最後にメディアの報道姿勢について。

フジテレビがメディアとして問題のある対応をしたことは、本人たちが認めているように間違いないだろう。しかし、今回の問題を通して、それを報じる側のメディアが別の問題を露呈したことも確かだ。

近年、情報の質や信頼性よりも関心や注意を集めることで利益をもたらそうとする「アテンション・エコノミーの意識が強すぎる」という問題が指摘されていた。なかでも「怒りを誘発・加速させる記事で数字を伸ばそう」という意識への偏りは顕著であり、実際に前述した中居氏の人格や過去の言動などを否定するような記事が目立っている。

私のもとにも多くのメディアからコメントや執筆の依頼が来たが、そのほとんどが批判ありきの切り口。それに沿ったコメントや原稿を求められたため断ったが、これはそれだけ「このネタが稼ぎどころ」「ウチだけやらないわけにはいかない」という意識によるものだろう。裏を返せば、それだけどのメディアも数字を稼がなければ運営が厳しいということだが、報道の質と信頼性の低下を招いていることに歯がゆさを感じてしまう。

また、フジテレビ以外のメディアは「今回のような問題はない」と調査もせずに言い切れるのか。女性社員の接待を批判していたが本当に自社ではないのか。これだけ怒りを誘発・加速させるような報じ方を徹底したからには、いつか自社にもその追及が向けられるかもしれないことに気づいていないのかもしれない。

  • 頭を下げる登壇者たち

仕切り役の第三者グループが必要か

そして再会見で問題視せざるを得ないのが、記者の態度と質問。「記者のレベル」がXのトレンド入りをしたほか、「フジテレビがマシに見える」「子どもに見せられない」などと書かれるほどの酷評が続出した。

同じような質問ばかり繰り返す。感情的になって声を荒らげる。質問ではなく私見を延々と述べる。説教に終始して質問せずに話し終える。登壇者の回答中に罵声を浴びせる。強引な約束を取り付けようとする……さらに今回はメディアとも記者とも考えづらいYouTuberなども参加し、被害者配慮のルールを破る人もいた。

なかには「共感性羞恥を感じた」(他人が恥をかいている姿を見て自分も恥ずかしくなる)、「人権侵害を問う記者が人権侵害のようなことをしている」という声もあった。明らかにメディアや記者側の改善が必要であり、それができないのであれば「名前だけでなく顔も映す」「中立的な第三者グループが仕切り役を務める」などの対策が必要なのかもしれない。

いずれにしても再会見を受けて、単に中居氏とフジテレビだけの問題ではなく、メディアや記者たちの姿勢も問われているのではないか。少なくともこの日の会見を見た人々は、日本のメディア全体に疑問を抱いただろう。