチーズ国立公園の入り口に立地するビジターセンターではアーチーズ国立公園&キャニオンランズ国立公園の紹介ビデオを上映しており、その中にランドスケープ・アーチが壊れる瞬間の映像がある。時間がある人は、ぜひ立ち寄って見てみるといいだろう。

以前は、ランドスケープ・アーチの下まで行くことができたのだが、危険なため、現在そのトレイルは閉鎖されている。私が見るところ、ガイドブックやネットなどでよく見るランドスケープ・アーチの写真は、どうもトレイルが閉鎖される前に撮ったもののようで、同じ感じで写真を撮ろうとしても、現在入れる範囲からでは無理なように思う。写真に入る空の範囲なども小さく、少し残念だ。

みんなが見たい! 赤く染まるデリケート・アーチ

私たちが訪れた日の話だが、ランドスケープ・アーチからデリケート・アーチに行く途中、突然、雪が降り出した。デリケート・アーチは夕日の時間が最も美しいため、それに合わせて行かなければ意味がない。しかも、パーキングからデリケート・アーチまでは、足場の悪いトレイルを歩いて1時間弱。車を停め、外の様子を窺うが雪は止みそうにない。隣の車のカップルも行きたそうにしているが、待機しているようだ。

しかし、うちの飯富は雪国育ちのため、「これぐらいなら大丈夫」と判断したのか雪に関係なく準備を始める。確かに、パーキング付近は雪が降っていたが、アーチの方向の空は晴れていたのだ。とりあえず、雪が小降りになったのを見計らって、私たちは出発した。それを見て、待機をしていた皆が一斉に動き出した。第5回のコラム「 グランド・キャニオンに行ったらぜひ体験して欲しいトレッキングのスヽメ」でも少し触れたが、悲しいことに私たち2人の体力は人並み以下。後ろから来た人たちにどんどん抜かれて行ってしまった。

分かりますか? 写真左半分は雪が降っています。右半分は青空です。自然はすごい

道なき道を延々と歩きデリケート・アーチに向かいます

歩いているうちに雪が止み、雲の合間から太陽の光が差し込んで来た。私たちは、約45分程度でデリケート・アーチに到着。想像以上に大きく、美しかった。しかし、まだ雲が多くてなかなか太陽が当たらない。夕日の時間までこのままだったらどうしようと思ったが、常に"晴れ女&晴れ男"の私たち。そんな心配はよそに、夕暮れ時にはデリケート・アーチが真っ赤に染まった。

しかも直前に雪が降っていたため、アーチの向こう側の岩肌は真っ白。真っ赤なアーチとの対比が素晴らしく、本当にここに来て良かったと思わせてくれた。

赤い岩肌が美しいデリケート・アーチ。向こう側は雪で真っ白

片道1時間弱、歩いても見る価値があるこのデリケート・アーチ。皆さんがアーチーズに行く機会があったら、必ずトレイルを歩いて見に行ってください。さて、次回はラスベガスから北へ移動し、ザイオン国立公園をご紹介します。お楽しみに~。

アーチの真下の黒い人影は私です。アーチの大きさ、分かりますか?

(写真:フォトアーティスト飯富崇生)

フォトアーティスト飯富崇生のワンポイントフォトレッスン
アーチーズ写真撮影の一番のポイントは、やはりデリケート・アーチ。時間帯は、夕日が当たり真っ赤に染まる夕方がベスト。大きさがなかなか伝わらないが、実際のアーチは思っているよりはるかに大きいだろう。アーチ真下に人を入れて撮ればその大きさが伝わるので、思い出の一枚になると思う。アーチ周辺は自由に歩けるが、たくさんの人が写真を撮っているので、あまりお邪魔をしないほうがいいかも。ただし、夜になると真っ暗になって足元が見えなくなるので、早めに帰るようにした方がいい。ちなみに、朝、ビジターセンターで、パークレンジャーの人に、帰りのアドバイスを求めたら、「懐中電灯を持って行った方がいいが、毎日たくさんの人がデリケート・アーチまで歩くので、最後に帰らなければ心配ない」とのことだった。
アクセス情報
アーチーズ国立公園の最寄りの国際空港:ソルトレイクシティ国際空港日本からの直行便はないのでアメリカ西海岸乗り継ぎで約1時間半。そこからアーチーズまでは、レンタカーで行くのが一般的。所要時間約5時間。車の場合:ソルトレイクシティから、I-15 South→I-70 East→US-191。US-191沿いにアーチーズの入り口やモアブの町がある。
周辺情報
キャニオンランズ国立公園、デッド・ホース・ポイント州立公園、ゴブリンバレー州立公園、キャピタル・リーフ国立公園、モニュメント・バレー、チャコ・カルチャー・ナショナルヒストリックパーク(世界遺産)、メサ・ベルデ国立公園(世界遺産)など。