1991年に放送されたドラマ『東京ラブストーリー』。当時の視聴率は最高で32.3%を記録し、バブルという時代も相まって社会現象を巻き起こしました。20代前半の男女が織りなすキラキラした恋愛模様は、連絡手段が少なかった当時だからこその“すれ違い”ばかり。一視聴者だった私も、やきもきしながらひたすら夢中になった覚えがあります。

そこから29年。平成を象徴する『東京ラブストーリー』は、令和の時代に合わせた形で再びドラマ化を果たしました。

  • 令和版『東京ラブストーリー』 ※画像クリックで詳細へ

目まぐるしい技術の進歩や発展を経た今、令和の『東京ラブストーリー』はどのような物語を紡いでいくのでしょうか。そこで本稿では、平成初期から令和にかけて若者たちの恋愛事情がどのように変化したのか、この29年間を紐解いていきましょう。

29年で変化した、若者たちの恋愛模様

皆様のなかには、「29年前にはまだ生まれていなかった」なんて方も多いのでは。平成初期とはどのような時代だったのか簡単に説明すると、「アナログ→デジタルへの過渡期」。ポケベルや家庭用パソコンが登場し一般社会にも流通し始めたものの、まだまだ貴重で普及率は高くありませんでした。NTTの携帯電話「ムーバ」が出てきたのもこの頃でしたね。

当然携帯電話なんて持っていませんので、若者たちの連絡手段といえば固定電話が主流。デートの約束を取り付けるのも、集合時間を決めるのも、「今日は楽しかったね」なんてお礼をするのもすべて固定電話を介していました。「電話し放題」なんてプランもなかったので長電話はできませんし、家族に話を聞かれているかも……という緊張感もありました。

また、今ではあまり見かけなくなった公衆電話も大活躍した時代です。平成に放送された『東京ラブストーリー』にも、公衆電話でやり取りする姿がところどころで描かれています。

以前娘にこの話をしたところ、「なんだか中学生の恋愛みたいだね」と。続けて、「今は中学生もほとんどスマホを持っているから、中学生ですらないかも」なんて言われてしまいました。それだけデジタルが普及し、若者の恋愛には欠かせないツールになっていると伺えます。

待ち合わせするにも、外では連絡の取りようがないので、とにかく「時間厳守」は当たり前。もし上手く出会えなかったときは、駅前にある伝言板に「ユウコちゃんへ 先にお店へ向かってるね マサキより」というメッセージを残し合っていました。

私はよくいる名前のため、どれが自分宛ての伝言なのか混乱することもしばしば。ただ、伝言を消したり書き換えたりと悪さをする人はいなかったように思います。伝言板は、現代でいうSNSの走りだったのかもしれません。

出会いの幅も変化

現代の日本では、出会いの場所はオフラインに留まらずオンラインにも広がっています。SNSを使えば趣味の合いそうな人やタイプの人を見つけられて、新しい出会いが生み出せますよね。SNSをきっかけに付き合ったり、オンラインを補完するようにオフラインで関係性を深めたりしている人も少なくありません。

今とは対照的に、インターネットがないのが“当たり前”だった平成初期。では、若者たちはどこで出会っていたかというと、「ディスコ」の存在が大きかったように思います。あの有名な「ジュリアナ東京」ができたのも1991年のことでした。昼間はOLとして普通に働き、夜はボディコンに身を包んで夜通し踊りに行く……今考えると、なんて体力があったんだろうと我ながら驚くばかりです。

踊っているうちに仲良くなって、連絡先を交換して、という出会い方はたしかに多く。ただ、連絡先を交換するにも現代とは違いメモが必須だったので、今の若い方からすると「不便だ」と感じるかもしれません。友人は好みの男性から電話番号を教えてもらったもののメモを持ち合わせておらず、何度も復唱して暗記し無事デートを取り付けていました。うーん、やはりタフでしたね。

29年で変わったこと、変わらないこと

29年という月日は、恋愛の”形“を変化させるには十分な時間でした。しかしながら私が思うのは、恋愛の形は変わっても”本質”は変わらないということです。29年前には生まれていなかった自分の娘も、当時の私と同じように悩んだり、嫉妬したり、傷ついたり、幸せを感じたりしている。だからこそ、恋愛は全世代の共通事項として成り立っているのかもしれません。

  • 『東京ラブストーリー』より ※画像クリックで詳細へ

皆様のなかには、きっと現在も恋愛で悩んでいる人もいるでしょう。自分だけではどうしようもない相手の感情や事情に苛まれて、苦しさで一杯になる。それは、29年前の私も同じでした。「だからなんだ」と言われればそれまでですが、ひとつ老輩者としてアドバイスするとしたら、誰かの恋愛を客観的に見るのも、新たな気付きに繋がるということ。思い悩んだときは少し立ち止まり、俯瞰して自分を見つめ直してみるのもよいかもしれません。

“令和らしさ”が組み込まれた『東京ラブストーリー』

さて、冒頭でもお伝えしたように、私達の青春時代を彩ってくれた『東京ラブストーリー』は、令和を舞台に再びドラマとなりました。

  • 『東京ラブストーリー』 ※画像クリックで詳細へ

永尾完治、通称・カンチ(伊藤健太郎)は、勤め先である広告代理店の本社・東京へと転勤することに。そこで、自分の指導係となる赤名リカ(石橋静河)と出会う。また、学生時代の同級生・三上健一(清原翔)と、かねてから恋心を寄せていた関口さとみ(石井杏奈)と再会。酒を飲み交わしていると、リカから「カンチが忘れた財布を届ける」と連絡が入り、4人で飲むこととなった。この夜をきっかけに、4人の関係は次第に変化していき……。

視聴前にまず思ったのは、「インターネットやスマートフォンがあるのに大丈夫!?」ということ。常に連絡手段があると、“すれ違い”も起こりづらいのではと心配になったのです。
しかし、第1話を見ると取り越し苦労だったことがわかります。登場人物はみんな、少し不器用で。その不器用さ故に、まとまりそうな関係もほつれるわ、常に事件は起こるわ……見事に“すれ違い”ばかりです。彼らの人間らしさには、つい愛おしさを覚えてしまうことでしょう。

さとみに恋心を寄せつつも、自分のことを好いてくれるリカへ次第に惹かれていく永尾完治(伊藤健太郎)

伊藤健太郎が演じる主人公・永尾完治(カンチ)は、いわゆる今どきのオトコノコ。ふにゃふにゃしていて強く言われると基本的には断れないし、なにかと損しやすい役回りです。伊藤健太郎の、いい意味で「素朴」かつ「現実味のある」演技を見ていると、自分の会社にもこんな後輩がいるな……と重ねてしまうかもしれません。

  • 同僚である赤名リカ(石橋静河)とは次第に親密な関係に。それでも敬語を崩さない完治の姿勢からは現代らしさを感じます

自分の気持ちに正直で、完治にも真っ直ぐと向き合っていく同僚・赤名リカ(石橋静河)

対する赤名リカ(石橋静河)は、オブラートに包まず突拍子もない行動に出てしまう女性。仕事はできるものの、周囲からは変わり者として扱われることも少なくありません。しかし、どこまでもまっすぐな彼女の姿を見ていると、どこか憧れすらも抱いてしまいます。もちろん強いだけではなく誰よりも繊細な心を併せ持っていて、応援したくなるキャラクターです。

完治が恋心を寄せている相手・関口さとみ(石井杏奈)と同級生である三上健一(清原翔)。この2人も本当に不器用で、友情と恋愛の狭間で揺れ動く様はもどかしくも愛着を抱くでしょう。

  • 自分を想ってくれる完治と、なぜか惹かれてしまう三上の間で揺れ動く幼稚園の先生・関口さとみ(石井杏奈)

  • 女性の扱いに慣れているものの、うちには様々は葛藤を秘めている同級生・三上健一(清原翔)

  • 『東京ラブストーリー』 ※画像クリックで詳細へ

『東京ラブストーリー』は、フジテレビの動画配信サービス『FOD』で好評配信中です。ちなみに1991年に放送された作品も、『FOD』なら視聴可能とのこと。

あの恋愛ドラマの金字塔を29年ぶりに映像化というのは、制作陣のプレッシャーもひとしおだったでしょう。しかし第1話を見れば、そのハードルをなんなく超えた作品であると理解してもらえるはずです。

恋愛の”本質“を追求したい方は、ぜひ令和版『東京ラブストーリー』を見てみてはいかがでしょうか。

[PR]提供:フジテレビジョン(FOD)