もう1つ『大奥』の魅力として挙げておきたいのは、時代劇でありながら、若年層にも見てもらいやすい作風であること。
2000年代に入って以降、大河ドラマを除く連ドラで時代劇が減少。その理由は「視聴率がとれなくなったから」「特に若年層はなじみがないものだから」「予算がかかり特別なノウハウが必要だから」など多岐にわたり、最後の砦のような位置付けだった『大奥』も時代の流れに抗えないだろうというムードがあった。
しかし、その流れを変えたのが、2010年代以降にヒットした『JIN -仁-』(TBS)、『信長のシェフ』(テレビ朝日)、『信長協奏曲』(フジ)などのファンタジー時代劇。「もし医者、シェフ、高校生がタイムリープしたら……」という設定のわかりやすさとエンタメ性、若手俳優を抜てきしたキャスティングなどで若年層からの支持も得た。
その点、『大奥』は時代劇ながら、タイムリープと同等以上に「もしも、こんな男子禁制の場があったら……」というファンタジーを感じさせられる設定の物語。前述したように、江戸時代も現代も変わらない女性の強い思いをストレートに描く作風だけに、遠い時代の物語ではなく、時に自分に置き換えられて共感できるシーンも多く、若年層も見られる時代劇として再評価されている。
■“ネタドラマ”とみなされる不安なし
また、これほど強くストレートな女性の思いを現代劇で描くと、「うそくさい物語」「コントのようなドラマ」、すなわち“ネタドラマ”とみなされがちだが、時代劇の『大奥』にはそのような不安はない。
たとえば、「権力を持つ男性が多くの女性に子どもを産ませる」という設定は、現代劇なら「ひどすぎる」という理由で見てもらえないし、同様に「罵倒する」はハラスメント、「毒を盛る」は犯罪とみなされるなど、激しいシーンを詰め込んだだけの大味なドラマになってしまう。
そんな“ネタドラマ”になりかねないシーンをリアリティたっぷりに見せられることも含め、現在放送中の『大奥』はもちろん、来年1月期放送の『大奥』も、最後まで視聴者の支持を集められるのではないか。