「ヘルスツーリズム」という言葉を聞いたことはあるだろうか? 「健康(Health)」と「旅行(Tourism)」の組み合わせから、旅で健康になるというようなイメージが浮かぶかもしれない。だが、具体的な内容については、いまひとつピンと来ないという人も少なくないはず。

「メタボ検診」の導入など、「健康」が以前にも増してクローズアップされている現在。「ヘルスツーリズム」とは何なのか。地方の取り組みとして長野県信濃町の「森林セラピー」を、旅行会社の展開・今後の「ヘルスツーリズム」の流れを知るべく、ヘルスツーリズム研究所などを取材した。

長野県信濃町、黒姫高原の「癒しの森」へ

長野県北部、長野市から約25キロに位置する信濃町は、「森林セラピー」の先駆けとして知られている。「森林セラピー」とは、「森林浴」の効能が医科学的に実証されて生まれた言葉であり、地方自治体での取り組みが急速に進んでいる「ヘルスツーリズム」の分野のひとつだ。

童話館(中央の建物)では懐かしい気分が味わえる。右手に見えるのは「癒しの森」

町の人口は約1万人。面積は約1万5,000ヘクタールで、その73%が森林で占められている。同町の野尻湖湖畔には、大正時代に外国人の避暑地「国際村」がつくられた。いわさきちひろなど数多くの作家たちもこの町に保養に訪れており、その縁もあって黒姫高原には、黒姫童話館が建てられた。ここには『モモ』などの作品で知られるミヒャエル・エンデの文学資料が、およそ2,000点収蔵されている。

黒姫童話館の前は、冬はスキーゲレンデ、夏は放牧場となる

信濃町では、「森林セラピー」の場を「癒しの森」と呼び、"灰色の男たち"が「時間どろぼう」をしていく『モモ』のストーリーにちなんで、「失われた時間をとりもどす町」というキャッチフレーズを掲げている。