アメリカの国立公園はエンターテインメント性も抜群だ。前述したようにブライスキャニオン国立公園は展望台から谷底へ下るハイキング・トレイルがあるが、谷底に降り、切り立った岩柱に囲まれた空間に佇んでいると、原始の時代に迷い込んだかのような気分になり、時間の感覚さえ忘れそうになる。

また、同じく「グランドサークル」の1つであるアーチーズ国立公園には、自然にできたとは思えないデリケートアーチと呼ばれる奇岩が存在する。この奇岩へは約2.4kmのトレイルを歩いて行くのだが、途中、デリケートアーチの姿はまったく見えない。トレイルは何の変哲もない坂道からスタートし、だんだんと岩場が多くなり、そのうち巨大な岩を上る道に入り、いよいよデリケートアーチが見えるのか期待を高めながらさらに歩く。そして、トレイルの最後の最後、一気に姿を現すという偶然とは思えない"仕掛け"になっている。

デリケートアーチへ向かうトレイル

この赤茶色のアーチは、そのユニークな形だけでも見る価値があり、ユタ州に12もある国立公園・国立モニュメントの中でも最も人気の観光地の1つである。広い開放的な岩場にあり、長い時間いても飽きない。夕暮れ時に太陽の光で赤く染まるデリケートアーチも必見である。時間や季節によって違った表情が楽しめるのも国立公園が持つ魅力の1つ。これも、自然が演出するエンターテインメントといったところだろう。

アーチーズ国立公園のデリケートアーチ

成田-ソルトレイクシティ直行便の運航でアクセスが便利に

国立公園には根強いファンがいて、自然の良さが再認識されて人気が高まっているわけだが、この6月からは便利さも向上し、さらに魅力を増しそうだ。というのも、デルタ航空とノースウエスト航空が6月3日から成田-ソルトレイクシティへの直行便を共同運航便として就航するからだ。ソルトレイクシティは、グランドサークルをはじめとするアメリカ国立公園へのゲートウェイになる。

ソルトレイクシティは、02年冬季オリンピックが開催された街で、スキーなどのウィンタースポーツに加え、ゴルフ場も豊富。西部ロッキー山脈の麓にあり、ダウンタウンから車で30分も走れば大自然の中でアクティビティが楽しめる。 街の名前の由来にもなったグレートソルトレイクに浮かぶアンテロープ・アイランドでは、乗馬やマウンテンバイクなどのアクティビティが楽しめるほか、バッファローやコヨーテ、ビッグホーンシープなどの野生動物にも出会えるリゾートだ。

グレートソルトレイク

アンテロープ・アイランドに棲息するバッファロー

このソルトレイクシティに到着する直行便を利用すると、国立公園へのアクセスがだいぶ楽になる。前述したブライスキャニオンやアーチーズへのアクセスは、今までラスベガスから行く旅行者が多いのだが、ラスベガスからブライスキャニオンへは車で4時間半、アーチーズへは8時間以上かかった。ところがソルトレイクシティからは両方とも約4時間で行くことができる。特にアーチーズやその隣のキャニオンランズ国立公園にはより行きやすくなった。現在、日本からラスベガスへの直行便はないので、日本からの空路も便利になったことになる。

デルタ航空機

ソルトレイクシティ空港

ソルトレイクシティからレンタカーを運転して行くのはハードルが高いという人は、現地発着ツアーを利用してもいい。もちろん、日本からのソルトレイクシティ直行便を使ったパッケージツアーも催行され、今後増えるはず。そういう意味でも、このエリアの国立公園へは行きやすくなったといえる。アクセスの便利なソルトレイクシティと国立公園で、大自然を満喫する旅行。それはとても贅沢なものである。