6月に第1回の開催となる「森林セラピーガイド」と「森林セラピスト」の試験が行われるのは、セラピー基地のサービスの向上、均質化を図るためだという。ところで、両者の違いはどういう点にあるのだろうか。

「セラピーガイドの規定は『森林を訪れる利用者に対して、森林浴効果が上がるような散策や運動を現地で案内する者』。セラピストは、セラピーガイドの資格に加え、利用者に対して『心とからだの健康を維持・増進させるための適切なプログラムを提供し、効果的なセラピー活動を指導する者』となっています」(河野さん)。

河野さんによれば、セラピストの方が、健康学や心理学のより専門的な知識を持っていて、利用する個人個人に対応したセラピープログラムを実践できるという。試験の流れとしては、セラピーガイドの場合、「森林セラピー検定2級」の筆記試験(90分)に合格し、講習(1日)を受ければ資格を得ることができる。一方、セラピストはこの2級試験の次に「森林セラピー検定1級」の筆記試験(90分)も受験する必要があり、合格後、講習(4日間程度)を受ける必要がある。この講習の中には、レポートや森での実技試験なども予定されている。

森林セラピー基地では、その基地ごとにプログラムが提供される。ヨガは代表的なプログラムのひとつ(高知県津野町)

筆記試験の内容は、「森林医学」「森林科学」「森林薬学・アロマセラピー」「健康・心理学」「安全・救急」など幅広いものとなっている。

今後は企業の福利厚生などを視野に

試験日は6月7日(日)で、午前中に2級、午後に1級試験が行われる。応募締め切りは、4月30日(当日消印有効)。試験会場は東京、大阪、札幌、仙台、長野、広島、高知、福岡などを予定しているが、志願者の状況によって対応するという。資格取得者は、各地の森林セラピー基地に登録され、活動を行うことになる。

「なにしろ初めての試みですから、受験者数、合格者数、難易度などを含め、まだなんとも言えません」。そう話しつつも河野さんは、「森林セラピーでは、利用する方のそれぞれの心身の状態に細やかに配慮することが大切です。セラピストは病気を治すということではなく、森林環境下でひとりひとりにリラクゼーションプログラムを提供し、対応する必要があります。目指される方には、知識だけが必要とされるのではなく、人に対するというデリケートな一面もある仕事だということを、ぜひ理解していただきたいと思います」と、森林セラピストの役割の重要性を強調した。

メンタルヘルスの改善に効果がある森林セラピーは、今後、企業の福利厚生にも活用が期待されているという。仕事でのストレスで心やからだを壊す前に、森林セラピー基地に滞在して心身ともにリフレッシュするというライフスタイルは、もうじき当たり前のことになるのかもしれない。

ひと口に森林といっても、その趣は地方によって異なる。いろいろな森林セラピー基地を訪ねてみたいもの(長野県飯山市)

森林セラピーに関するレポートはこちらでも詳しく紹介しています。

【レポート】「ヘルスツーリズム」って何? - 「森林セラピー」を体験して探ってみた

「ヘルスツーリズム」というと、「健康(Health)」と「旅行(Tourism)」の組み合わせから、旅で健康になるというようなイメージが浮かぶかもしれない。だが、具体的な内容については、いまひとつピンと来ないという人も少なくないはず。そこで長野県信濃町の「森林セラピー」、ヘルスツーリズム研究所を取材した。