番組後半のパフォーマンスパートは、また別の驚きがあった。松本と中居がスタジオに登場したとたん、客席から悲鳴のような声があがり、涙をぬぐう人々が続出。一方、ネット上には視聴者からのコメントが次々に書き込まれ、Twitterのトレンドランキングを賑わせていた。

これは集まった観客に『まつもtoなかい』であることを伏せたサプライズだったこともあるが、根本にあるのは「いかに2人の共演を待ち望んでいた人が多かったか」。そして、「いかにテレビがその期待に応えてこなかったか」という罪深さを物語っている。

香取は「地上波民放で歌うのは7年ぶりくらい。フジテレビで歌うのも『SMAP×SMAP』以来」とコメントしていた。テレビ業界に限らずビジネスである以上、商慣習があり、個人レベルでは「やりたくてもできない」という苦い思いを味わったテレビマンもいただろう。しかし、ようやく実現した共演によって、「今こそ視聴者が本当に見たいと思うものを放送する」というシンプルな制作姿勢の大切さを再認識できたのではないか。

香取のパフォーマンス直後、松本が中居に「今の見てたら中居くんも触発されない?」と声をかけ、香取も「待ってる人も多いと思いますよ」と続けた。その瞬間ファンの頭には、「中居が久々に歌や踊りを披露するとしたら『まつもtoなかい』しかない。できればそのときSMAPのメンバーもいてほしい」という思いが広がったのではないか。

反響の大きさを見る限り、SMAPの出演に関しては今回限りと言わず、年に数回あっていいのかもしれない。また、中居と香取に限らず、この番組をきっかけに復活や新たなコラボなどを生み出すこともありそうだ。

プレゼンターの山崎弘也は番組後半のパフォーマンスパートについて、「話題のアーティストや注目のパフォーマーなど、今イケてる才能を松本・中居に紹介していくコーナー」と語っていた。第2回ではアーティスト・マカロニえんぴつの出演が予告されているが、番組が尻すぼみにならないためにも、今後は作り手側のセンスが問われるだろう。

いずれにしても、松本、中居、山崎という超一流のトーク巧者が盛り上げるステージは、全盛期の『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』を彷ふつとする華を感じさせられた。

  • 第2回のエンターテイナーとして出演するマカロニえんぴつ。話題曲「リンジュー・ラヴ」を披露するほか、プレゼンター役のオズワルド・伊藤俊介が、彼らの音楽の魅力を松本&中居の2人に紹介しながら、皆でクロストークを展開する。
    (C)フジテレビ

■日曜ゴールデンの勢力図を変えるか

最後に触れておきたいのは、日曜ゴールデンタイムへの影響。

初回放送で特筆すべきは、「記念すべき初回放送が21時からの1時間だった」こと。新番組の初回放送は2~3時間の大型特番で華々しくスタートするケースが多いだけに意外だった。これは「『まつもtoなかい』は日曜21時台で勝負する番組であり、やみくもに特番化しない」という宣言なのか、それとも視聴率争い最激戦区の日曜19~21時を避けたのか。本音は分からないし、取材したところで語られないだろう。

ただ、結果的に1時間だからこそインパクトがあり、間延びせず、視聴率もそれなりの数字が確保できたのではないか。その意味では19時スタートの3時間特番や20時スタートの2時間特番にしなかったのは英断だったように見える。

日曜21時台はテレビ朝日系が報道の『サンデーステーション』、TBS系がドラマの『日曜劇場』で、バラエティは日本テレビ系の『行列のできる相談所』とテレビ東京系の『家、ついて行ってイイですか?』の2つのみであり、最も手薄な曜日と言っていいだろう。特に『行列のできる相談所』は長年の放送で「マンネリ」「ネタ切れ」などの声があがる状態が続くなど、つけ入るチャンスがありそうだ。

さらに、21時台でフジ系の『まつもtoなかい』が日テレ系の『行列のできる相談所』に、反響の大きさはもちろん視聴率でも上回ることができれば、それを突破口に19時・20時台の番組にも好影響を与えていくかもしれない。今春に枠移動してリニューアルもした『千鳥のクセスゴ!』に、コア層(13~49歳)の受けがいい『千鳥の鬼レンチャン』も含め、フジ系の日曜ゴールデンタイムが他局にどんな影響を与えるのか興味深い。

このところ日曜ゴールデンタイムの番組に大きな動きはなかったが、今春から何かが変わり始めるかもしれない。そんな予感のただよう初回放送だった。