今年1月20日、米国ではバイデン新大統領が誕生する。78歳というアメリカ史上最高齢でリーダーの座に就くわけだが、彼になって世界はどう変わるのだろうか。

トランプ大統領は一言で言えばやりたい放題で、北朝鮮やイランとの間で戦争になるかどうかの一触即発の事態もあった。

  • バイデン大統領で世界はどうなる?

トランプリリスクはなくなる

バイデン新大統領は、基本的には世界の国々と協力して問題を解決しよう! というスタンスであり、トランプ大統領のように自国第一主義に突っ走ることはない。要は、関税発動や株価を乱高下させてきたトランプリスクというものはなくなるであろう。

こう聞くと世界は安定に向かう! と安堵するかも知れないが、実際はそう甘くない。特に、日本が石油の9割近くを依存する中東においては、既に新たなリスクが浮上している。

バイデン政権と中東問題

トランプ大統領は自分の支持固めのため、4年間ずっとイスラエルをヨイショヨイショし、いじめっ子のようにイランを敵視。2015年のイラン核合意から一方的に離脱し、経済制裁を発動するなどしてイラン経済を叩いていた。

イスラエルにとってトランプ大統領は大親友だが、バイデン新大統領はイラン核合意への復帰を公約にしており、イランへ接近する姿勢を示している。イスラエルとイランは長年の犬猿の仲であり、バイデン新大統領がイランに歩み寄ることをイスラエルは良く思っていない。

要は、バイデン政権下では、イスラエルとイランの軍事的緊張が高まる恐れがあるのだ。ちょうど1年前、トランプ政権とイランの軍事的緊張が高まって一触即発の事態となり、日経平均株価が500円下落し、中東にいる日本人を避難させる動きも見られたが、同じような緊張が今後高まる可能性もあるのだ。

バイデン政権により高まる石油問題

また、石油大国であるサウジアラビアもトランプ大統領と蜜月関係で、長年イランを敵視しており、状況はイスラエルと同じだ。サウジアラビアのムハンマド皇太子は、イランが核兵器を作ったら自分たちも核を持つと発言したこともある。最近ではイスラエルのネタニヤフ首相が極秘にサウジアラビアを訪問してムハンマド皇太子と会談したとみられ、両国は一致団結してイランをけん制しようとしている。

今後の4年間、米国VSイランのリスクはなくなるが、「イスラエル、サウジアラビアVSイラン」の国家間対立がこれまで以上に高まり、石油の輸出にも影響が出てくる恐れもある。しかも、この3か国は中東の主要国であり、何かしら軍事行動が起こると中東全体に激震が走ることは想像に難くない。米国はシェールガス革命によって今では石油輸出国となり、中東は米国にとって重要な地域ではなくなりつつある。

しかし、日本の石油輸入先トップは、サウジアラビア、UAE、カタール、クウェート、イランなどペルシャ湾諸国であり、「イスラエル、サウジアラビアVSイラン」の最前線で、「ここに緊張が走らないこと=日本人が必要な時に石油を安心して使えること」なのだ。

この地域の安全は日本人1人1人の日常生活に直結する問題であり、何かしら緊張が走ると石油価格が突然上がったりすることもある。バイデン政権下では、この国家間リスクに注意するべきだ。