12日、スポーツ紙系のウェブサイトなどが『旬感LIVE とれたてっ!』(カンテレ制作)が今秋からフジテレビ系で全国放送される方針であることを一斉に報じた。
『とれたてっ!』は元日本テレビアナウンサーの青木源太がMCを務め、23年10月から関西地区を中心に生放送されている情報番組。まだフジテレビからの正式発表はないものの、もし実現したらどんな状況が起こりうるのか。
同じ在阪局の読売テレビが制作する『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)や在名局のCBCが制作する『ゴゴスマ -GO GO!Smile!-』(TBS系)との関係性、視聴者や業界全体への影響などをテレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
開始当初からトライアルしていた
実は『とれたてっ!』がスタートした23年10月の段階から、業界内では「早い段階で全国放送されるのではないか」などと、うわさされていた。
平日午後は在阪局と在名局の手がける番組が実績を築いたことに加えて、前番組より関西ローカル色は抑えられ、一定の知名度がある青木源太をMCに指名。ドラマの再放送では視聴率も広告収入も厳しいことから、「よほどのことがない限り全国放送されるだろう」という声が上がっていただけに、「2年もかかった」という感もある。
あまり知られていないが、『とれたてっ!』は開始翌月の23年11月23日にフジでも生放送されていた。翌24年も2月12日、3月20日、4月29日、8月12日にフジで放送。いずれも視聴者の多い祝日であり、全国放送のトライアルや番組プロモーションが繰り返されていた。
さらに、24年は平日でも自民党総裁選挙の9月27日やアメリカ大統領選挙の11月6日など、ここぞというタイミングで編成。また、夏以降は祝日のトライアルやプロモーションを控える一方で11月29日と12月6日の金曜にもフジで放送された。今年は一連の騒動があったためかフジでの放送は控えられているが、秋から再出発の印象も含めて番組表を一新させるということなのだろうか。
ただ気になるのは、フジでの放送が14時45分~15時45分の1時間のみで、13時50分~14時45分はこれまで通りドラマの再放送が予定されていること。業界用語の“飛び乗り”に該当するのだが、はたしてそれで後発の『とれたてっ!』が13時55分から先行放送されている裏番組の『ミヤネ屋』と『ゴゴスマ』に勝てるのか。業界のセオリーとしては、13時50分~14時45分をフジでも放送したあと14時45分~15時45分はドラマ再放送するという“飛び降り”でなければ裏番組に対抗できないように見えてしまう。
もちろん評判がよければ「13時50分~15時45分の約2時間全て『とれたてっ!』を放送してドラマ再放送はやめる」という二段構えの戦略なのだろうが、少なくとも現段階では「『とれたてっ!』にそこまでの信頼を置いていない」という様子がうかがえる。
MC・青木源太の好感度と期待感
では、なぜフジはその程度の信頼しかない番組を放送することに決めたのか。
現在フジが制作費や人員などの点で苦境にあるのは間違いなく、費用対効果やスポンサー確保などを踏まえても新番組を立ち上げることは不可能に近い。その意味ですでに放送実績のある『とれたてっ!』は計算が立ちやすく、背に腹はかえられないのではないか。そもそもドラマの再放送は視聴率や収益などの点で厳しく、「これからはFODで稼いでいかなければいけない」という狙いにも逆行するだけに、『とれたてっ!』以外の選択肢がないように見える。
また、これまで緊急性の高い会見やイベントなどが行われる際、フジは15時45分から放送している『Live News イット!』を前時間に拡大するなどの対応をしてきた。しかし、その時間帯で視聴習慣のある『ミヤネ屋』『ゴゴスマ』におくれを取ってしまうところがあり、局内では「やはりレギュラー番組でなければ厳しいのでは」という指摘があったという。「まだ『とれたてっ!』の全国放送には多少の不安があるが、それでも現状よりは期待できるかもしれない」という見方なのではないか。
なかでもフジが『とれたてっ!』で期待するのは、青木源太の若さ、元気、謙虚さあたりだろう。青木は現在42歳であり、宮根誠司の62歳、石井亮次の48歳よりかなり若い。さらに日テレ時代からイケメンを隠すようにダサい自分を前面に出し、腰の低さを見せて好感度を得てきたことも業界内では評価されていた。『とれたてっ!』のMC就任に合わせて大阪に引っ越したことなども含め、この時間帯の視聴者から愛されやすい庶民感覚もあり、少なくともMCという点で裏番組に劣ることはなさそうだ。
一方で橋下徹、ハイヒール・リンゴ、ブラックマヨネーズ・吉田敬、メッセンジャー・黒田有、小籔千豊らレギュラー出演者は大阪色が強いだけに「西日本以外の視聴者から受け入れられるのか」という不安がよぎる。ただ、出演者の人選は『ミヤネ屋』も『ゴゴスマ』も「芸能人か士業ばかり」などと揶揄(やゆ)されているだけに大差はないのかもしれない。